上田ではなぜ 疑義照会がスムーズなのか2 上田薬剤師会会長の飯島康典氏に聞く 参考になった 名の医師が参考になったと回答 記事をクリップ 記事をクリップして、あとでマイページから読むことができます Facebookでシェアする Xでシェアする Lineでシェアする 長野県の上田地域では早くから医薬分業が定着し、面分業が根付いているという。上田では疑義照会はどのように行われているのか。上田薬剤師会会長の飯島康典氏(上田市・イイジマ薬局)に聞くシリーズ、第2回。(第1回はこちらから) 上田における医師と薬剤師の関係を示すものの1つである、地域医薬品リスト集。上田薬剤師会の会員薬局が応需できる全医薬品を掲載したリストだが、これを説明するため薬剤師会は、上田小県地域で新規開業する医師にコンタクトを取る。そして、クリニックのコンピュータを覗かせてもらい、入力された用法・用量を確認するという。 薬剤師会ぐるみの対応が 医師との関係を変える! 新規開業のクリニックを訪問し,医師に薬剤師の職能を理解してもらうことができるのは、いったいなぜか。他の薬剤師会でも可能なのか。飯島氏は「それは私たちが門前薬局ではないからだ」と明言する。一医療機関と門前薬局の関係では、どうしても処方箋の出し手と受け手という力関係が生じ、疑義照会など当たり前の情報交換さえ難しくなるケースが少なくない。 一方、かねて上田薬剤師会は、地域の全医療機関の処方箋を薬剤師会全体で受けるという姿勢を貫いてきた。「個々の医師が出す処方薬を、患者さんが地域のどの薬局でも受けられるよう薬剤師会が責任を持って取り組む」。こうした姿勢ゆえに、薬剤師が地域医療のプレイヤーとして認知されるようになったのだ。 事実、単独医療機関からの処方箋集中率を見ると、全国平均では75%に上るが、上田では33%に留まる(表2)。集中率が90%を超す一機関特化型のいわゆる門前薬局は、全国の薬局の4割を占めるが、上田ではわずか1.2%だった。また、上田薬剤師会会員薬局の処方箋受取医療機関数は、平均80を超すという。 ※1 保険薬局での処方箋受け取り枚数÷医療機関での処方箋発行件数。医薬分業率とも。※2 単一医療機関が発行した処方箋枚数÷保険薬局が受け取った処方箋総数。※3 平成27年度老人保健健康増進等事業「地域包括ケアシステムにおける薬局・薬剤師による薬学的管理の向上及び効率化のための調査研究事業」(みずほ情報総研)、平成28年度診療報酬改定の結果検証に係る特別調査(平成28年度調査)、後発医薬品の使用促進策の影響及び実施状況調査報告書(案) 上田の備蓄医薬品数は全国平均の倍 すなわちこれが面分業だが、実践は容易ではない。単独の医療機関に特化した薬局であれば、それを踏まえた品揃えをすればよい。しかし、平均80施設を相手にする以上、備蓄医薬品は膨大にならざるをえない。薬局の平均備蓄医薬品数は、上田では1,873と全国の倍近い数字になっている(表2)。当然、廃棄する薬剤も増えるし、薬剤師は全科の薬剤について知識が要求される。期限切迫薬剤の消化協力体制や薬剤師の質の担保も薬剤師会が責任を持って行わなければならない。 「上田では調剤チェーンの門前薬局が根付かない」という話を耳にするが、このあたりに理由がありそうだ。飯島氏によると、かつて東とうみ御市民病院の薬剤師が減って院外処方を始めたとき、門内薬局を作ってほしいとの依頼があった。しかし、上田薬剤師会はこれを断り、会員薬局全体で引き受けると説明。病院ロビーにFAXコーナーを設け会員薬局の番号を入力、開始から3カ月間は委員を派遣し、患者が希望する薬局へのFAX送信の手順を教えた。すると、患者は自宅最寄りの薬局やかかりつけの薬局で薬をスムーズに受け取ることができ、不満が出ることはなかったという。 責任を引き受けたから医師と対等に話せる なぜ上田で疑義照会が問題にならないのか、幾つかの答が見えてきた。まず、薬剤師と医師の間に医療人として互いを尊重する関係性が存在することである。最近も、"医師の処方権と薬剤師の調剤権の格差"といった言葉が話題になったが、現実の薬剤師と医師の関係は対等とはいえない。それが医師に"同等の医療人"と言わしめるまでになったのは、上田の薬剤師が薬剤師会としてまとまり、地域の薬物療法の担い手になるという責任を引き受けたからだろう。 そこには当然、地域の薬剤師の質を担保する義務が生じ、地域医療の担い手であることを住民に理解してもらう必要もある。そうした課題を1つ1つ解決する中で上田薬剤師会の先進性は確立された。上田薬剤師会と個々の薬局、住民、地域との関係などについては、PTWeb 連載「上田ではなぜ?」で追いかけていく。 参考になった 名の医師が参考になったと回答 記事をクリップ 記事をクリップして、あとでマイページから読むことができます Facebookでシェアする Xでシェアする Lineでシェアする ×