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妊活のため乳がん内分泌療法一時中断はアリ

ステージⅠ~Ⅲの若年女性を前向き追跡

2023年05月29日 05:10

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イメージ画像 © Adobe Stock ※画像はイメージです

 ホルモン受容体陽性早期乳がんの女性が、妊娠を試みるために術後のホルモン療法を一時中断した場合の乳がん再発リスクについて前向きに検討したデータは不足している。米・Dana-Farber Cancer InstituteのAnn H. Partridge氏らは、乳がん既往のある若年女性を対象とした単群試験POSITIVEにより、妊娠を試みる目的で術後補助内分泌療法を一時中断した場合の影響を評価。その結果、一時中断しても遠隔再発を含む乳がんイベントの短期リスクは高まらなかったことなどをN Engl J Med2023;388:1645-56)で報告した。

20カ国で500例超を登録し、外部コホートと比較

 POSITIVE試験の組み入れ基準は、42歳以下で乳がんステージがⅠ~Ⅲ、術後補助内分泌療法を18~30カ月間受けた妊娠希望の女性患者。2014年12月~19年12月に欧州、北米、アジア・太平洋、中東の20カ国116施設で518例を登録し、前向きに追跡した。

 主要評価項目は、追跡期間中の乳がんイベント(同側浸潤性乳がんの局所再発、領域再発、遠隔再発、新規の対側浸潤性乳がん)の発生数とした。主要解析は、追跡期間が1,600患者・年に達した時点で行うとした。

 事前に規定した安全性の閾値は、1,600患者・年における乳がんイベント46件とした。治療中断群における乳がんの転帰を、この試験の組み入れ基準を満たすと思われる女性で構成された外部の対照コホートにおける転帰と比較した。

追跡期間1,638患者・年でイベントは44例、安全性閾値を超えず

 主要解析には516例を組み入れた。年齢中央値は37歳(範囲27~43歳)で、34.3%が35歳未満だった。乳がん診断から組み入れまでの期間の中央値は29カ月〔四分位範囲(IQR)25~32カ月〕で、93.4%がステージⅠまたはⅡのがんだった。

 追跡期間1,638患者・年(追跡期間の中央値41カ月)の時点で、乳がんイベントは44例に発生し、安全性の閾値を超えなかった。乳がんイベントの3年発生率は、治療中断群で8.9%(95%CI 6.3~11.6%)、対照コホートで9.2%(同7.6~10.8%)だった(ブートストラップ・マッチング法による絶対差-0.2%ポイント、同 -3.1~2.8%ポイント)。調整後ハザード比(HR)は0.81(同0.57~1.15)だった。

 遠隔転移の3年発生率は、治療中断群が4.5%(95%CI 2.7~6.4%)で、対照コホートが5.8%(同4.5~7.2%)だった(ブートストラップ・マッチング法による絶対差-1.4%ポイント、同 -3.5~1.0%ポイント)。

 妊娠状況の追跡が可能だった497例のうち368例(74.0%)が1回以上妊娠し、317例(63.8%)が1児以上を生産。合計365例の小児が出生した。調整Cox比例ハザードモデルにおいて、妊娠に関連した乳がんイベントのHRは0.53(95%CI 0.27~1.04)だった。

 以上から、Partridge氏らは「ホルモン受容体陽性早期乳がんの既往を有する適格女性において、妊娠を試みる目的で内分泌療法を一時中断しても遠隔再発を含む乳がんイベントの短期リスクは、外部の対照コホートと比較して上昇しなかった」と結論づけた。その上で、「長期安全性の情報を得るには、さらなる追跡が不可欠である」と付言している。

※POSITIVE:Pregnancy Outcome and Safety of Interrupting Therapy for Women with Endocrine Responsive Breast Cancer

(小路浩史)

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