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ドクターズアイ 岩田健太郎(感染症) ドクターズアイ 岩田健太郎(感染症)

災害時にどう抗菌薬を出すか?

または論文の費用効果と「バカの壁」
神戸大学微生物感染症学講座感染治療学分野教授 岩田健太郎

 2017年05月01日 07:00
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イメージ画像 (c)Thinkstock/Getty Images ※画像はイメージです

研究の背景:災害後の医療の実態はブラックボックスである

 また我田引水で、自分たちの研究を紹介して申し訳ない。とはいえ、論文を書くのは読んでもらいたいからだ。なので、出した論文は最大限、あらゆる手段を使って宣伝したい(もちろん建設的なご批判は大歓迎である)。ご寛恕いただきたい。

 論文を書くのは読んでもらいたいからだ。なぜ英語で書くかというと、想定読者が圧倒的に増えるからだ。特にPubMedに収載されれば、米国国立医学図書館(National Library of Medicine)がなくならない限りは、未来永劫自分の書いた論文にアクセスできる。現在の読者だけでなく、未来、また将来の読者も想定できるのだ。ぼくが1回こっきりで消えてしまう学会発表に消極的で、そのエネルギーを英文論文の執筆に費やしているのは、純粋に費用効果の問題である。

 以前はオープンアクセスの論文というと、質の低い、極言すれば胡散臭い論文と見なされることもあった。しかし最近は、質の高いジャーナルでも投稿者が費用を支払えばオープンアクセスにしてくれる。オープンアクセスにしないと、読者は数十ドルの論文購読料を払わねばならない。ぼくの目的は自分の論文をできるだけ多くの人に読んでもらうことなので、アクセスをブロックしたくはない。オープンアクセスにするには正直、多額の費用が必要だが、目的から逆算すると相対的には安い買い物だ。ぼくが医学書、一般書をたくさん書くのはぶっちゃけ「カネがほしい」からだが、論文をオープンアクセスにするときにかかる1,000USドル以上の費用もここから捻出される(ことが多い)。こういうとこではケチケチしたくない。

 閑話休題。

 さて、本題に入る。地震や津波のような自然災害のとき、しばしば現地のインフラやライフラインは大打撃を受ける。2011年の東日本大震災がまさにそうであった。医療班として派遣されたぼくは、水道も電気もガスもなく、通常の血液検査や画像検査も不可能な状況で被災地の医療を支援した。

 そのとき多かったのが、例えば「慢性の咳」である。これは、病歴からは粉塵などに伴う刺激性の咳と思えたが、なぜか毎週とっかえひっかえ抗菌薬が処方されていた。

 いったい、被災地で抗菌薬はどのように使われているのだ? その実態を知りたい。

 これがぼくの発したリサーチクエスチョンである。先行研究はほとんど存在しない。日本のデータは全くない。調べてみる価値はある。宮城県石巻市での被災地診療録にアクセスし、抗菌薬処方の妥当性を調査したのが本研究である1)。もちろんオープンアクセスで誰でも全文読める。

1)Iwata K, Fukuchi T, Hirai M, Yoshimura K, Kanatani Y. Prevalence of inappropriate antibiotic prescriptions after the great east Japan earthquake, 2011. Medicine (Baltimore) 2017 Apr; 96(15): e6625. 

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薬のデギュスタシオン2

  

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