公衆衛生の平成と令和 大島明
大阪国際がんセンターがん対策センター特別研究員
2019年04月27日 06:00
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平成を彩った3大ニュース
1.神経芽腫マススクリーニング事業の中止 2003年(平成15年)
神経芽腫マススクリーニング事業は1984年、厚生省(当時)が都道府県・政令指定都市を実施主体とする神経芽腫検査に対する補助を開始して全国的に展開されるようになった。当初の受診率は60%弱だったが、2001年度には90%強となった。
ところが、大阪府がん登録のデータにより神経芽腫の罹患率と死亡率の推移を見ると、スクリーニングによって神経芽腫の罹患率は急増したものの死亡率には変化が認められなかった。国際的には、1998年に開催された神経芽腫スクリーニングに関する専門家会議で「研究は可、ルーチンのスクリーニングは不可」と結論されていた。2002年にはドイツとカナダ・ケベック州で実施されたk介入研究により、神経芽腫スクリーニグは神経芽腫死亡減少効果を持たないことが明らかにされた。
がんの中には、進行が非常にゆっくりしていて放置していても死亡につながらないものがあり、検診がなければがんと診断されることなく一生を終えると考えられる。検診でこのようながんを見つけてしまうことを「過剰診断」というが、上記のマススクリーニングによって発見された神経芽腫はその典型である。
2003年8月14日になってようやく、厚生労働省母子保健課長通知が出され、2004年度から検査事業は中止された。事業中止後、大阪府そして全国で神経芽腫死亡率が増加しなかったことが確認されている。
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