快刀乱麻⑳ 臨床研究法とディオバン裁判(下)
2017年09月07日 06:30
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前回に引き続いてディオバン事件の判決と臨床研究法についてお話する(関連記事:「臨床研究法とディオバン裁判(上)」)。今回の事件では、東京地裁は被告人の行為についての事実認定では、おおむね検察官の主張を採用している。まず、カルシウム拮抗薬(CCB)とディオバン(一般名バルサルタン)の併用についてのスタディでは、被告人は、CCBサブ解析におけるCCB投与群とCCB非投与群との群分けについて、一定の基準に基づかない恣意的な群分けをしていること、その群分けはCCBの使用期間が12カ月を超えるか否かという基準でなされたものではないにもかかわらず、共同研究者らに対し、CCBの使用期間が12カ月を超えるか否かという基準で群分けがされたという前提で、解析結果を記載した論文用の図表を提供したものと認定した。
この認定では、大学の先生方は、被告人に騙されて誤った論文を作成させられたという図式である。マスコミやネット上であれこれ言われていた構図とはかなり異なる図式であるが、はっきり言って、多少の研究費と引き換えに論文取り下げ(retraction)騒ぎになって研究者生命に傷が付くような疫学論文を書く義理は大学の先生方にはないであろうから、統計に疎いために被告人の言う通りに動いたと考える方が自然であろう。認定は適切であると感じる。
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