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withコロナ時代の不妊治療

 2020年10月26日 08:00
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 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の蔓延により、不妊治療の現場は揺れ動いている。流行の第一波下においては、専門学会により不妊治療の延期が推奨されるなど緊縮ムードが高まったものの、現在は新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染予防と不妊治療の両立が各々の臨床現場で模索されている。桜十字渋谷バースクリニック(東京都)院長の井上治氏は、不確かなことが多い中で不妊治療を行う難しさを感じつつも、「患者の年齢や不妊治療に対する意向を十分に勘案しながら、治療を進めている」と語る。

緊急事態宣言下でも年齢によっては不妊治療を継続

 日本生殖医学会は、緊急事態宣言が発令される以前の4月1日付で不妊治療の延期を推奨する声明を発出した。その後、SARS-CoV-2の新規感染者数が減少する中、5月18日付で感染予防対策を徹底した上で不妊治療の再開を考慮する声明を発出し、現在に至っている()。

「最初の声明を受け、当院の患者数は6割くらいにまで落ち込んだ」と、井上氏は当時の状況を振り返った。比較的若い患者では、胚移植を延期したり、採卵だけを実施したりしたケースもあったという。その一方で、年齢が40歳を超え妊娠率が低下しているとされるような患者では、本人の希望を尊重し不妊治療を継続したケースが少なくなかったと話す。

図. COVID-19第1波下でのPCR陽性者数と不妊治療を取り巻く環境の推移

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(厚生労働省のデータを基に編集部作成)

「例えば、20歳代の患者が不妊治療を1年延期したとしても妊娠率にはそれほど大きな影響を及ぼさないが、40歳を超えている患者が1年延期した場合、妊娠率は大きく低下してしまう。COVID-19の影響がいつまで続くか見通しがつかない状況下で、漠然と治療を延期することへの不安の方が強い患者も少なくなかった」と同氏。時間に猶予のない患者については、不妊治療への意向をよく聞き、相談しながら治療を選択していったという。

 不妊治療の再開を促す声明が発出されてからは、治療を中断していた患者も来院するようになり、6月になると9~10割程度に患者数は回復。同院では6月の採卵件数が過去最高を記録し、8月には月間の延べ患者数が最多を更新するなど、不妊治療を延期していた反動による影響が見て取れたという。

妊産婦の感染率は高くない? 予防対策の徹底が重要

 COVID-19による妊娠への影響に関しては国内外を含めてさまざまな研究報告がなされている。日本産婦人科医会が分娩を取り扱う全国の医療機関2,185施設を対象に行ったアンケート(回収率65%、2020年6月末時点)では、SARS-CoV-2に感染した妊産婦は72例で、有病率は0.02%と非妊産婦に比べて決して高くないことが報告されている。

 また、酸素投与を要した有症状妊産婦の割合は妊娠初期・中期で8%(39例中3例)だったのに対し、妊娠後期・産褥期では37%(19例中7例)と妊娠後期に重症化する患者が多い傾向が確認され、出生児への垂直感染の報告はなかったという(関連記事「コロナに感染した妊婦、後期に重症化の傾向」)。

 一方で、井上氏は妊婦がSARS-CoV-2に感染した場合、早産になる可能性が高くなるという研究報告(Eur J Obstet Gynecol Reprod Biol 2020; 252:490-501)にも言及。また、妊娠初期に感染した場合の出生児への影響はまだ明らかでないとも指摘する。妊娠に対するCOVID-19の影響について確定的なことが言えない現段階においては、「医療施設と患者双方が感染予防対策を徹底しながら、不妊治療を進めていくことが現実的ではないか」との見解を示している。

 なお同院では、患者に来院時の検温やマスクの着用を徹底してもらい、待合室ではソーシャルディスタンスを取れるよう座席の間隔を空け、診察室には飛沫を遮断するためのパネルを設置。常に院内の換気を行い、消毒も頻回に行っているという。また、来院時のパートナーの付き添いは原則禁止し、院内での採精も控えてもらうなど、高いレベルでの感染予防対策を徹底しているという。

不妊治療の保険適用には期待とともに懸念も

 菅義偉新首相の下、不妊治療に対する保険適用についての議論も活発化している。

 不妊治療の中心となる体外受精では、妊娠しやすくするための排卵誘発剤による卵巣刺激、培養液や胚移植におけるさまざまな手法を各医療施設で採用し、患者ごとにオーダーメイドで実施しているのが現状である。

 それら全てを保険適用とするのは難しいため、「標準的な治療については保険適用とし、その他のオプションについては保険外併用療養費として認めるなどの制度変更を行い、一部を自費で受けるようにするのが妥当ではないか」と井上氏。そうでなければ治療の選択肢が狭まり、妊娠率の低下につながりかねないという。「例えば、タイムラプス培養器の使用やアシストハッチングなどエビデンスが確立されていないものが保険適用外となり使用できなくなれば、妊娠率に影響を及ぼすかもしれない」と懸念を示す。

 また、保険適用の年齢をどのように設定するかにも課題が残る。現在の不妊治療に対する助成制度では、治療期間の初日における妻の年齢が43歳未満である夫婦を対象としているが、30歳代後半以降になると加齢とともに妊娠率が大きく低下し、流産のリスクは増加する。45歳以降で妊娠し出産に至るケースは極めて少なく、「年齢制限の線引きは判断の難しいところ」と同氏は指摘する。医療費の増大も含めて懸案事項が多く、今後の情勢が気になるところである。

子を持つ機会を手放す必要はない

「COVID-19の第一波を経て、比較的早い段階で患者が戻ってきた背景を考えると、子を望む患者の切実な想いの表れなのではないか」と井上氏は言う。COVID-19の影響については不確かなことが多い中、妊娠しやすい時期を逃してしまうと思う患者は腹を決めて治療に臨んでいる。withコロナへのシフトは、医療施設だけでなく、患者側でも進んでいるといえる。

 コロナ禍にあって不妊治療に踏み出すべきかどうか悩んでいるカップルに対しては、「現在、当院の患者はコロナ禍以前と同様に不妊治療を進めている。SARS-CoV-2への感染予防対策を徹底する必要はあり、医学的に未解明な問題点も多いが、子を持つ機会を手放す必要はない」と、同氏は子を望む患者の背中を押す。「年齢と今後のライフプランとを十分に勘案しながら、前向きな気持ちで不妊治療に取り組んでみてほしい」と呼びかけている。

(渕本 稔)

■桜十字渋谷バースクリニック

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