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ドクターズアイ 川口浩(整形外科) ドクターズアイ 川口浩(整形外科)

否定される整形外科手術の有効性

関節鏡視下肩峰下除圧術のRCTから
東京新宿メディカルセンター脊椎脊髄センター長 川口浩

 2018年01月23日 06:00
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研究の背景:整形外科手術の効果を証明したエビデンスは少ない

 最初に断わっておくが、今回紹介するのは超マイナー・オタクな論文で、その内容はごく一部の先生の興味しか引かないと思う。しかしながら、我慢して読んでいただけると、今までの整形外科の手術療法の問題点や最近の再評価についての流れが見えてくると思う。

 さて、「整形外科医にできて、接骨院・整骨院(いわゆる柔道整復師:柔整)にできない治療は?」というクイズを出したら、答えられる国民がどれくらいいるかを想像すると、少々恐ろしくなる。一応、正解は「急性または亜急性の外傷性の骨折・脱臼・打撲・捻挫・挫傷以外の運動器疾患全て」である。柔整の業務は「急性または亜急性の外傷性の骨折・脱臼・打撲・捻挫・挫傷などの損傷に対しての整復や固定をすること」と限定されている。しかしながら現実には、慢性腰痛、加齢による変形性関節症・脊椎症、五十肩の治療を平然と行っている柔整も全国に数多く存在する。そして、多くの患者が整形外科も柔整も大差がないと判断して、柔整を受診している。

 確かにわれわれ整形外科医は内科医ほど、科学的エビデンスが確立された治療法を持っていないのは事実で、私を含めた整形外科医は反省しなければならないかもしれない。しかしながら、こんなことをウダウダ言っても、国民には何のことだか分からない。先のクイズには「正解は手術です」と答えると、多くの国民は納得してくれるであろう。つまり、整形外科は手術をやる科であり、事実、多くの手術が整形外科には存在する。手術の部位や種類からいえば、全ての診療科の中でもダントツで多い科ではないだろうか。私自身は脊椎外科医であるが、骨折の手術も、四肢の人工関節も、切断指の再接着も、若いころに一通り経験しており、今だってできる(と思う)。ただ、病院の若い医師たちは「絶対にやめてください」と止めるし、患者も「結構です」と言ってやらせてくれないから、やらないだけである。

 本題に戻ると、整形外科の手術は、外傷と悪性腫瘍を除けば、絶対適応の手術は極めて限られている。したがって、手術の前には患者に手術の利点・必要性と欠点・危険性を十分に説明して、基本的には患者に判断してもらうということになる。インフォームド・コンセントと言うと聞こえはいいが、医療の素人である患者に最終決定を委ねるのは、少々無責任な気がする。少なくともわれわれ整形外科医は、手術についての最新の正確な学術情報を、客観的にエビデンスベースで患者に伝えなければならない。

 しかしながら、手術治療は薬物治療などに比べて、その効果が質の高いエビデンスとして証明されていないケースがほとんどである。そもそも手術治療には、医薬品医療機器総合機構(PMDA)のような公式の承認審査システムが存在しない。薬物治療の承認過程で定番であるプラセボ対照二重盲検ランダム化比較試験(RCT)を、手術治療において行うのは困難である。「重症例には手術をして、それ以外には保存療法」というのが基本なので、介入群と対照群で患者特性を同じにする割り付けは倫理的に問題である。プラセボ(シャム手術)対照はもっと問題である。実際に皮膚を切ってアプローチだけして肝心の手術だけはしないで閉創するなど、ただの傷害犯罪としか思えない。それでも最近は、治験途中での群間の変更や逸脱があっても、当初割り付けられた2群で介入の効果を比較するintention-to-treat(ITT)解析を加えることによって手術治療のRCTが行われ、その有効性がエビデンスとして評価され始めている。

 今回紹介する論文は、関節鏡視下肩峰下除圧術の有効性を検討した、英国のプラセボ対照二重盲検RCTの結果を報告したものである(Lancet 2017年11月20日オンライン版)。同除圧術は、関節鏡視下で骨棘および軟部組織を除去して肩峰下の間隙を広げることによって、回旋筋腱板のインピンジメントを軽減する手術で、肩の痛みの原因のひとつであるインピンジメント症候群に対して、最近世界的に多く行われるようになっている。

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