エアロゾルという魔コトバ
2020年07月01日 05:10
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© Getty Images ※画像はイメージです
研究の背景:COVID-19の主要経路は空気感染!というちゃぶ台返し
研修医たちとジャーナルクラブをやるとき、よくデザインされた堅牢な、トップジャーナルに載るランダム化比較試験だけを選択する必要はない、と申し上げている。むしろデータや理路などに瑕疵がある論文の方が、よりクリティークの勉強になったりするものだ。要するに「ツッコミどころの多い論文」である。
本日は非常に注目を集め、そして大いに物議を醸した(醸している)論文の登場だ。
米国科学アカデミー紀要(PNAS)に掲載されたこの論文は、武漢、イタリア、ニューヨーク市(NYC)における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染のトレンドを分析することで、「空気感染(airborne transmission)が非常に毒性の強いもの(highly virulent)で、主たる疾患伝播の経路である(dominant route to spread the disease)ことを示す」と高らかに抄録で宣言し、読者の度肝を抜く。識者の間では、COVID-19の主要感染経路は飛沫感染(droplet infection)であり、次いで飛び散った飛沫を手で触れての接触感染(contact infection)である。空気感染などは起きないし、一過性の飛沫核が生じる、いわゆる「エアロゾル(aerosol)」も感染経路としてはほとんどないか、あってもまれな事象(基本的に医療現場での問題)と考えられているからだ。
では、ちゃぶ台をひっくり返し、既存の「常識」を根底から覆す本論文は、どのような根拠によるものなのか。
Zhang R, Li Y, Zhang AL, Wang Y, Molina MJ. Identifying airborne transmission as the dominant route for the spread of COVID-19. PNAS [Internet]. 2020 Jun 11 [cited 2020 Jun 27]; Available from: https://www.pnas.org/content/early/2020/06/10/2009637117
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