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臨床研究の推進―日本臨床内科医会がサポート

速やかな審査にこだわり、実地医家に呼びかけた共同研究も可能

 2020年10月19日 05:10
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 現在わが国で、企業が研究費を拠出して実施する介入研究や適応外の医薬品などを用いた臨床研究を行う者は、2018年に施行された臨床研究法に基づいて臨床研究の実施プランを策定し、厚生労働省の認定を受けた認定臨床研究審査委員会(CRB)から科学的・倫理的観点の審査を受ける必要がある。日本臨床内科医会は日本の臨床研究の活性化に貢献すべく、学会・医会として初めてCRBを組織。今年(2020年)から臨床研究の審査依頼を広く受け付けている。同医会CRB委員長の宇都宮保典氏は、速やかな審査にこだわっていることを強調。同医会の実地医家会員1万4,000人に呼びかけて、共同研究を行うことも可能だとしている。

不正事案の続発で法規制の範囲が拡大

 2013年から2015年にかけて、承認済みの降圧薬や白血病治療薬の臨床研究をめぐって不正事案が続発し、社会問題化した。いわゆるディオバン事案などである。問題となったのはデータの不正操作、誇大広告、研究者の利益相反行為で、当該の製薬企業は刑事告発を受けたり、国から業務改善命令を下されたりした。

 国民の信頼を大きく損ねる事態となっただけに、国レベルで実態解明と再発防止に向けた議論が重ねられた。その中で浮上してきた問題は、同じ臨床研究でも、法律の規制下で行われるものと、法律に基づかない医学系倫理指針に従って実施されるものが存在することだ。新薬の製造販売承認を取得するための治験や再生医療に関する臨床研究は前者だが、それ以外の臨床研究は後者で、不正事案となった臨床研究はいずれも法律の規制を受けていなかった。

 宇都宮氏は「臨床研究の質を担保して信頼を回復するためには、倫理指針の遵守だけでは不十分と考えられるようになった。法規制による研究の萎縮という懸念はあるものの、ある程度は臨床研究に対する法規制の範囲を広げるべきだという結論になったのだと思う」と説明する。

法規制の有無で臨床研究を分類すると...

 このような背景の下で、臨床研究法が2017年に公布され、2018年から施行された。法規制の有無で臨床研究を分類すると、のようになる。

表. 臨床研究の種類と法規制の範囲

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(厚生労働省公式サイトを基に編集部作成)

 臨床研究法においては①未承認の医薬品等の有効性・安全性を検証する臨床研究②承認された医薬品等の適応外の疾患などで有効性や安全性を検証する臨床研究③製薬企業などから資金提供を受けた医薬品等の臨床研究―は「特定臨床研究」と定義され、同法の遵守義務が課せられる。国が認定したCRBの倫理審査を受けることもその1つだ。「医薬品等」には医薬品、医療機器、再生医療等製品の他、特定の疾患に対する効能・効果を検証する場合は食品やサプリメントも含まれる。

 上記①~③に該当しない医薬品等の臨床研究(承認された適応の範囲で有効性や安全性を検証するような研究)は「非特定臨床研究」と定義され、臨床研究法の遵守は努力義務となる。すなわち、臨床研究法を遵守してもよいし、医学系倫理指針を遵守してもよい。審査はCRBでも、国の認定のない各施設の倫理審査委員会(IRB)でも受けることができる。

 宇都宮氏は「特定臨床研究か非特定臨床研究かは判断に迷うケースもあるだろう。当医会に相談してもらえれば、アドバイスすることもできる」と述べている(同医会はIRBも併設している)。

 一方、新薬などの治験は従来通り、医薬品医療機器等法による規制下に置かれ、「医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令」(GCP省令)の遵守が義務付けられる。倫理審査は国に届けられた治験審査委員会が行う。

 医薬品等以外の臨床研究、具体的には手術・手技をテーマとする臨床研究、実臨床に関する観察研究などは法対象外研究と位置付けられ、各施設のIRBが審査し、医学系倫理指針に基づいて実施される。

CRBは審査の質を担保し、効率化を実現

 臨床研究を法規制することに対し、研究の停滞につながると負の側面に目を向ける意見もある。しかし、宇都宮氏は「臨床研究法は臨床研究を制限するものではなく、ルールを明確にし、研究の質の向上を目指すものだ。むしろ、実臨床における研究を活性化させる好機と捉えたい」と訴える。

