O157食中毒事件に見る現場主義の危うさ
腸管出血性大腸菌は世界的な問題だ
「事件は会議室で起きてるんじゃない!現場で起きてるんだ!」
昔、流行ったドラマのセリフだそうだ。僕はドラマの良い視聴者ではないので、観たことはないが。ま、そういう側面もある。しかし、この「現場に行くのが大事だ」が、「現場に行っときさえすればいいんだ」になりがちな危うさを、僕は時に感じる。
例えば、今年(2017年)8月に起きた腸管出血性大腸菌(いわゆるO157)食中毒事件である。群馬、埼玉のデリカテッセンで食中毒が発生したとして、保健所が立入検査を行い、やれトングの使い方が悪いのなんのと議論、憶測が飛び交った。しかし、実際には同じ遺伝子型のO157による感染が15都県、計91人に起きていたのである1)。
1)https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20171120-OYTET50032/
このような広範な広がりを見せている食中毒病原体の調査をするなら、より「上流」の感染源(ソース)を探すのが定石だ。一方、現場の調査は翌月(9月)に行われたのだが、その時点では各所から菌が検出されない可能性は高い。よって、単純な現場調査、患者調査だけでなく、例えば非患者(対照群)との比較試験なども行わなければならない。
そんなのは、11月の報道を見た上での後出しジャンケンだろ。後からならなんとでも言える、現場ナメんな・・・と思ってはいけない。なぜなら、このO157の流行が広範囲に及ぶことは、感染症関係の国際メーリングリスト、ProMEDで9月2日には既に専門家間で共有されていたからである2)。この時点で、「トングとか調べてる場合じゃない」のは自明であった。
2)http://www.promedmail.org/direct.php?id=20170902.5290952
とはいえ、病原性大腸菌は世界的な問題であり、これに苦しんでいるのは日本だけではない。そこで、今回は海外における腸管出血性大腸菌アウトブレイク事例と、その調査方法を紹介しよう3)。
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岩田 健太郎(いわた けんたろう)

1971年、島根県生まれ。島根医科大学卒業後、沖縄県立中部病院、コロンビア大学セントルークス・ルーズベルト病院、アルバートアインシュタイン医科大学ベスイスラエル・メディカルセンター、北京インターナショナルSOSクリニック、亀田総合病院を経て、2008年より神戸大学大学院医学研究科教授(微生物感染症学講座感染治療学分野)・神戸大学医学部付属病院感染症内科診療科長。 著書に『悪魔の味方 — 米国医療の現場から』『感染症は実在しない — 構造構成的感染症学』など、編著に『診断のゲシュタルトとデギュスタシオン』『医療につける薬 — 内田樹・鷲田清一に聞く』など多数。
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