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特集「疑義照会を考える」

このままでは医薬分業が患者の不利益に

―薬局薬剤師が医師・病院薬剤師に望む連携と情報共有

 2019年02月05日 10:00
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 精神疾患患者に対する服薬指導には困難がつきまとう。薬局薬剤師が丁寧な説明を心掛けても、副作用や相互作用に対する患者側の受けとめ方によっては、過剰反応や症状悪化の引き金になる。また、医師と異なった説明を行うと、医師-患者の関係を崩し、治療の成否に影響を与えかねない。これらを回避するには、薬局薬剤師と医師・病院薬剤師との連携が不可欠だ。トライアドジャパン株式会社薬局事業統括本部の竹内尚子氏は、第28回日本臨床精神神経薬理学会/第48回日本神経精神薬理学会(11月14〜16日)のシンポジウム「精神科医と薬剤師のクロストーク」に登壇。患者および医療従事者を対象に行ったアンケート結果から、薬局薬剤師が置かれている状況を①患者②医師③制度―の3つの観点から考察し、情報共有を中心とした連携構築の必要性を訴えた。(関連記事:疑義照会を受けた医師の本音はコレだ!)

◎この記事のポイント

  • 知りたい患者と話してほしくない医師
  • 十数年前と変わらぬ薬局薬剤師の"板挟み状態"
  • 必要な情報を医療者でなく患者から得ていることが問題
  • このままでは医薬分業が患者の不利益に

知りたい患者と話してほしくない医師

 竹内氏らは2000年に勤務先の薬局に来る392例の患者に対してアンケートを行ったことがある。「薬局で詳しく知りたいと思っている内容」については、全回答者の半数以上が「副作用」を挙げており、とりわけ精神科患者(133例)で「副作用」と回答した例は78.9%にも上っていた(図1)。

図1 患者が薬局で詳しく知りたいと思っていること

22726_fig1.png(竹内尚子他. 薬局 2002; 53: 2232-2238.)

 しかし、「そのころは医師との連携が取れていなかった。医師からは『副作用は伝えないように』『症状などを患者に聞かないように』『医師-患者関係がくずれるので、薬局では服用方法以外は話さないように』と言われていた」と、同氏は振り返る。薬局薬剤師は、知りたい患者と、話してほしくない医師の間で、何もできない"板挟み状態"に陥っていたのだ。では医師は、保険薬局による患者への情報提供は不要と考えていたのだろうか。

 その2年後に、かもめ薬局北里健康館近隣の病院医師、クリニック医師、薬局にアンケートを行った。すると、病院医師とクリニック医師のほぼ全員が、薬局からの情報提供は「必要」と考えていた。ところが、半数以上が「保険薬局が行った情報提供で困ったことがある」と回答。効果や副作用に関する情報がほとんどだった。つまり、医師は薬局薬剤師から精神疾患患者への情報提供の必要性を認めてはいるが、実際は「その情報が連携に基づいて共有化されたものでないために問題を引き起こしている」と考えていたのである。

 アンケートでは「望まれる連携の方法」についても尋ねている。それによると、病院医師、クリニック医師、病院薬剤師、薬局薬剤師は一様に、「定期的な情報交換」を望んでいた。「連携により期待されること」としては「処方意図の理解」「適切な服薬指導」を挙げていた(2)。

図2 医師・薬剤師が連携に期待すること

(竹内尚子氏提供)

十数年前と変わらぬ薬局薬剤師の"板挟み状態"

 最近、薬局薬剤師に医療連携に関する意見を再度聞いた竹内氏は衝撃を受けた。なぜなら、多くの薬局薬剤師が十数年前と変わらず「情報を共有して、医師の処方意図を知りたい。それを服薬指導、薬学的管理に活かしたい」と考えていたためだ。薬剤師の"板挟み状態"はまだ続いていた。

 医師と相談したいことも、「睡眠薬の倍量処方」「多剤併用対策」「後発医薬品の使用促進」と、かねてからの問題が変わらず挙がっていた。

 そして「患者自身も問題を抱えている」と同氏は付言した。薬局で精神疾患患者に服薬指導をするなかで、「緊張して医師に必要な情報を伝えられない」「話すのを忘れてしまう」「医薬品適正使用に関する理解が不十分」「量やタイミングなどを自己調節する」といった問題点が見えてくるという。

必要な情報を医療者でなく患者から得ていることが問題

 一方、薬局を取り巻く制度的な状況は変化している。2013年には地域包括ケアシステムの構築が提言された。それに連動し「患者のための薬局ビジョン」が策定され、「かかりつけ薬剤師・薬局」を前提とした健康サポート薬局または高度薬学管理薬局としての機能が望まれるようになった。かかりつけ薬剤師には、調剤した際の服薬指導だけでなく、服薬期間を通しての薬学管理が求められる。

 このような状況変化への対応に必要なのは、やはり「情報の共有」だ。竹内氏は、薬局薬剤師が医療機関や医師からほしい患者情報として、①病名②患者の症状・特性③処方薬についてどのように伝えているのか(薬効・副作用の説明など)④生活指導について(アルコールの摂取、食事指導、自動車運転など)を挙げた。「現状、薬剤師はこれらの情報を"医療者からではなく患者から得ている"ことが問題だ」と指摘している。