 臨床研究法施行以前は、多施設共同研究を行うには参加施設ごとにIRBに審査申請を行っていた。そのため、事務手続きに膨大な時間を要し、臨床研究の開始が遅れる傾向にあった。臨床研究法の下ではCRBが一元審査をするため、多くの実務を集約でき、手続きに要する時間を短縮できる場合もある。また、プロトコルや報告書も統一されるので、研究者は管理がしやすくなった。自施設のIRBとは異なり、「CRBはいわば"シングルIRB"であり、審査の質を担保し効率化する利点がある」と同氏は指摘する。

 そもそも実臨床で研究を行う意味は何か。いうまでもなく、治験で有効性・安全性が証明された薬剤でも、実臨床であらためて検証することが必要だ。専門医の下で選択された患者を対象として行われる治験とは、全く異なる状況で使用されるからだ。多くの実地医家が処方することで、治験では見いだされなかった有害事象が発生することもあるし、予期しなかった有効性を発見する可能性もある。そのために、CRBの下で質の高い臨床研究を進めることの意義は大きいと同氏は強調している。

日本臨床内科医会のCRB―臨床研究の実績を生かす

 臨床研究法の施行後、全国に約100のCRBが組織されたが、設立主体はほとんどが大学病院や国立病院で、学会・医会としては日本臨床内科医会が初めてとなる。今年3月から審査の受け付けを行っている。

 同医会がCRBの運営に乗り出した理由として、宇都宮氏は「実地医療における質の高い臨床研究を推進し、今後の日本の医療に貢献するため」と説明する。同医会では、実地医家の会員約1万4,000人を擁する強みを生かし、これまで独自の大規模臨床研究を行ってきた。特にインフルエンザ研究は海外からも高く評価されており、インパクトファクターが高いジャーナルにも論文が掲載されている(Vaccine 2003;21:4507-4513Clin Infect Dis 2005;40:1309-1316Clin Infect Dis 2006;43:439-444Clin Infect Dis 2009;48:996-997Clin Infect Dis 2009;49:1828-1835など)。

 最近では同医会の会員も参加して行われた、インフルエンザの家庭内感染予防にバロキサビルが有効とのランダム化比較試験の結果がN Engl J Med(2020 ;383:309-320)に掲載された(関連記事「バロキサビル、インフル"予防"にも有効」「バロキサビル、将来的には予防投与も」)。こうした臨床研究における会員の実績は、CRBを運営し、新たな臨床研究を進める上で大きなよりどころとなる。

速やかな審査+具体的な改善アドバイスが特徴

 日本臨床内科医会のCRBは医師、臨床心理士、弁護士、一般の立場の人で構成される。内科以外の臨床研究の審査申請があった場合は、その領域の専門家に参加してもらうよう関連医会との連携体制を取っており、どのような領域の研究でも対応可能だという。

 審査の大まかな流れは、①申請者が申請書類をメールか郵送で提出②事務局で不備がないかをチェック③当該研究領域の専門家である技術専門員が評価書を作成④評価書を基に、審査委員会で審査⑤申請者に審査結果通知書を発行―となる()。

図. 日本臨床医会CRBにおける研究審査の流れ(新規申請時、特定臨床研究の場合)

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(日本臨床内科医会公式サイトから引用)

 同医会CRBの特徴として、宇都宮氏はまず審査の迅速性を挙げる。事務局の段階で書類のチェックを徹底的に行い、その後の過程が円滑に進むようにする。また、事務局や審査委員会の段階で改善すべき点を発見した場合、なるべく具体的にアドバイスを行い、申請者がどう対処してよいか迷うことがないようにする方針だという。「審査期間をなるべく短縮し、研究者が早く研究を開始できるようにしたい」と同氏はその意図を説明する。

 なお、審査期間のめどとして、同氏は「2カ月以内を目指す」としている。根拠は審査委員会の開催が月1回のペースだからだ。1回目の審査委員会で問題点が認められても、2回目では改善されているようにしたいという。

多くの臨床研究の発信を

 宇都宮氏は「会員・非会員を問わず、当医会のCRBを使って、ぜひ多くの臨床研究を発信していただきたい」と呼びかけている。特定臨床研究だけでなく、非特定臨床研究にも対応できるし、研究領域も内科に限らない。医薬品、医療機器、食品・サプリメントなど幅広い領域の研究の審査を受け付けている。

 さらには「研究の実施で困っている場合も相談してほしい」と述べる。同医会の会員に呼びかけて、実臨床における共同研究を行うことも検討したいとしている。

■日本臨床内科医会CRBに関する詳細は下記サイトを参照
https://shinsa.japha.jp/crb/

平田直樹

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