長期にマリファナを吸うと肺はどうなる?
2019年10月15日 05:05
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研究の背景:マリファナの位置付けと医療大麻に関する私見
まず、マリファナの位置付けを今一度確認しておこう。マリファナとはいわゆる「大麻」であり、日本では大麻取締法により規制されている。米国では連邦法において違法とされているものの、複数の州で州法による医療大麻の使用が認められており、嗜好品としても合法化されつつある。
日本でマリファナを所持すると、5年以下の懲役である(大麻取締法24条の2第1項)。営利目的の場合は7年以下の懲役となる(同法24条の2第2項)。アイドルグループの元メンバーだった男性が大麻取締法違反で起訴されたことは、記憶に新しい。マリファナを吸い続けるとどうなるのかは日本では実現不可能な臨床試験であり、海外の文献を参考にするしかないのが現状である。
さて、医療大麻について容認すべきだという意見がある。元女優・元参議院議員候補の女性が医療大麻の解禁について大きく声を上げていたのを覚えているだろうか。医療大麻とは、大麻に含有されるテトラヒドロカンナビノール(THC)やその他のカンナビノイドを含む合成カンナビノイドを指す。米国では、医療大麻は腰痛や慢性疼痛に処方されている。また、THCの合成薬であるドロナビノールを含む製剤は、HIV患者の食欲不振や抗がん薬使用時の制吐剤として用いられている。THCを電子たばこに混ぜて吸う国もある。ただ米国では、電子たばことTHCを混ぜて吸うことで肺傷害が起こり、死亡例も出たとして問題になった(N Engl J Med 2019年9月6日オンライン版)。
日本のとある大学において、今後医療大麻の治験が行われる見通しで、将来的に日本にも医療大麻が入ってくる可能性はある。
論文を紹介する前に、個人的な見解を先に述べておきたい。私はあまり大麻の有効性についてエビデンスが多いとは思っていないし、現時点では容認できないと思っている。慢性疼痛に対してプラセボより良好な効果が示されているが(JAMA 2015;313:2456-2473)、やはり副作用が多い。また若年者に至っては、脳の発達を阻害する可能性もある(N Engl J Med 2014; 370:2219-2227)。故に、いまだ大麻は、嗜好品としての立ち位置の方が主であると思っている。実施されている臨床試験のエビデンスレベルも高いとは言えず、医学的利益と有害性のバランスが曖昧なので、じゃあ医療大麻を解禁にしましょうというには、ベースとなる根拠が乏しい。
というわけで、私は現時点では"医療大麻反対派"である。もちろん、臨床試験が蓄積されて、いつの間にか"賛成派"に変わることもあるかもしれない。
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