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引退で心疾患リスクが低下

2023年05月30日 13:42

326名の医師が参考になったと回答 

イメージ画像 © Adobe Stock ※画像はイメージです

 引退することで中高年者の心疾患リスクが低下することが明らかになった。京都大学大学院社会疫学分野の佐藤豪竜氏らが、35カ国10万人超を対象とした大規模縦断研究の結果をInt J Epidemiol2023年5月8日オンライン版)に発表した。

追跡期間6.7年でリスクが2.2%ポイント低下

 多くの国が国民年金の受給年齢を引き上げ、高齢者の就労継続は健康に良いことが複数の研究で示唆されている。しかし、これらの研究では健康な人ほど就労を継続しやすいというバイアスが考慮されていない可能性がある。そこで佐藤氏らは今回、日本を含む35カ国の50~70歳のデータを解析し、引退と心血管疾患リスクとの関係を検討した。

 対象は日本(くらしと健康の調査:JSTAR)、メキシコ、コスタリカ、中国、韓国など世界35カ国において米国の縦断調査Health and Retirement Studyの姉妹調査に参加した50~70歳の10万6,927人・39万6,904件(勤労者21万7,166人、引退者17万9,1738人)。データをプールし、国民年金の受給年齢を操作変数として健康な人ほど就労継続しやすいというバイアスを調整、固定効果法により性、遺伝子、各国の医療制度や労働市場の違い、社会・経済状況の時系列傾向なども調整した。追跡期間は平均6.7年。

 解析の結果、就労を継続している人に比べ引退した人では心疾患リスクが2.2%ポイント低く(係数=-0.022、95%CI -0.031 ~-0.012、P<0.001)、身体不活動(中高強度の運動の頻度が週1回未満)リスクは3.0%ポイント低かった(同-0.030、-0.049~-0.010、P=0.003)。

 男女ともに引退は心疾患リスクの低下と関連していた(男性:係数=-0.026 、95%CI -0.042~-0.010、女性:同-0.031、-0.043~-0.020)。一方、喫煙の減少は女性でのみ観察された(同-0.019、-0.034~-0.004)。高学歴の人では引退と脳卒中(同-0.014、-0.026~-0.001)、肥満(同-0.029、-0.057~-0.001)、身体不活動(同−0.045、-0.080~-0.011)のリスク低下との関連が認められた。デスクワークから引退した人は、心疾患(同−0.031、-0.050~-0.013)、肥満(同−0.031、-0.056~-0.007)、身体不活動(同−0.048、-0.082~-0.013)のリスクが低下する傾向にあったが、肉体労働から引退した人では肥満リスクが増加(同0.025、0.002~0.048)する傾向が見られた。

 以上から、佐藤氏は「研究の結果、概して引退は心疾患リスクの低下と関連していた。各国で年金支給開始年齢の引き上げや高齢者の就労継続支援が行われているが、今回の知見から引退の遅れは健康に良くないことが示唆された。働く高齢者が増える中で、運動習慣などの健康増進策がますます重要になると考えられる。政策立案者は、高齢者に継続就労を認めて年金支給開始年齢を引上げるベネフィットと、医療コストの高い心血管疾患などに罹患するリスクのバランスを考慮する必要がある」と結論した。

(大江 円)

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