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いじめを減らすエビデンス

神戸大学微生物感染症学講座感染治療学分野教授 岩田健太郎

 2019年07月01日 05:00
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イメージ画像 © Getty Images ※画像はイメージです

研究の背景:いじめはWHOも注目する社会の病気

 僕は、「新しいもの好き」な部分と、新しいものに飛びつけない保守的な部分が同居している複雑な(面倒くさい)人間だ。例えば、読書だとKindleに入れた電子書籍をiPhoneの読み上げ機能を使ってジョギング時に聞く(読む)のがお気に入りだが、新幹線での移動時に読む本はほとんど紙の本である。いや、われながら面倒くさいやつだ。

 で、論文の整理は完全に電子化している。昔は、マニラフォルダに気に入った論文の切り取りやコピーを挟んでジャンルごとにキャビネットにしまい込んでいたが、これだといざというときに取り出せない。今はZoteroという文献整理ソフトにお任せで、検索も容易だからすぐに欲しい論文が手に入る(本連載で紹介してきた論文はDoctor's Eyeというフォルダに入っている)。PubMedとGoogle Scholarもどんどん進歩して使いやすくなっているので、そもそも「あれ、どこいったっけ」な論文は新規に探し直せばいいや、という時代である。昔の論文をしまい込んだキャビネットはここ10年くらい開いたことがない。

 しかし、これが定期的に読むジャーナルとなると、今でも紙版を郵送してもらっている。電子版の方がやや安価なのだが、パラパラ流し読みするときには紙の方がベターだ。少なくとも僕にはベターだ。図表などもトポロジカルに頭に入ってくるので、こればかりはパソコンやタブレットでは得られない体感である。

 日本語の雑誌はたくさん送ってくるし読んでいないものも多いのでここでは割愛するが、英文誌で定期購読していてかつ紙で送ってくるのはNew England Journal of MedicineLancetJAMAJAMA Internal MedicineAnnals of Internal MedicineClinical Infectious DiseasesJournal of Infectious DiseasesLancet Infectious Diseasesの8誌である。他にも定期購読すべき雑誌はあるのだろうが(BMJとかCMIとか...)、僕のキャパではこれでもいっぱいいっぱいだ。僕は基礎医学のプロじゃないので、CellScienceNature系の論文はまれにしか読まない。

 で、パラパラ読んでいて「後で読むー」となった気になる論文は、そのページを開いて隣の棚に積んでおく。こんなことやってるから部屋がぐちゃぐちゃになるんだねー(https://www.buzzfeed.com/jp/naokoiwanaga/desk-chaos)。リンクの記事の筆者、向かって右に積んであるのが「後で読むー」な論文の数々だ。

 で、今回紹介する論文は、そんな「積んであった」気になる論文の1つである。「後で読むー」と思っていたのだが、半年くらいほったらかしてしまっていた。

 それは、いじめ対策の論文だ。

●Bonell C, Allen E, Warren E, McGowan J, Bevilacqua L, Jamal F, et al. Effects of the Learning Together intervention on bullying and aggression in English secondary schools (INCLUSIVE): a cluster randomised controlled trial. Lancet. 2018 Dec 8; 392(10163): 2452-2464.

 本研究はいじめ(bullying)と攻撃性(aggression)に関する、英国のSecondary School(11〜14歳)の生徒を対象としたクラスターランダム化比較試験だ。

 日本でもそうだが、海外でもいじめは深刻な問題で、世界保健機関(WHO)なども注目している。いじめは他者に対する身体的、精神的かつ意図的な攻撃行動であり、この一部をなすのが「攻撃性」である。いじめ対策もあちこちで行われているが、「これが効果的だ」というエビデンスを示したものはほとんどない。

 本研究の著者たちは、先行となるパイロット研究で学校ベースの介入がいじめを減らすのに有用ではないかと着想を得ていた。

 第一に、校則やシステムまで変更した全学校レベルでの介入である。単に授業で「いじめは駄目ですよー」と言うだけでは不十分、というのだ。そこでは生徒にも学校活動にコミットさせる。学校もまた、社会における健康状態を決定する一要素なのであり、「いじめがない状態」もまた、健康の一要素だということだ。いじめられていて「健康」というのはありえない矛盾だ、ということだ。

 第二に有用と考えられるアプローチは、一度こじれた生徒同士、あるいは生徒と教師の人間関係の回復活動(restorative practice)である。いじめられっ子がいじめっ子と対話する機会をつくり、いじめという行為がいじめられっ子に何をもたらしているのかをいじめっ子が認識できるようにする、というものだ。このような介入をいじめが起きる前の一次予防として、またはいじめが起きた後の二次予防策として行う。

 第三は社会的情動的教育だ。生徒に感情や人間関係を円滑にするスキルを提供するのだ。

 こうした介入は、Learning together(ともに学ぶ)と称された。著者らは8つの学校でパイロット研究として「ともに学ぶ」介入を行い、これはいけるという感触を得た。そこで、今回のINCLUSIVE研究を遂行したのである。

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