心筋梗塞の引き金となる身体活動や感情
北里研究所病院糖尿病センターセンター長 山田悟
2016年11月29日 11:52
プッシュ通知を受取る
研究の背景:「慢性=粥腫増大」とは別に「急性=粥腫崩壊」の危険因子
2004年にLancet(364:937-952)に報告されたINTERHEART試験は、先進国だけでなく発展途上国における冠動脈疾患の危険因子を同定する目的で52カ国262施設において実施された大規模な症例-対照研究(症例群1万5,152人、対照群1万4,820人)である。
解析の結果、①喫煙②ApoB/ApoA1比上昇(LDL-C/HDL-C比に近いと考えてよい)③高血圧④糖尿病⑤腹部肥満⑥精神的要素―が危険因子として同定され、①野菜・果物摂取②飲酒③定期的な身体活動―が予防因子として同定された。
しかし、これらは動脈硬化巣の進展(粥腫増大)に関わるものであり、粥腫崩壊(plaque rupture)に関わる急性の引き金が別にあるはずである。その引き金について検討した別の研究では、幾つかの候補が挙げられていた(Lancet 2011;377:732-740、図1)。
図1. 引き金となる行為ごとの人口寄与割合(その引き金で生じた心筋梗塞患者が全心筋梗塞患者に占める割合)とオッズ比
(Lancet 2011;377:732-740)
そこで今回、INTERHEART試験の研究者らは(論文には記載はないが、オッズ比が高いエピソードの中から、法的に禁止されているコカインやマリファナの使用を除外し、オッズ比の上昇が有意でない重い食事を除外して)、身体活動や怒り、感情の動揺が急性の引き金になっているかをINTERHEART試験の症例で検討することとし、やはり、それらが引き金となりえることを報告した(Circulation 2016;134:1059-1067)。
心血管イベントを予防するための方策として、慢性的な危険因子に関する指導だけでなく、こうしたイベントの引き金となる危険因子についての指導を考えるべきと感じたので、ご紹介したい。
…この続きを読むには、ログインまたは会員登録をしてください