目からウロコ? 抗がん薬が効かない理由
がんと血栓の深い関係
バイオダイナミックス研究所理事長/研究所長(熊本大学名誉教授、大阪大学招聘教授、東北大学特任教授) 前田浩
2019年08月05日 17:40
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血管作動薬は抗がん薬の薬効を増強する
抗がん薬の研究の歴史は約70年にもなるが、抗菌抗生物質のように有効率90%(+)というような著明な成果はなく、10~20%の有効性は良い方である。われわれは抗がん薬を高分子化することによって、腫瘍血管の透過性の特性〔構築の粗雑さと、血管の透過性亢進因子(ブラジキニン、一酸化窒素、プロスタグランジン、サイトカイン類)の多量産生〕を利用したがん化学療法の研究を行っている。その過程で、高分子型抗がん薬を静脈内投与すると通常の低分子薬剤に比べ10~50倍も腫瘍選択的に集積する現象「EPR効果(enhanced permeability and retention effect)」を発見した(図1)1),2)。
図1.在来型低分子抗がん薬(A)と高分子型抗がん薬(B)の静脈投与後の組織分布
(J Control Release 2014;174:81-87)
このEPR効果の研究から、降圧薬(血管拡張薬)や抗血栓作用のあるニトログリセリンなどを高分子型薬剤と同時に投与すると、がん局所へのデリバリーが2~3倍上昇し、また薬効も2~5倍高まることがわかった3),4)。これはまさに血管作動薬による抗がん薬の薬効増強である。この現象はわれわれの高分子型抗がん薬のみでなく、いわゆるドラックデリバリー(DDS)製剤、抗体医薬、さらには免疫細胞による治療にも応用可能な手技と考えている。
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