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薬剤師のための薬物相互作用

3. 消化管内での相互作用(2019)

 2019年02月21日 13:28
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東京大学医学部附属病院 薬剤部 大野能之
千葉大学大学院薬学研究院 臨床薬理学研究室 樋坂章博

1. 消化管内pHの変化による相互作用

 固形製剤の消化管からの吸収性は、消化管内における製剤の崩壊性および薬の溶解性により大きく変化します。併用薬により消化管内のpHが変化すると、これらに影響を与え、薬物相互作用を生ずる場合があります。

 例えば、イトラコナゾールの固形経口薬は、プロトンポンプ阻害薬であるオメプラゾールと併用すると、オメプラゾールの酸分泌量低下作用による胃内pHの上昇により、イトラコナゾールの消化管での溶解性が低下し、血中濃度曲線下面積(AUC)が64%、最大血中濃度(Cmax)が66%低下することが報告されています1)

 一方、イトラコナゾールを溶解補助薬(ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン)を用いて溶解した内用液製剤は、胃酸による溶解を必要としないため、オメプラゾールを併用してもその吸収は影響されないことが確認されています2)。なお、消化管内pHの変化による相互作用を回避するために、併用薬の投与のタイミングをずらすことは一般的には有用ですが、プロトンポンプ阻害薬が併用薬の場合は、その酸分泌量低下作用が不可逆的で持続性があるので、投与間隔を空けても十分な回避は困難であるといわれています。

 消化管内のpHの変化が薬剤の消化管吸収に及ぼす影響は、溶解性に関係するものだけではなく複雑な面もあります。例えば、一般に消化管からは非解離型(非イオン型)の分子のみが吸収されますが、消化管内pHの変化は、非解離型と解離型の比に影響します。また、胃内容物排出速度にも影響を与えることが知られています。

2. 吸着およびキレート形成による相互作用

 消化管内に同時に投与した薬物間で、物理化学的な相互作用が直接働くことがあります。分かりやすい例としては、陰イオン交換樹脂製剤であるコレスチラミンがあります。これは消化管内の胆汁酸を吸着して、コレステロールの吸収を阻害する脂質異常症治療薬として古くからある薬剤ですが、ワルファリン、ジギタリス製剤、メフェナム酸など、同時併用により多くの薬剤を消化管内で吸着し、その吸収を低下させます3)。他の有用な同効薬が多く開発されたこともあり、そのためにコレスチラミンは脂質異常症治療の目的には現在ほとんど使用されなくなりました。

 一方で、消化管内において難溶性のキレートを形成するために吸収が低下する薬物が少なくありません。例えば、ニューキノロン系抗菌薬は、アルミニウムやマグネシウムなどの金属カチオンを含む制酸薬と同時投与すると、キレートを形成し吸収が低下することが知られています。水酸化アルミニウムゲルをニューキノロン系抗菌薬であるシプロフロキサシンやシタフロキサシンなどと同時投与すると吸収が低下します。その吸収低下の程度はニューキノロン系抗菌薬、また金属カチオンの種類によって変化します。

 この相互作用を避けるには、一般にニューキノロン系抗菌薬の服用時間の4時間前あるいは2時間後に金属カチオン含有制酸剤を服用することが推奨されます。ただし、相互作用の程度や服薬アドヒアランスも考慮して、状況に応じて、金属カチオンを含まない消化性潰瘍治療薬に変更するといったマネジメントも考えられます。

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 参考文献

  1. Jaruratanasirikul S, et al. Eur J Clin Pharmacol 1998; 54(2): 159-161.
  2. イトリゾール®内用液 インタビューフォーム
  3. クエストラン®粉末 インタビューフォーム.

[PharmaTribune 2016年11月号掲載]

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