「未病」で国民皆保険制度を救え!

3学術団体が厚労大臣に提言

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感染症ビジョナリーズ 感染症ビジョナリーズ

 日本賢人会議所(会長=橋本久美子氏)、日本未病学会(理事長=吉田博氏)、日本未病総合研究所(代表理事=福生吉裕氏)の3学術団体は4月22日、武見敬三厚生労働大臣に『かけがえのない国民皆保険制度の持続のための「現代未病」の概念導入とその活用に関する提言書』(以下、未病提言)を提出した。提言総括責任者の福生氏は「崩壊の危機に瀕している国民皆保険制度を持続させるためには、健康と病気の間に"未病"の概念を位置づけ、活用すべきだ」と呼びかけている。(関連記事『「未病の日」記念フォーラム開催』)

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「からだ天動説」から「からだ地動説」に脱却を

 少子高齢化に歯止めがかからず、人口構成が逆ピラミッド型に向かう日本社会。国民医療費は毎年増加し、現役世代の医療費負担も増加している。現役世代には「負担と受益」に対する不公平感がくすぶり、SNS上では識者による「高齢者は集団自決」発言まで飛び出している。

 福生氏らはこうした事態を憂慮し、未病概念の活用こそが打開策になるとの思いから、今回の未病提言を作成したという。

 未病提言によると、現在一般常識化している「健康か病気か」という二元論は19世紀のドイツにおいて、ビスマルクが整備した医療保険制度によりつくられた人為的なものだ。すなわち、保険で治療を受けるには病気の認定が必須であったため、二元論が定着した。しかし、ビスマルクの時代に1,800個だった保険病名は国際疾病分類第11版(ICD-11)では1万8,000個に増加、これに少子高齢化が加わり、医療保険制度が自縄自縛の状態に陥っているのが日本の現状だという。未病提言では、二元論を「からだ天動説」として批判し、脱却を求めている

 未病提言が主張するのは、「健康と病気は連続している」という考え方。医療保険制度以前には存在した、健康と病気の中間状態である未病を「現代未病」として現代流に概念化し、活用すべきだと説く。これが「からだ地動説」だ。未病概念を基軸としたからだ地動説を推進することにより、国民皆保険制度を補強し、持続させることができるという。

未病における「自助」を支援

 未病提言では、健康と病気の間に未病期を設定することにより、「自助」により自分の体を守る活動につながり、医療費の削減が可能だと説明する。さらに、未病期を自立でケアできる「未病1」と医療に頼む「未病2」に分類。段階に応じた対応策を提示している()。

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 未病における自助を支援するエビデンスは、日本未病学会(旧・日本未病システム学会)の30年以上の活動で蓄積されているという。日本未病総合研究所では産業界と連携し、サプリメントなど未病ケア食品の育成と普及、デジタル新技術の活用などにも取り組んでいる。「未病提言」の真価は今後問われることになる。

平田直樹

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