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ドクターズアイ 岩田健太郎(感染症) ドクターズアイ 岩田健太郎(感染症)

その肺炎、治療し過ぎにつき

神戸大学微生物感染症学講座感染治療学分野教授 岩田健太郎

 2019年09月02日 05:05
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イメージ画像 © Getty Images ※画像はイメージです

研究の背景:抗菌薬治療期間の短縮を妨げているのはCRPだ

 この連載でも何度か紹介しているが、かつては「ブラックボックス」、専門家の「言い値」だった抗菌薬治療期間について、近年、エビデンスが蓄積され始めている。ざっくりいうと、多くの感染症では従来いわれていたような長期の抗菌薬治療は必要なく、もっと短い治療期間でも大丈夫、という研究が多い。

 われわれも、菌血症を伴う急性胆管炎の治療期間を吟味した研究を行い、だいたい6日程度の抗菌薬治療でもアウトカムは長期治療と比べて遜色なかろう、という結果を報告した。これは本連載でも紹介している(関連記事「感染症の治療期間または業界の"常識"を疑え!」)。

 僕がみる限り、日本の診療現場で抗菌薬治療期間の短縮を妨げているのはC反応性蛋白(CRP)である。CRPが陰性化しない、という理由でダラッダラ抗菌薬を続けているケースのなんと多いことか。CRPなんてしょせん、肝臓がつくっている蛋白質にすぎないのであって、感染症の治癒や原因菌の排除の証明にもならなければ、マーカーにもならないのだ。

 もちろん、「増悪していくCRPを無視しろ」とか申し上げているのではなく、「CRPに意味なんてない」などと主張したいのでもない。CRPは役に立つ。ただし、多くの医者はその使い方を間違えている。少なくともCRPの陰性化を抗菌薬終了の基準にするのは、ほとんどの感染症においては、そしてほぼ全ての急性感染症においては間違っている。

 抗菌薬継続で主治医が安心する、といった「(主治医が飲む)ベンゾジアゼピン代わりの抗菌薬」という使い方も多い。なるほど、主治医は安心かもしれないが、困るのは患者である。

 抗菌薬使用継続で、患者の予後が良くなるとは限らない。むしろ逆のことが多い。主治医は間違った根拠で安心し、実は大事なものを失っていたりするのである。患部をほったらかして、強い痛み止めで安心するようなものだ。

 抗菌薬長期使用の弊害は、薬や入院費用といった医療コスト、入院期間の不要な延長、それに伴う他の患者の入院機会の損失、抗菌薬や(せん妄、カテーテル感染のような)入院そのものによる副作用、薬剤耐性化の助長など、たくさんある。そうそう、ついでに申し上げておくが、僕は日本独特の「ステロイドの投与量が大きいから退院できない」症候群には大反対である。なぜ、元気で歩いている患者を入院させたままにしておくのか。病院内の方が薬剤耐性菌が多く、感染リスクはずっと高いというのに。これも、患部に麻酔をかけて病気をほったらかしとく系の誤謬である。

 さらに、最近ではセファゾリンをはじめとする抗菌薬供給不足の問題がある。抗菌薬は、無尽蔵に提供できる魔法の泉を持つわけではない。なんらかの理由で供給が途絶えれば、抗菌薬は使用できなくなる。サプライチェーン上の問題を無視して抗菌薬を漫然と使うのは、補給問題を無視、看過して大敗したガダルカナルやインパール的な失敗だ。この問題については青木眞先生のコメントが参考になる(ログインが必要です。「セファゾリン供給不足に見る臨床現場の温度差」)。

 さて、今回のお題は市中肺炎だ。

 以前、市中肺炎の治療期間を吟味した論文を紹介した。市中肺炎の治療期間は最短5日間でよいだろう、という結論だった(関連記事「5日間の市中肺炎治療は妥当か」)。

 でも、実際にはエビデンス以上に抗菌薬を出している医療行為は多いように見える。で、問題は、その弊害が「どのくらい」普遍的で、患者に何をもたらしているかである。

 今回紹介するのは、そこを吟味した研究だ。

Vaughn VM, Flanders SA, Snyder A, Conlon A, Rogers MAM, Malani AN, et al. Excess Antibiotic Treatment Duration and Adverse Events in Patients Hospitalized With Pneumonia: A Multihospital Cohort Study. Ann Intern Med. 2019 Aug 6;1 71(3): 153-163.

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