カロリー制限論争は終わらない
米2グループ・アカゲザル研究の共同報告から
北里研究所病院糖尿病センターセンター長 山田悟
2017年02月02日 07:00
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研究の背景:カロリー制限の有効性をめぐり2グループで異なる結果
食事制限の寿命延長効果は多くの動物種で認められており、ヒトにおいても抗加齢作用があるものと期待されている(Science 2010;328:321-326)。しかし、カロリー制限によるヒトでの寿命延長効果を検証するには、時間と経費が膨大にかかるため、現時点では未確認である。
ヒトに最も近い動物実験モデルとして利用されているのがアカゲザルであり、米・ウィスコンシン大学(UW)と米国立加齢研究所(NIA)の2つの施設が独立して研究してきた。2009年に報告されたUWの研究では、カロリー制限食で寿命延長効果が認められたが(正確には加齢関連死亡に対する死亡率低減が認められたが;Science 2009;325:201-204、関連記事)、2012年に報告されたNIAの研究ではカロリー制限食による死亡率の低減は認められず(Nature 2012;489:318-321、関連記事)、両者の相違をどのように解釈するかをめぐって世界中で議論が巻き起こってきた。
このたび、UWとNIAのグループが共同報告として、カロリー制限食の健康への有益性を確認する論文をNat Commun(2017;8:14063)で発表した。一般ニュースでも「カロリー制限論争に終止符」といった表現で取り上げられていたので、多くの先生方がお気付きになったのではなかろうか。しかし、この論文の中身を見ると、そんな単純な話ではないように思われる。私自身は「カロリー制限論争の再スタートだ」と感じたのでご紹介したい。
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