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ゲノム研究で感染症対策を

痛風・尿酸財団理事長 鎌谷直之

 2020年03月05日 05:10
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著しい多様性を持つHLA遺伝子

 これまで理化学研究所は東京大学と共同し、多くの人々のゲノム解析を進めてきた。また、海外のゲノム研究者との共同研究も行ってきた。その最も大きな成果は、約30億個のゲノム配列が個人により、また集団により著しく異なるという事実を発見したことである。そして、その違いにより個々の疾患へのかかりやすさも異なる。

 ゲノム配列において、個人間および集団間で最も異なるのはHLA(human leukocyte antigen:ヒト白血球抗原)をコードする遺伝子が存在する部分である(6番染色体短腕)。一例を挙げると、強直性脊椎炎を生じやすいHLA-B27は中国人、韓国人、欧米人に多く、日本人には極めて少ない。カルバマゼピンやアロプリノールによりスティーブンス-ジョンソン症候群を起こしやすいHLA-B*1502、HLA-B*5801は中国人、韓国人に多く、日本人と欧米人には極めて少ない。これは人種の遺伝的な近縁性とは異なるデータである。このような著しい多様性は、例えば中立説のように自然に起きる遺伝的現象によっては生じえない。

HLA遺伝子はなぜ多様化したのか

 もし、特定の遺伝子が有利であれば、その遺伝子は増え、他の遺伝子は減少するはずである。そして、集団におけるHLA遺伝子の多様性はむしろ減少するはずである。しかしHLA遺伝子は逆に、集団としての多様性を促進する方向に進化しているとしか考えられない。

 この現象を生じさせる進化的要因としては、①ヘテロ優位性②頻度依存性選択-がある。特定の遺伝的座(例えばHLA-A座)に2つの異なる蛋白質をコードするアレルを保有している個体(ヘテロ接合体)が、1つしか保有しない個体(ホモ接合体)より生存に有利であれば(前記の①の場合)、ヘテロ優位性が生じる。

 また、頻度の低いアレルほど生存に有利であれば(前記の②の場合)、頻度依存性選択が働く。前者は、多くのHLA蛋白質を持つ個体ほど感染症(寄生虫も含め)などで有利であろうという推測から妥当な仮説である。後者も同様に、頻度の高いHLAを持つ個体は同じHLAを持つ個体からウイルスや細菌の感染が生じやすいという仮説で説明できる。また、異なる感染症で死亡率がHLAにより異なれば、多様性は説明できるであろう。

隔離すべき集団、治療すべき集団が判別できる

 ヒトの進化の過程でHLAの多様性に影響した感染症が具体的になんであったかは分からないが、新型コロナウイルスのようなウイルス感染症はその候補であると考えられる。これから新たに患者のDNA採取を行うより、既存の膨大なゲノムデータを利用し、ゲノム倫理をクリアした上で前述の仮説を検証する研究を行うべきだと思う。

 それにより、パンデミックやそれに近い状態が起きそうな場合、どの集団、どの個人を選択的に隔離すべきか、治療すべきかが判別でき、感染拡大を抑え、全体の死亡率を下げることが可能になると考える。

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