このままでは医薬分業が患者の不利益に

 では、実際に精神科医から情報を引き出すことは難しいのか。同氏は「応じていただけないことも少なくない」と言う。しかし、「このような状態が続くと、医師は服薬指導を望んでいないという固定観念にとらわれ、何もしない、あるいはできない薬剤師を生み出してしまう。結果的に、医薬分業は患者の不利益となってしまう可能性がある」と懸念する。

 最後に同氏は、精神科医に対し、検査情報、治療内容、診療記録などの情報提供を呼びかけた。そして、「これからの時代において、連携の最終形体はICTを利用した情報共有であるが、まずは顔の見える関係を作る。そして、ノンコンプライアンス、適応外など疑義照会のポイントを予め決めておくなど、お互いの負荷を減らす工夫から始めることで情報共有の実現、より良い精神科医療につながるものと考えている」と結んだ。

知りたい患者と話してほしくない医師

 竹内氏らは2000年に勤務先の薬局に来る392例の患者に対してアンケートを行ったことがある。「薬局で詳しく知りたいと思っている内容」については、全回答者の半数以上が「副作用」を挙げており、とりわけ精神科患者(133例)で「副作用」と回答した例は78.9%にも上っていた(図1)。

図1 患者が薬局で詳しく知りたいと思っていること

(竹内尚子他. 薬局 2002; 53: 2232-2238.)

 しかし、「そのころは医師との連携が取れていなかった。医師からは『副作用は伝えないように』『症状などを患者に聞かないように』『医師-患者関係がくずれるので、薬局では服用方法以外は話さないように』と言われていた」と、同氏は振り返る。薬局薬剤師は、知りたい患者と、話してほしくない医師の間で、何もできない"板挟み状態"に陥っていたのだ。では医師は、保険薬局による患者への情報提供は不要と考えていたのだろうか。

 その2年後に、かもめ薬局北里健康館近隣の病院医師、クリニック医師、薬局にアンケートを行った。すると、病院医師とクリニック医師のほぼ全員が、薬局からの情報提供は「必要」と考えていた。ところが、半数以上が「保険薬局が行った情報提供で困ったことがある」と回答。効果や副作用に関する情報がほとんどだった。つまり、医師は薬局薬剤師から精神疾患患者への情報提供の必要性を認めてはいるが、実際は「その情報が連携に基づいて共有化されたものでないために問題を引き起こしている」と考えていたのである。

 アンケートでは「望まれる連携の方法」についても尋ねている。それによると、病院医師、クリニック医師、病院薬剤師、薬局薬剤師は一様に、「定期的な情報交換」を望んでいた。「連携により期待されること」としては「処方意図の理解」「適切な服薬指導」を挙げていた(2)。

図2 医師・薬剤師が連携に期待すること

(竹内尚子氏提供)

十数年前と変わらぬ薬局薬剤師の"板挟み状態"

 最近、薬局薬剤師に医療連携に関する意見を再度聞いた竹内氏は衝撃を受けた。なぜなら、多くの薬局薬剤師が十数年前と変わらず「情報を共有して、医師の処方意図を知りたい。それを服薬指導、薬学的管理に活かしたい」と考えていたためだ。薬剤師の"板挟み状態"はまだ続いていた。

 医師と相談したいことも、「睡眠薬の倍量処方」「多剤併用対策」「後発医薬品の使用促進」と、かねてからの問題が変わらず挙がっていた。

 そして「患者自身も問題を抱えている」と同氏は付言した。薬局で精神疾患患者に服薬指導をするなかで、「緊張して医師に必要な情報を伝えられない」「話すのを忘れてしまう」「医薬品適正使用に関する理解が不十分」「量やタイミングなどを自己調節する」といった問題点が見えてくるという。

必要な情報を医療者でなく患者から得ていることが問題

 一方、薬局を取り巻く制度的な状況は変化している。2013年には地域包括ケアシステムの構築が提言された。それに連動し「患者のための薬局ビジョン」が策定され、「かかりつけ薬剤師・薬局」を前提とした健康サポート薬局または高度薬学管理薬局としての機能が望まれるようになった。かかりつけ薬剤師には、調剤した際の服薬指導だけでなく、服薬期間を通しての薬学管理が求められる。

 このような状況変化への対応に必要なのは、やはり「情報の共有」だ。竹内氏は、薬局薬剤師が医療機関や医師からほしい患者情報として、①病名②患者の症状・特性③処方薬についてどのように伝えているのか(薬効・副作用の説明など)④生活指導について(アルコールの摂取、食事指導、自動車運転など)を挙げた。「現状、薬剤師はこれらの情報を"医療者からではなく患者から得ている"ことが問題だ」と指摘している。

このままでは医薬分業が患者の不利益に

 では、実際に精神科医から情報を引き出すことは難しいのか。同氏は「応じていただけないことも少なくない」と言う。しかし、「このような状態が続くと、医師は服薬指導を望んでいないという固定観念にとらわれ、何もしない、あるいはできない薬剤師を生み出してしまう。結果的に、医薬分業は患者の不利益となってしまう可能性がある」と懸念する。

 最後に同氏は、精神科医に対し、検査情報、治療内容、診療記録などの情報提供を呼びかけた。そして、「これからの時代において、連携の最終形体はICTを利用した情報共有であるが、まずは顔の見える関係を作る。そして、ノンコンプライアンス、適応外など疑義照会のポイントを予め決めておくなど、お互いの負荷を減らす工夫から始めることで情報共有の実現、より良い精神科医療につながるものと考えている」と結んだ。

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