アトピー治療はリウマチ治療並みに激変!!
西伊豆健育会病院病院長 仲田 和正
2020年09月25日 05:00
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Lancet(2020; 396: 345-360)にアトピー性皮膚炎の総説がありました。著者は英国、アイルランド、ドイツの皮膚科、アレルギー科の医師たちです。トップジャーナル総説でアトピー性皮膚炎が扱われたのは2005年以来です(N Engl J Med 2005; 353: 1069-1070)。今回15年ぶりのアトピー性皮膚炎総説を読んでその激変ぶりに仰天しました。
15年前の総説では牧歌的に、皮膚軟化剤(emollient:ワセリン、ヒルドイド、ケラチナミンなど)とステロイド塗布薬、プロトピック(タクロリムス)軟膏の使い分けなどに終始していました。
しかし翌2006年に「アトピー性皮膚炎の最大の遺伝子リスクは皮膚防御蛋白filaggrinを暗号化(encode)するFLG遺伝子変異である」ことがNature Geneticsで発表され、病態生理が解明、これがブレイクスルー(breakthrough)となり突如、すさまじい治療革命が始まりました。
Lancetセミナー「アトピー性皮膚炎」最重要点は下記15です。
- アトピー性皮膚炎の最大リスクは皮膚防御蛋白filaggrin暗号化のFLG遺伝子変異!
- アトピー性皮膚炎の7割で黄ブ菌定着、皮膚バリア破壊、引っかきで悪化(itch-scratch cycle)
- アトピー性皮膚炎の最大の危険因子はアトピー性皮膚炎の家族歴
- Atopic march:アトピー性皮膚炎→喘息、花粉症などへの進展。真菌、ウイルス疾患合併もあり
- 軽症アトピーは当初3~7日は局所ステロイドでコントロール、以後皮膚軟化剤(ワセリンなど)で維持
- プロトピック軟膏は初期数日痒み、灼熱感あるがステロイドのように皮膚萎縮起こさぬ
- 新塗布薬:PDE4阻害薬(crisaborole)、JAK1/2阻害薬(ジャカビ)、PanJAK阻害薬(コレクチム)
- 痒みは抗IL-4Rα(デュピクセント)、抗IL-31Rα(nemolizumab)、抗JAKで軽快
- 全身治療にシクロスポリン、MTX、アザチオプリン、ミコフェノール酸、IL-4Rα抗体、JAK阻害薬
- 局所塗布で改善しない場合、紫外線療法も考慮
- 悪化因子:毛織物、アルカリ洗剤、天候、感染、精神ストレス、食物、吸入粒子など
- 診断は痒み、典型的分布、慢性皮膚炎、アトピー歴・家族歴のうち3つ必須
- 目の下のしわ、黒い眼周囲、手掌・足底のしわ、円錐角膜、眉毛外側薄い、白内障も
- 幼児は顔面、体幹の発疹、2歳以上から関節屈側へ
- 妊娠中の局所塗布薬はOK、全身治療は要注意!
今回、Lancetを読んでアトピー性皮膚炎治療がまるで関節リウマチ並みの治療体系に変貌しているのを目の当たりにし、すっかり浦島太郎の気分でした。 誠に医学は日進月歩です。吉田松陰が掲げた「飛耳長目:アンテナを高くして情報を集めよ。そこから自分のすべきことが見えてくる」を日々心がけないと医師は、あっという間に時代に取り残されるのだなあと、つくづく思いました。
以下は特攻機桜花搭乗員だった患者さんの御遺族に頂いた遺品「搭乗員の栞」の一節です。
「技量の練磨:航空機の戦闘力発揮は一に懸かって人にあるは言を俟たず。如何に優秀なる性能を有する航空機と雖もその搭乗員にして技量拙劣ならんか、其の能力発揮は望み得べからず。是に反して技量優れたるものは性能劣れる航空機を持ってするも能く戦闘の目的を達成し得たるものなり。 故に搭乗員たるものは自己の技量の錬磨を一日も疎かにすべからず。」
医師も全く同じだよなあと思います。 「自己の技量の練磨を一日も疎かにすべからず」なのです
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