早期介入への努力:循環器内科が外傷外科から学べること
慶應義塾大学循環器内科 香坂 俊
2018年11月07日 13:55
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今回扱う論文のテーマは「外傷性(出血性)ショック」である。循環器とは多少離れた分野の話になるが、両者とも急性疾患を幅広く扱う分野であり、そうした現場での早期の介入を考える上で、このPAMPer研究(N Engl J Med 2018; 379: 315-326) は非常に参考になる。
研究の背景:ショック症例には輸液か? 輸血か?
簡単に研究の概要を紹介したい。外傷による出血性ショックの致死率は高く、そのほとんどが受傷後2時間以内に亡くなっている。なので、早期の介入が鍵となる疾患なのだが、これがなかなか難しく、四肢への受傷であれば駆血帯で縛ってしまうということができるものの、胴体の受傷ではいかんともし難く、急いで外傷センターに搬送するしかないというように考えられていた。せめて輸液を行っておこうという考えもあったが、大量に晶質液(crystalloid)を投与すると、逆に凝固異常が惹起され予後が悪くなるということが(ベトナムとイラクという2つの戦争を経て)分かってきている。
そこで最近では、
・Crystalloidの使用は必要最小限に抑える
・むしろ輸血を中心に行う 〔赤血球(RBC):血小板(PC):新鮮凍結血漿(FFP) = 1:1:1 の比率で〕
という方向に輸液の戦略が変わってきている。そして、この「輸血」を出血性ショックの患者を搬送しているときに早期投与することに意義はあるか? そこの検討が研究で行われた。
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