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膨張する国民医療費で何が無駄なのか

大腿骨頸部骨折手術の最新研究からの考察

東京脳神経センター 整形外科・脊椎外科部長 川口浩

 2019年12月17日 10:00
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研究の背景1:財務省が主張する無駄の正体は「本体」か「本体以外」か

 政府は来年度(2020年度)の診療報酬改定について、医師らの技術料や人件費にあたる「本体」を0.55%引き上げる方針を固めた。財務省は「本体」のマイナス改定を主張していたが、これに対して日本医師会と厚生労働省は、物価動向や一般社会の給与とのバランス、医師の働き方改革による人件費の増加を主張し、これが認められたこととなった。

 そもそも、日本の医師の給与は、医師が特殊技能者であること、労働時間の長さ、責任の重さ、それに伴うリスクを勘案すれば、ハナから欧米諸国に比べて安過ぎる。その上、医療経済は経済成長とは別次元で成り立っていることは、高度経済成長やバブル期のころも医師の給与は変わらなかったことからも明白である。

 一方、「本体以外」にあたる薬価部分はマイナス約1.5%となり、診療報酬全体の改定率はマイナス約1%になる。全体では過去2回マイナス改定が続いている。背景には、約43兆円にまで跳ね上がっている医療費による国民への負担がある。国家予算(101兆円)の半分に届こうかという勢いである。議員の集票のためにはアンタッチャブルとはいえ、国民皆保険を維持できているのが奇跡的である。

 財務省がマイナス改定を要求した根拠は、「過去10年間で国民医療費は平均2.4%/年で増加している。高齢化などの要因は平均1.1%/年として、残り1.3%は人口増減や高齢化とは関係のない要素。医療費の伸びは賃金・物価動向を上回る高い水準」である。「残り1.3%」の正体は「本体」なのか、「本体以外」なのか。国民医療費の無駄を論ずることは、われわれ自身の首を絞めることになるのか。

 小泉政権は自民党として初めて改革政党を名乗り、その新自由主義経済のスタンスを国民は支持した。ただ、医療改革では失敗をしている。その数値目標(年間5,000億円、4年で2兆円の削減)を達成できなかったことではなく、「医療費削減は、民営化、混合診療、ひいては国民皆保険、超高齢者医療、終末期医療など、非常にデリケートな問題にメスを入れなければ達成できない」、という大きな誤解を国民に与えてしまったからである。

 国民医療費がパンク寸前の状況で「費用効果」の概念が医療の世界に入ってくることは仕方がないと思うが、これはあくまで「効果がプラスである」という前提の下で初めて成り立つ議論である。医療費削減のためにまず着手すべきは、「効かない薬」「過剰な検査」そして「無駄な手術」であることは、マトモな医療従事者であれば誰でも気付いている。これによる削減可能額は「年間5,000億円」などというレベルではない。ある鎮痛薬は、その年間売り上げ1,000億円のほとんどが、効能が実証されていない疾病に処方され、このお金は海外流出している(関連記事「再び「神経障害性疼痛」を問う」)。論文にもなっていない稚拙な再生医療を早期承認して、1回1,500万円も患者と国民に払わせている(関連記事「Natureに対する厚労省の苦しすぎる反論」)。

 その背景には、最近、京都で「アーン」と言って某週刊誌を賑わせた、医療にド素人なのになぜか「内閣健康・医療戦略室長」として君臨している官邸補佐官による厚労省への圧力があったという噂がある(お時間があれば、Medical Tribuneの年末年始企画「2019年三大ニュース/2020年医学はこうなる」も読んでください)。

 また、最近の臨床統計学の進歩によって、整形外科だけでも多くの手術の有効性が否定されている(関連記事「否定される整形外科手術の有効性」)。

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