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座談会

座談会「JDDWの発展に向け、女性の活躍を考える」

2023年10月10日 12:00

86名の医師が参考になったと回答 

[座長]

小池 和彦 氏

日本消化器関連学会機構(JDDW)理事長

[出席者]
(発言順)

名越 澄子 氏

第65回日本消化器病学会大会会長、JDDW 2023

塩谷 昭子 氏

第106回日本消化器内視鏡学会総会会長、JDDW 2023

飯島 尋子 氏

第25回日本肝臓学会大会会長、JDDW 2021

濱島 ちさと 氏

第59回日本消化器がん検診学会大会会長、JDDW 2021

 第31回日本消化器関連学会週間(JDDW 2023)では、第65回日本消化器病学会大会会長の名越澄子氏が運営委員長を務めることとなり、31年の歴史で初めて女性主導により開催される。本座談会ではJDDW理事長の小池和彦氏の司会の下、名越氏、第106回日本消化器内視鏡学会総会会長の塩谷昭子氏、JDDW 2021で第25回日本肝臓学会大会会長を務めた飯島尋子氏、第59回日本消化器がん検診学会大会会長を務めた濱島ちさと氏にお集まりいただき、消化器関連領域における女性のキャリア形成の現状と課題、女性のさらなる活躍に向けたJDDWの取り組みについて話し合っていただいた。

JDDW参加学会の女性医師、専門医の取得率は高いが指導医はわずか

小池 本座談会では、JDDWの発展のために不可欠な女性医療従事者の活躍について考えていきたいと思います。名越先生、まず女性医師のキャリアの現状について教えてください。

名越 日本学術会議が実施したアンケートによると、医学部医学科における女性の割合は初期研修医では4割程度ですが、助教、講師、准教授、教授と職位が上がるにつれて徐々に低下し、主任教授では3.5%となっています(図1)。

図1. 医師における女性の割合

(日本学術会議 科学者委員会 男女共同参画分科会 2019年実施「男女共同参画・ダイバーシティ推進の進捗状況に関する大学・研究機関向けアンケート」を基にして名越氏作図)

 JDDWに参加する4学会(日本消化器病学会、日本消化器内視鏡学会、日本肝臓学会、日本消化器外科学会)の状況を調査したところ、日本消化器外科学会を除く3学会では職位が上がるにつれて女性の割合は低下します。なお、現在までに4学会とも女性が理事長に就任した実績はありません(図2)。

 ただし、委員会委員を見ると女性が6.5~13.3%を占め、女性を起用しようとする姿勢が表れています。特に日本消化器外科学会は顕著で、女性の割合は会員の7.8%に対し委員会委員では12.5%と高くなっています(図2)。

図2. JDDW参加4学会における役職別に見た女性の割合

(図2~4は名越氏提供)

 次に、学術集会の司会や演者における女性の割合に着目すると、日本医学会連合加盟学会の一般演題の演者では24.1%と女性会員の割合23.7%と同程度であるものの、座長は12.3%、シンポジウムでは演者は13.6%、座長は8.8%にとどまっています。

 一方、JDDW参加学会の状況を見ると、日本消化器病学会、日本消化器内視鏡学会、日本肝臓学会における女性の割合は、一般演題の演者の11.2~16.7%に比べ主題の演者は12.7~17.3%とやや高く、女性が積極的に主題に挑戦していることが示されました。さらに、JDDW2023では司会にも多くの女性が起用されています(図3)。

 ただし、専門医・指導医資格の取得状況に焦点を当てると、専門医の資格を取得している女性医師は多いのに対し、指導医は少ないのが現状です(図4)。

図3. JDDW参加4学会の学術集会における役割別に見た女性の割合

図4. JDDW参加4学会の指導医および専門医に占める女性の割合

塩谷 JDDW2023では、名越先生と私が会長ということに加え他学会の会長方のご協力もあり、司会や座長に女性が積極的に起用されました。

飯島 ただ、司会や座長は評議員から選出する慣例があり、女性の座長を増やすのは容易でないと感じています。この問題については、女性だけでなく男性、特に指導的な立場の方に考えていただく必要があります。

名越 女性の起用を推進するためには、来年以降も同様の調査を継続し、各学会における女性の起用状況を可視化していくべきです。加えて、女性医師の指導医資格の取得を後押しする活動も実施する必要があると考えます。

小池 濱島先生、日本消化器がん検診学会の状況はいかがですか。

濱島 当学会は「検診」ということで女性が多い印象があるかもしれませんが、女性の監事は1人のみで、理事は全員男性、女性の評議員もほとんどいないのが現状です。司会や座長を女性が務めるケースもまれです。会員の年齢層が高く新しい考え方が浸透しにくいという側面があり、女性の活躍を阻む要因の1つと感じています。
 名越先生にお示しいただいたデータを「minimum requirement(必要最低限)の指標」として活用し、当学会でも女性の活躍の場を広げる改革につなげていければと考えています。また、このデータを基にJDDWとして女性座長の割合などについて具体的な目標値を定め、定期的に達成度をチェックすることもすべきだと思います。

