「動物性脂肪=悪」は常識でも誤謬かも
PURE studyの新研究から
2020年07月03日 18:04
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研究の背景:動物性脂肪(飽和脂肪酸)摂取は控えるべきとされがち
私が子供のころ、小学校の給食のパンに塗るものといえばバターではなく、マーガリンであった。Seven Countries Study(J Mt Sinai Hosp NY 1953;20:118-139)以来、脂質(特に動物性脂肪とされる飽和脂肪酸)摂取が心血管疾患につながるとの仮説が支配的だったからである。現在では、マーガリンなどのように化学的に手を加えた油脂はトランス脂肪酸を含むので、バターの方がましとの考え方はあるものの、それでも動物性脂肪(飽和脂肪酸)を控えるべきであるとの仮説は根強く残っている。
実際、昨年(2019年)の米国心臓協会(AHA)などのガイドラインにおいても飽和脂肪酸を不飽和脂肪酸に置換することが推奨されている(Circulation 2019;140:e596-e646)。ただし、そのエビデンスレベルはB-NRにすぎない。Aが最善で、Bは次善であるが、B-NRはB-R〔中等度の質のランダム化比較試験(RCT)〕より低く、RCTでない比較試験もしくは観察研究に支持されている状況を意味する。
『日本人の食事摂取基準(2020年版)』にも「飽和脂肪酸摂取量と総死亡率、循環器疾患死亡率、冠動脈疾患死亡率、冠動脈疾患発症率、脳梗塞発症率、2型糖尿病発症率との関連をコホート研究で検討した結果を統合したメタ・アナリシスでは、いずれも有意な関連は認められなかったと報告されている」との記載があり(p133)、さらには、「メタ・アナリシスによると、日本人は(中略)飽和脂肪酸の摂取量と脳出血及び脳梗塞の発症(又は死亡)率との間には負の関連が観察されている」とまで記載されている(p133)。
よって、少なくとも日本人では、飽和脂肪酸の摂取を制限することになんの根拠もなく、飽和脂肪酸摂取によってこそ脳血管疾患のリスク低減につながるかもしれないという状況である。
このたび、世界五大陸21カ国の共同コホート研究PURE studyにおいて、乳製品摂取がメタボリックシンドロームの有病率および糖尿病・高血圧症の発症率と負に相関し、その関係性は全脂肪乳やバターで認められたものの、低脂肪乳では認め難かったとの報告がBMJの姉妹誌に報告された(BMJ Open Diab Res Care 2020;8:e000826)。飽和脂肪酸摂取の在り方や食事療法勧告の在り方を考える上で重要な報告であると考え、ご紹介したい。
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