メニューを開く 検索を開く ログイン

ホーム »  連載・特集 »  2019年3大ニュース&2020年医学はこうなる »  【2020年医学はこうなる】田淵貴大

2019年3大ニュース&2020年医学はこうなる 2019年3大ニュース&2020年医学はこうなる

【2020年医学はこうなる】田淵貴大

大阪国際がんセンターがん対策センター疫学統計学部副部長

 2019年12月28日 05:00
プッシュ通知を受取る

4名の先生が役に立ったと考えています。

【私が選んだ医学2019年の3大ニュース】

1.EVALI

 2019年、米国において電子タバコ使用に関連した急性肺障害、e-cigarette, or vaping, product use associated lung injury (EVALI)の報告が相次いだ。2019年12月3日までに、米疾病対策センター(CDC)によりEVALIで入院を要した症例が2,291人、そしてEVALIによる死亡症例として48人(年齢中央値は24歳)が報告された(Morb Mortal Wkly Rep 2019; 68: 1142-1148)。入院症例の80%以上で、テトラヒドロカンナビノール(大麻の主要成分)入りの電子タバコが使用されていた。電子タバコリキッドに含まれるビタミンEアセテートが原因ではないかと指摘されているが、ブランド152種のさまざまな電子タバコ製品の使用が報告されており、単一の原因だとは言い難い。そのため、EVALIを防ぐには、電子タバコ全般の使用をやめるべきだとする意見も出ている。

 EVALIをめぐり、米国ではトランプ大統領がフレーバー添加の電子タバコを禁止する動きを見せたものの、撤回する意向が伝えられるなど混乱している様子がうかがえる。EVALIが突如現れた背景には従来のタバコ問題が関係しており、歪められた社会の力学が機能しているのである(関連記事:『新型タバコ問題から見える歪んだ社会の力学』)。

 日本では、電子タバコよりも有害だとされる加熱式タバコが流行している。日本でもどうも加熱式タバコ版EVALIが起きているようだ1, 2)(呼吸器科医とのパーソナルコミュニケーション:加熱式タバコ関連の急性肺障害があったが、報告していないとのこと)。どれぐらいの頻度で、どのような重症度の肺障害が発生しているかが重要なのだが、日本では米国のような系統的な情報収集が実施できておらず、実態は不明なままである。日本全国の呼吸器科医と連携して、実態把握を進めていきたいと考えている(実態把握のためのミニマム問診票案)。

2.改正健康増進法が順次施行される。

2019年7月1日から病院は屋内禁煙に!

 法律で、病院は屋内禁煙にすることと決められた。大半の医療機関は既に屋内禁煙になっており、ほとんどの人はそれが当たり前だと思っているかもしれない。屋内禁煙のルールにすることが、人を受動喫煙の害から守り、人を大切にするための"あるべき姿"だと分かっているのだから。しかし、世の中にはいろいろな場所がある。また"あるべき姿"を法律の後押しでもないと実現できないという場合もある。

 本稿では、できていない病院名を挙げるようなことはしないが、実はまだ屋内禁煙を実施できていない病院や医療機関があると聞いている。この法律を契機に、屋内禁煙や敷地内禁煙を推進し、われわれの社会を"在るべき姿"へと近づけていってほしい(関連記事:『法律・ガイドライン vs. 在るべき姿』)。

3.社会医学系専門医になりませんか?

 2019年9月、社会医学系専門医協会は総会において、47都道府県の全てで社会医学系専門医の研修が行える体制が整ったと報告した。社会医学系専門医を目指す専攻医の数は、2018年度は112人で、制度初年度の2017年度の109人と合わせると221人に上る。専門研修プログラムは全国で計73になったとのこと。日本全国で社会医学系専門医を目指すことができる。

 2019年には「公立病院再編の動き、厚労省が全国の病院リストを公表」というニュースもあった。こちらの話題の方が3大ニュースにふさわしいかもしれない。しかし、社会全体の医療需要と供給体制といった課題も、公衆衛生学や医療経済学、疫学・生物統計学などの社会医学が対象としている学問領域の一部である。人はみな社会で生きているのであり、医学は全て社会医学でもあると、私は考えている。臨床系専門医においても疫学・統計学の知識がなければ、最新の臨床研究論文を読み解くことはできず、公衆衛生学や医療経済学の知見によりエビデンスが社会実装され、現実の臨床へと応用されていくのである。社会医学の観点も持ち合わせた医師こそが真の専門医ではないかとも考えているのである。

 医療機関は、健康の社会的決定要因といった患者の病態の根本原因に対処する方法をあまり持っていない。教育、住宅、雇用などの重要かつ健康に深く関連する社会的問題は、各医療者がカバーできる臨床的範疇を超えて発生する。社会医学や公衆衛生学がその取り組みに貢献できる部分もあると信じており、各臨床系学会と公衆衛生学会のコラボレーション・プロジェクトを企画・推進したいと考えている()。

図. 各臨床系学会と公衆衛生学会のコラボシンポジウム企画趣意書

24701_fig1_small.jpg

24701_fig2_small.jpg

日本公衆衛生学会『コラボ・シンポジウム企画趣意書』

【2020年医学はこうなる】

受動喫煙について「激論」を

 2020年4月1日には、改正健康増進法が全面施行され、レストランやホテル、事務所などの第二種施設が屋内禁煙となる。受動喫煙防止対策が進めば、肺がんなど多くの疾患の発症が予防でき、症状が改善できるものと期待している。

 法律で屋内禁煙と決まれば、これまで受動喫煙防止対策が全く実施されていなかった事業所も屋内禁煙となり、受動喫煙の被害およびそれに伴う健康格差も縮小させることができる。法律で決められたからといってすぐに屋内禁煙に置き換わることはないので、引き続き周知徹底していくことが大切である。そうして、日本社会をまた一歩、「タバコのない社会」へと近づけていきたい。

 法律が施行されることは大きな前進だが、まだまだ"在るべき姿"には遠い。例えば、レストランは原則屋内禁煙だが、既存の客席面積100m2以下の店舗は経過措置として掲示により喫煙可能とできるルールとなった(ただし、20歳未満は立ち入り禁止)。要するに、受動喫煙の被害が大きいと考えられる比較的狭いレストランでは、受動喫煙の害から守られないという不条理な、ある意味大きな健康格差が生まれかねないルールである。これについては、このような不平等ともいえるルールでよいのか、と指摘して議論を交わし、全ての屋内空間を禁煙にするという"在るべき姿"を目指していかなければならない(関連記事:『法律・ガイドライン vs. 在るべき姿』)。日本ではタバコ問題に関する議論はまだまだ十分とはいえない。2020年は受動喫煙問題について激論を交わすべき年だと考える。

1) Respir Med Case Rep 2018; 26: 87-90.

2) Respirol Case Rep 2016; 4: e00190.

コメント機能は会員限定サービスです。

医療関係者の皆さまへ

新型コロナ感染症が蔓延するなか、メディカルトリビューンは医療現場で奮闘する関係者に敬意と感謝を表します。この感染症が一日も早く終息し、新しい医療が構築されるよう、メディカルトリビューンは最新の情報を発信していきます。

 

ワンクリックアンケート

インフルエンザ予防接種は受ける?

当日人気記事TOP10(医師)

ホーム »  連載・特集 »  2019年3大ニュース&2020年医学はこうなる »  【2020年医学はこうなる】田淵貴大

error in template: found but mtif was expected