キャリア形成の障壁は、本人と上司双方の"アンコンシャス・バイアス"

小池 先ほど司会や座長は評議員から選ぶ慣例があり、女性の割合を増やしにくいという話が出ましたが、個人的な経験として、女性に評議員への就任を打診しても断られてしまうケースが少なくありません。女性には評議員になる意義を見いだしてもらいにくいと感じたことがあります。

名越 確かに女性医師は男性医師よりも自己評価が低く、ロールモデルも少ないため「私に務められるはずがない」と二の足を踏むことが多いかもしれません。また、上司も「育児が大変そうだから、この仕事を任せるのは迷惑だろう」と遠慮しがちです。こうした女性医師と男性上司双方の"アンコンシャス・バイアス"が女性の活躍を阻んでいる可能性があります。一歩を踏み出せずにいる女性医師がいたら、上司から「あなたなら大丈夫。もし、難しいときはバックアップするよ」と伝えて背中を押していただきたいです。

小池 「育児中だから難しいだろう」と決め付けず、「よかったらやってみませんか」と勧めてみることが大切ですね。

塩谷 私も2人の育児を経験しましたが、やはり医師としてのキャリア形成と育児の両立は簡単なことではありませんでした。一般的に「男性と同等に働けていない」と負い目を感じている女性医師が多いように思われます。しかし、育児中の女性は少子化の抑制に貢献しながら努力されています。
 海外に目を向けると、例えば米国消化器病学会(AGA)に参加すると女性の多さを実感します。座長も男女半々の印象です。近年は日本でも社会的に男性の育児休暇の取得や労働時間の削減を促す動きがあり、女性の社会進出やリーダーシップが求められています。JDDWや各学会はこうした変化を真摯に受け止め、改革を進める必要があります。

飯島 確かに、われわれと今の世代では取り巻く環境が全く異なりますね。例えば、私たちの時代は女性医師の割合が5%以下で女性の入局は断られるケースも珍しくありませんでしたが、今では女性の入局が大変歓迎されます。また、男性も育児休暇の取得が推進され、子どもを連れて学術集会に参加する男性医師の姿も見かけるようになりました。

女性医師キャリア形成の施策としてSNSに注目

小池 JDDW2023の女性医師・研究者プログラム「女性医師キャリア形成におけるSNSの活用」についてお話いただけますか。

名越 これまでのJDDWの女性医師・研究者プログラムでは、女性医師の支援にフォーカスした内容が多かったのですが、近年は医師の働き方改革や新専門医制度など男性医師にも関係があるテーマを取り上げています。男女共通の課題を踏まえた上で女性のキャリア形成の問題や支援を議論することから、毎年比較的多くの方に聴講いただいています。SNSの活用も男女問わず重要なテーマです。

飯島 特に若い世代ではウェブでの情報収集が当たり前になっていて、40歳代以下ではInstagramやX(旧Twitter)といったSNSの利用が主流となりつつあるようです。育児中の方でもスマートフォンやタブレットで気軽に情報収集できるので、SNSの活用は女性医師の支援にもつながると思います。JDDW2023では、6人の演者にさまざまな側面からSNSの活用法について解説していただく予定です。

濱島 育児中の学術集会への参加という点では、コロナ禍をきっかけにオンラインやオンデマンド視聴が広がったことは大きな利便性をもたらしたと思います。会場に託児所が用意されていても、仕事の引継ぎに加えて、不在中の家庭のことも準備した上で参加するのはハードルが高いです。今後も現地開催とオンラインなどを組み合わせたハイブリッド開催を続けてほしいです。

小池 ハイブリッド開催はJDDWの強みでもあるので、ぜひ続けていきたいと考えています。

女性の意見を積極的に取り入れ、JDDWのさらなる発展を

小池 最後に、女性の活躍に向けJDDWが取り組むべき課題や展望についてお聞かせいただけますか。

名越 理事に女性がいないので、増員していく必要があります。各学会は指導的地位に就く人材として、女性を強く推薦すべきだと思います。

飯島 私も同じ意見です。各委員会に少なくとも1人は女性を起用すべきだと思います。男性目線だけで学会を運営すると偏りが生じる恐れがあります。

塩谷 JDDW2023では、5人の大会長のうち2人が女性ということで注目されていますが、それが特別ではなくなるように、次世代の女性の先生方に奮起していただければと考えています。

濱島 近年、医学部の女子学生や消化器領域の女性医療従事者は増加しているので、勉強や研究発表の機会が増えるようJDDWから継続的にメッセージを発信していただきたいです。

名越 消化器病領域は幅広い臓器を取り扱うため、さまざまな知識や技術を習得することができます。多くの女性が意欲的にJDDW各学会へ参加し、消化器病領域を専門にしていただくことを願っています。

小池 皆さんのご意見を伺って、JDDWのさらなる発展には女性の意見を積極的に取り入れる必要があるとの思いを改めて強くしました。本日は貴重なお話をありがとうございました。

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