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専攻医の過労自殺、第三者委が「労務管理」を問題視...調査報告書は遺族に開示されず〔読売新聞〕

2023年08月18日 13:57

215名の医師が参考になったと回答 

 神戸市東灘区の「甲南医療センター」で男性専攻医(旧後期研修医)が過労自殺した問題で、センターが原因を調査する第三者委員会を設置しながら、報告書を遺族に開示していないことがわかった。報告書は、業務の負担が自殺の原因となった可能性を指摘し、センターの労務管理を問題視する内容だったという。遺族は違法な残業があったとして、労働基準監督署にセンターの運営法人などを労働基準法違反の疑いで告訴している。

 亡くなったのは高島 晨伍しんご さん(当時26歳)。2020年4月にセンターに入り、研修医を経て、昨年4月から専門研修を受ける専攻医として診療に従事していた。昨年5月17日、神戸市の自宅で自殺し、西宮労基署(兵庫県)が今年6月、死亡前1か月の残業時間が207時間に達し、精神障害を発症したことが自殺の原因として労災認定した。

 遺族やセンターによると、センターは遺族の要望を受け、昨年8月、原因解明のため、外部の医師や弁護士らでつくる第三者委を設置。同委は職員や遺族らに聞き取り調査を実施し、今年1月に報告書をまとめた。センターは同月、遺族側に、第三者に公表しないことを条件に報告書を開示すると伝えた。遺族は公表を求めたが、センターは「職員のプライバシーが含まれる」などと拒否し、開示しなかったという。

職員には説明会実施

 関係者によると、センターは職員には説明会を実施していた。そこで▽高島さんは初めて主治医として患者を担当し、心理的負担があった。自殺と無関係と言えない▽学会で発表する資料の作成期限を守ることが難しいと嘆いていた▽いじめやハラスメントはなかった▽センターの労働時間や健康管理の体制が不十分で、問題に気付けなかった――と明らかにしていたという。

 センターは、労基署が認定した時間外労働には、労働時間にはあたらない自主的な「自己研さん」の時間が含まれていると主張している。しかし、第三者委が認定した時間外労働は労基署とほぼ同じだった。

 センターは取材に「報告書の認定は当院の認識と異なっていた。医師の自殺は公益に関わることではなく、公表すべきではないと判断した。ご遺族との間で第三者に公表をしない約束が得られず、開示にいたらなかった」と説明している。

 日本弁護士連合会の指針では、第三者委の調査結果について「原則、遅滞なく利害関係者に開示すること」と定めている。

 第三者委の委員の一人は読売新聞の取材に「公明正大に調査した。報告書を遺族に開示していないのは理解できない。公表した上で、再発防止に向けて議論すべきだ」と話した。

高島さん母「再発防止のためにも公表を」

 高島さんの母淳子さん(60)は「息子がどうして死を選ぶほど追い詰められたのかわからない。再発防止のためにも報告書を公表してほしい」と話している。

 来年4月には「医師の働き方改革」で時間外労働の罰則付き上限が設けられる。第三者委制度に詳しい牛島信弁護士(第二東京弁護士会)は「医師の働き方改革が来年に迫る中で起きた若手医師の過労自殺は重大な問題で、公益性も高い。遺族への開示はもちろん、社会に対して可能な限り公表するべきだ」としている。

 遺族は昨年12月、高島さんが労使協定で定められた範囲を超える時間外労働をさせられたとして、センターを運営する公益財団法人「甲南会」などを西宮労基署に刑事告訴した。センターによると、労基署の事情聴取に応じているという。

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(2023年8月18日 読売新聞)

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