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ホーム »  連載・特集 »  薬物相互作用2016 »  4. 薬物トランスポーターの関わる相互作用

薬物相互作用2016 薬物相互作用2016

4. 薬物トランスポーターの関わる相互作用

東京大学大学院薬学系研究科 分子薬物動態学教室 前田和哉
独立行政法人理化学研究所 イノベーション推進センター 杉山特別研究室 杉山雄一

 2016年12月17日 07:00
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本記事は薬剤師向け情報誌「PharmaTribune」に掲載されたものになります。

1. 経口投与された薬物の体内での動き

 まず、経口投与された後の薬の体内での動きを考えてみよう。口から投与された薬は、食道・胃を経由して消化管(小腸)に到達し、消化管内で溶解した後、蠕動運動と共に消化管上部から下部に移動する間に、その一部が消化管壁の上皮細胞の中を通過することにより、消化管腔内から門脈を流れる血液中へと移動する。

 その後、血流にのって肝臓へと運ばれ、一部の薬物は、肝臓の実質細胞の中へと取り込まれる。取り込まれた薬物は、細胞の中にある一連の代謝酵素によって化学構造の変換を受けることで薬効が不活性化され、あるいは、薬の形を変えないまま胆汁中へと排泄され、胆管を経て消化管に胆汁と共に吐き出されて、最終的には糞便と共に排出される。

 一方、肝臓に取り込まれなかった薬物は、全身をめぐる血管へと到達し、血流にのって全身の各臓器へと分布する。この過程の中で、薬物は主な排出臓器である肝臓と腎臓にも分布することにより少しずつ処理されて、糞便中もしくは尿中を介して体外へと排出されていく。

2. 薬物の膜透過の特性とトランスポーターの必要性

 上に書いたような薬物の挙動をより詳しく細胞レベルにクローズアップして見てみると、例えば、消化管の吸収過程では、消化管の上皮細胞の中を管腔側から血管側へ突き抜けるような薬物の移動が、また肝臓・腎臓においても、血管側から細胞の中を抜けて胆汁あるいは尿中への薬物の移動が伴っている。つまり、薬物が体内に吸収されたり、体外へ排出される過程では、薬物が細胞の反対側へ移動する(経細胞輸送)ために、必ず複数回の細胞膜を介した膜透過が必須となる。

 さて、細胞膜は、脂質の二重膜からなっていることから、脂溶性の高い(油に溶けやすい)薬物は膜に溶け込むようにして細胞膜を簡単に通過できる性質がある。このような輸送は受動輸送と呼ばれ、物質の移動は、原則として膜の内外で濃度が高い方から低い方への"下り坂"方向の輸送に限られる(図1

 しかし一方で、水溶性の高い(油に溶けにくい)薬物は、水と油が混ざらないのと同様に、膜にも溶けにくいことから、細胞膜の障壁を簡単には乗り越えられない。もし仮に、これ以外に膜を乗り越えるシステムがなければ、脂溶性の高い物質だけが生体内に取り込まれ、かつどの臓器にも物質は均等にしか配分されないことになってしまう。

 しかし現実には、水溶性ビタミンやアミノ酸など水溶性の高い物質であっても、消化管より効率よく吸収され体内に分布するものもある。つまり生体は、単に物質の脂溶性だけで、物質の体内における挙動が決定されないように、必要なものを効率よく取り込み、毒になるものを積極的に汲み出す能動的な機構を獲得してきた。この能動的な物質の輸送機構を担う本体が、トランスポーターという一連の分子であるといえる。いわば、膜上にある物質移動の"検問所兼運び屋さん"といった表現が適切であろう。

 一般的に、トランスポーターは、生体中で利用可能なエネルギーを消費することにより、濃度勾配に逆らって濃度の低いところから高いところへ"登り坂"方向に濃縮的に物質を輸送できる図1。このような輸送を能動輸送と呼び、その担い手の中心がトランスポーターであるということもできる。

図1. 受動輸送と能動輸送

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