COVID-19規制から緩和へ、各国医療政策の教訓
西伊豆健育会病院病院長 仲田 和正
2020年12月23日 05:10
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Lancet(2020; 396: 1525-1534)に「新型コロナウイルス(COVID-19) 規制から緩和へ、世界の医療政策の教訓」と題した総説がありました。各国の公衆衛生担当者が合同で書いています。
小生、この総説でやっと今回のパンデミックの全貌が理解できたように思います。日本の立ち位置もよく分かりました。欧州よりはるかにうまく感染コントロールができたけど、重症急性呼吸器症候群(SARS)、中東呼吸器(MERS)を経験したアジア諸国には劣ります。世界各国、いまだにパンデミックは終息しそうにありません。この1年、世界はどのように対応してきたのか比較検討され非常に興味深く読みましたので共有いたします。
Lancet「COVID-19制限から緩和へ、世界の医療政策の教訓」要点13。
- SARS、MERSを経験したアジア諸国には既に堅牢なヘルスケアシステムが構築されていた
- アジアではマスク着用文化があった。マスクでCOVID-19増加は40~60%減る
- 出口戦略の枠組み4つ:疫学指標、コミュニティーの取り組み、公衆衛生能力、ヘルスケア能力
- 疫学指標は基本再生産数(R)、1週累積感染率など。指標のない国も
- 出口戦略に指標が必要だが、各指標の明確な重み付けがなく曖昧だった
- 質の高いエビデンスを追究すると意思決定が遅れる
- 対人距離は国により1~2mと異なる。ニュージーランドではsocial bubble model考案
- ルールを理解できる高校生は授業再開、しかし小学生はどうする?
- アジアでは1回限りの給付金支給。欧州は社会的セーフティネット強化(分割支給)
- PCRは日本、欧州では重症者に、韓国では感染地域全住民に。ドライブスルー有効
- アジアではmanual・アプリによる感染追跡、香港はスパコンによる犯罪者追跡奏功
- アジアでは確定例は病院、施設に、欧州では軽症は自宅隔離が多かった
- アジア太平洋地域では入境制限が厳格、欧州では制限は緩やか
この総説で比較されたのは、アジア太平洋地域はニュージーランド、シンガポール、香港、日本、韓国。欧州からはノルウェー、英国、ドイツ、スペインです。
アジア太平洋地域と北欧は比較的成功裡に感染をコントロールしています。最も模範的なのは台湾ですが、この総説には残念ながら台湾は含まれていません。台湾はWHO参加を中国に妨害されていますからそのためかもしれません。失敗例としては特に英国とスペイン、ドイツが挙げられます。
この総説ではアジア太平洋地域が成功し、西欧が失敗したのはなぜかを検討しているのですが、大きな要因として3つ挙げています。
1) アジアではSARS(2003年)、MERS(2015年)を経験しこの時に堅牢(robust)な公衆衛生、ヘルスケアシステムが構築され次のアウトブレイクに備えていた
2)アジアでは特に日本、韓国、香港にはマスク着用の文化があり広く行われた。一方、欧州ではマスクの文化がなく懐疑的で着用が遅れた
3) アジアでは患者追跡が成功、確定例は施設に隔離し感染が少なかった。欧州では追跡がうまくできず軽症者は自宅隔離が多かった
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