メトホルミン二都物語
北里研究所病院糖尿病センターセンター長 山田悟
2016年02月16日 12:05
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研究の背景:主たる作用部位は肝臓か,腸管か
UKPDS34において,肥満2型糖尿病患者の心筋梗塞を予防したメトホルミンは(Lancet 1998;352:854-865),現在欧米での糖尿病の第一選択薬の地位を確立している(Diabetes Care 2016;39:S52-S59)。しかし,その作用機序についてはUKPDS34が報告された1998年の時点では不明とされていた。1959年(わが国では1961年)に登場した歴史ある第一選択の薬剤の作用機序が不明のままだったのである。
その状況が変わったのは21世紀になってからであり,メルク社のグループがメトホルミンは肝AMPキナーゼを活性化し,そのことによって肝の糖産生を減弱して血糖値を低下させることを見出した(J Clin Invest 2001;108:1167-1174)。
しかし,このたび,メトホルミンの主たる作用の場は肝臓ではなく,腸管だと主張する論文が米国糖尿病学会(ADA)の機関誌Diabetes Care(2016;39:187-189)に報告された。もちろん,血糖値を良質に管理し,合併症を予防し,患者のQOLと寿命を守ってくれる薬こそが最善の糖尿病治療薬であり,正直,作用機序は二の次でも良いことである。しかし,第一選択薬の作用機序が60年近く経過してまだなお研究の段階にあって,どんどんと新しい知見が出てくるという糖尿病学の奥深さ,面白さ,そして,臨床研究でも基礎医学に勝るとも劣らぬ成果を得られる,そんなことをお伝えしたく,取り上げたい。
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