胃がんで終末期の60歳代男性がオピオイドを拒否①

あなたはどう考える? 薬剤師の在宅ケーススタディ vol.3

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 在宅訪問エキスパートの6人の薬剤師が症例を提示し合い、さまざまな視点から対応を考える本連載。第3回は、胃がん患者への対応がテーマです。これまでは病院に通院していたものの、急激な体調悪化のため医師の往診が始まった患者。本人は拒否していますが、医師から「ゆくゆくはオピオイドの使用も検討したい」と連絡があり、薬剤師が介入することになりました。でも、ほとんど話さない方で、オピオイドも拒否されているとのこと。薬剤師として何ができるでしょう。
 正解は1つではありません。あなたなら、どんな対応を考えますか?

※症例は架空のものです
Illust:macco

●今回の出題者:プラス薬局高崎吉井店 小黒 佳代子さん

●今回の患者とプロフィール:60歳代の男性Uさん。3年前に胃がんが見つかり手術したものの再発し、現在は終末期。数カ月前にイレウスを併発。食事はほとんど取れず、がん性腹膜炎、閉塞性黄疸がある。予後は週単位と思われるが、今は医師が勧めてもオピオイドの使用を拒否している。訪問看護師が1日1回の輸液と体調確認のために訪問。妻を亡くして一人暮らし。近隣に娘夫婦と小学生の孫が住んでいる。

●Uさんのエピソード:初めての訪問時のことです。

ご本人はソファをベッド代わりにいつもそこで過ごしているのか、ほとんど裸の状態で横たわっています。周りをお孫さんが駆け回り、初めてやって来た薬剤師に興味津々のご様子。お嬢様は離れたダイニングからその光景を見ています。

内服剤や外用剤がリビングのテーブル上に散乱しており、灰皿には片付けられていないたばこの吸い殻もあります。今のところ、トイレは歩行器を使いながら自力で行かれています。かなり痩せていて、身長は175cmくらいですが、体重はおそらく40kg程度だと思われます。

薬剤師Aは薬局に戻って、同僚にUさんのことを話しました。

・・・

薬剤師A 「この患者さん、オピオイドも使用してないし、このままでいいのかしら?」

薬剤師B 「痛みは感じてないの?」

薬剤師A 「無口で、話しかけてもあまり答えてくれないの。お嬢様ともあまり口を利いていないみたい。ベッドで休んでいる様子もなくて、きっとソファであのまま眠っているんだと思う」

薬剤師B「今日はドンペリドン坐剤を持って行ったんでしょ。吐き気はあるの?」

薬剤師A「気持ち悪いですか?って聞いたら、『いつもだよ』と言われちゃった。ちょっと怖い感じの患者さんなの。でも、お家は赤い屋根の可愛らしい雰囲気で、入り口には大きなバイクが停めてあって、昔の趣味なのかもしれない」

薬剤師B「訪問看護師さんに連絡してみたら?協力して患者さんを支えられるといいわね」

次のページ:Uさんのデータを確認

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