炎症性腸疾患の病態解明に向けた研究の展開

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感染症ビジョナリーズ 感染症ビジョナリーズ

シンポジウム11 (日本消化器病学会・日本消化器内視鏡学会・日本消化器外科学会)

11月2日(土) 14:00~17:00 第2会場(神戸国際展示場2号館 ホール南)

[司会]

久松 理一 氏

杏林大・消化管内科

岡本 隆一 氏

東京科学大大学院・消化器病態学

[演者]

須永 将梧 氏

慶應義塾大・消化器内科

根本 泰宏 氏

東京科学大・消化器病態学

正木 翔 氏

近畿大・消化器内科

前田 啓子 氏

名古屋大・消化器内科

横田 佳大 氏

滋賀医大・消化器内科

三好 潤 氏

杏林大・消化器内科

桑田 威 氏

京都大大学院・消化器内科学

澤橋 基 氏

東北大大学院・消化器病態学

内山 和彦 氏

京都府立医大・消化器内科

太田 真二 氏

弘前大大学院・消化器血液内科学,弘前大大学院・総合地域医療推進学

小松 更一 氏

東京大・腫瘍外科

小原 淳 氏

昭和大横浜市北部病院・臨床病理診断科,昭和大・臨床病理診断科

 日本の炎症性腸疾患(IBD)患者は増加傾向にあり、近年新たな治療薬の登場が相次いでいるものの、病態や予後など十分に解明されていない点は少なくない。今回のセッションについて、司会の岡本隆一氏は「本セッション前半は今後臨床への応用が期待される基礎研究、後半は実臨床への応用が可能な知見を提供する実践的な発表を選んだ」と述べる。

臨床への応用が期待される基礎研究の結果を報告

 前半最初は、須永将梧氏がIBDの発症機序および制御機構を迷走神経の視点から解明するために、新たな迷走神経肝臓枝電気刺激(VHNS)法を開発して制御性T細胞(Treg)機能の増強と腸炎病態の関連を検証した結果を報告する。

 続いて根本泰宏氏は、腸管上皮細胞層の間隙に存在するintraepithelial lymphocytes(IEL)の一部である小腸Double Negative(DN)T細胞の機能を初めて解明し、クローン病との関連を報告する。

 正木翔氏は自然免疫反応受容体のシグナル伝達分子RIPK2とIBDの関連を紹介。クローン病と腸管線維化の関連について線維芽細胞に着目し、臨床への応用も視野に入れた研究を前田啓子氏が報告する。横田佳大氏は腸管上皮細胞特異的HMGCS2欠損マウスを用いた実験で、腸管粘膜におけるケトン体合成経路律速酵素HMGCS2の発現とIBDの関連を検討、三好潤氏はクローン病の活動性を示す新たなバイオマーカーとして血清サイトカイン(Cyt)・ケモカイン(Che)プロファイルに着目した研究結果をそれぞれ報告する。抗インテグリンαvβ6抗体の解析を通じて潰瘍性大腸炎(UC)の病態を解明する桑田威氏の研究が注目されており、今回は最新知見が発表される予定だ。澤橋基氏は東北大学における大規模な検体データを用いて、抗インテグリンαvβ6抗体などの自己抗体価測定によるUC発症前診断を試みた成果を報告する。

難治・再発例、発がんの新たなマーカーを同定

 セッションの後半では、内山和彦氏がIBD発症前の血清を用いて粘膜遺伝子を網羅的に解析。BEST2をはじめUC再燃と関連する新たな遺伝子を見いだしたとの報告を予定している。太田真二氏は老化細胞と治療抵抗性UCの関連性に着目し、組織検体を用いて老化細胞の量や分布などを解析した結果を報告する。小松更一氏は東京大学の豊富な手術症例データから比較的大きな分子であるpolymeric immunoglobulin receptor(PIGR)に着目し、UCの発がん予測マーカーの同定を試みた検討結果を報告する。最後に小原淳氏は、生検標本からデジタル病理画像と人工知能を用いて炎症細胞の浸潤評価/定量化を試みた結果を報告する。

 岡本氏は「IBDの予防・治療のために十分に解明されていない病態についての研究が継続されている。セッションへの参加により、今後明らかになりつつある最新知見の共有に期待したい」と述べている。

※本記事の内容は取材時点での情報です。当日に変更となる場合があります。

第67回日本消化器病学会大会

[会長]上野 義之 
山形大学 内科学第二(消化器内科学)

第110回日本消化器内視鏡学会総会

[会長]田中 聖人 
京都第二赤十字病院

第29回日本肝臓学会大会

[会長]加藤 直也 
千葉大学大学院 消化器内科学

第23回日本消化器外科学会大会 

[会長]瀧口 修司 
名古屋市立大学大学院 消化器外科学

第63回日本消化器がん検診学会大会

[会長]岡庭 信司 
飯田市立病院 消化器内科

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