「男性の肺高血圧症は予後不良」は本当か
2019年09月18日 05:05
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研究の背景:肺高血圧症は女性に多いが、「男性は予後不良」が半ば常識
日本では、特発性および遺伝性の肺高血圧症の患者数は20歳代から70歳代まで緩やかに増加し、男女比は1:2.17で女性の方が多いとされている(図1)。ただし、このデータは肺動脈性肺高血圧症(PAH)特定疾患申請書類を基に集計されたものであり、膠原病に対する特定疾患受給を受けている集団は含まれていない可能性もある。
図1. 特発性および遺伝性肺高血圧症の男女別・年齢層別患者数
(難治性呼吸器疾患・肺高血圧症に関する調査研究班2013)
遺伝性PAHでは、BMPR2、ALK1、Endoglin、SMAD9、CAV1、KCNK3などの遺伝子が疾患発症に関与していることは分かっているが、これら遺伝子異常が性差に与える影響は分かっていない。女性に多い理由として、女性ホルモン(Curr Vasc Pharmacol 2006;4:9-15)、自己免疫性あるいはX連鎖遺伝子座(Am Rev Respir Dis 1984;129:194-197)などの説が提唱されているが、因果関係は証明されていない。
PAHの世界では「男性は予後不良である」というのが半ば常識になっている。症例数はそこまで多くないものの、発見される男性例は確かに重症が多く、個人的にも予後不良であることを認識している。
その性差に関する通説に一石を投じた研究を紹介する(ERJ Open Res 2019年8月12日オンライン版)。スウェーデンにおける特発性肺動脈性肺高血圧症(IPAH)のコホートデータである。IPAHは、明確な原因が除外され、原因不明として残ったPAHの集団を指す。
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