メニューを開く 検索を開く ログイン

ホーム »  連載・特集 »  ドクターズアイ 川口浩(整形外科) »  「アビガン承認見送り」の茶番

ドクターズアイ 川口浩(整形外科) ドクターズアイ 川口浩(整形外科)

「アビガン承認見送り」の茶番

「医療のアマチュア」と「無責任な為政者」がもたらす悲劇

 2020年12月22日 15:23
プッシュ通知を受取る

211名の先生が役に立ったと考えています。

〔編集部から〕Doctor's Eyeにおける川口浩氏の本来の担当は整形外科領域ですが、同氏が読者にいま最も訴えたい新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の話題を取り上げています。

研究の背景:国民の健康を無視したルール違反

 厚生労働省は昨日(12月21日)、ファビピラビル(商品名アビガン)の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬としての薬事承認を見送った。安倍晋三前首相が在任中の記者会見で「5月中に承認」と国民に約束してから約7カ月もたっての「手のひら返し」である。この「ファビピラビルの承認見送り」の学術的根拠はあまりに希薄であり、サイエンスの公正性、国民の健康を無視した、ルール違反に基づいている。ここまで来ると、混乱、迷走を通り越して、茶番劇である。

 私は4月から、厚労省・医薬品医療機器総合機構(PMDA)の「早期承認制度」を用いて、ファビピラビルを早急に承認すべきだと主張してきた(関連記事「アビガンを連休明けに使用できる!」)。

「早期承認制度」とは、最終の大規模臨床試験はなしにいったん承認して、市販後調査によって承認内容を確認するという点で、米食品医薬品局(FDA)が治療薬やワクチンの承認に適用した「緊急使用許可制度(EUA)」と同じである。しかしながら、その動機には雲泥の差がある。PMDAの「早期承認制度」は、コロナ禍以前の2017年の「平時」に、再生医療を経済成長の原動力にしようという国家戦略のためにつくられた制度である。この制度を用いてPMDAは再生医療等製品(ハートシートやステミラック)を医学的根拠が不十分のままに乱発し、国内のみならず国際的に大バッシングを浴びた(関連記事「予見された日本の再生医療の"最悪の事態"」「Natureに対する厚労省の苦しすぎる反論」)。

 コロナ禍の緊急時にファビピラビルに「早期承認制度」を適用することは、平時における再生医療等製品に対する乱発承認とは明らかに異なる。しかしながら、平時に再生医療等製品は「早期承認」されたが、緊急時にファビピラビルは「早期承認」されず、かつ7カ月も経過してから厚労省が出した判定が「承認見送り」である。ここから見える日本の医療行政の問題点について論考したい。

 ファビピラビルでは下記の3つ臨床試験が行われている。

①藤田医科大学を代表とする日本医療研究開発機構(AMED)特定臨床研究

②全国多施設への人道的供給による観察試験

③第Ⅲ相プラセボ対照ランダム化比較試験

 である。

 今回の「承認見送り」は、③に基づいたものである。この試験結果は製造元である富士フィルム富山化学から9月23日に公表され、企画段階からデータ分析に至るまで厚労省の指導の下に、ファビピラビルの有効性、安全性が公正かつ厳密に証明された(関連記事「アビガン、国内Ⅲ相試験で有意差示す」)。

 しかしながら、臨床研究の素養を積んでいる医師、臨床論文の査読に多く携わっている医師、臨床経験が豊富な医師であれば、①および②の結果から、ファビピラビルの有効性、安全性は確信できるはずである。すなわち、科学的センス、臨床現場センスを持った「医療のプロフェッショナル、目利き」から見れば、ファビピラビルは「早期承認」に十分に値することは、③の結果を待つまでもなく明白であった。この間に行われた医学のルールを無視した国民へのネガティブキャンペーンについては、以前に寄稿したのでご一読いただきたい(関連記事「アビガンの上市を遅らせたのは誰だ」)。

 今回紹介するのは、藤田医科大学からの①の結果を報告した論文(Antimicrob Agents Chemother2020; 64: e01897-20である(②と③はまだ論文化されていない)。

…この続きを読むには、ログインまたは会員登録をしてください

コメント機能は会員限定サービスです。

ワンクリックアンケート

感染対策にも有効? キャッシュレス決済は何を使ってる?

当日人気記事TOP10(医師)

医療関係者の皆さまへ

新型コロナ感染症が蔓延するなか、メディカルトリビューンは医療現場で奮闘する関係者に敬意と感謝を表します。この感染症が一日も早く終息し、新しい医療が構築されるよう、メディカルトリビューンは最新の情報を発信していきます。

 

ホーム »  連載・特集 »  ドクターズアイ 川口浩(整形外科) »  「アビガン承認見送り」の茶番