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【2021年 医学はこうなる】江角悠太

国民健康保険志摩市民病院院長

 2021年01月02日 05:05
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私が選んだ医学2020年の3大ニュース

1. TAO医師団(地域創生医師団)が発足

 「地域医療を志す高校生、医学生、研修医を含めた若手医師に夢と希望を」という目的で発足されたTAO医師団(地域創生医師団、taomed2020.com)。

 ある一人の医学生が、将来田舎の医療を率先して行いたい、という気持ちで医学部に入学した。しかし、あれよあれよという間にその気持ちはへし折られた。「総合診療なんてやめておけ、あんなの専門じゃない」「田舎でやる医者なんて二流だぞ」など、大学の中にいるとさまざまな場面で否定され、目標を見失い何年も留年することとなった。

 全国にも同じような悩みを持った学生は少なからずいるだろう。地域医療とは、疾患を治す医療だけでなく、人の生活、そしてその地域を支える医療である。自分の担当の分野だけでなく、その人が抱える全ての問題に対して責任を持つのが地域医療である。かたや、大学や専門病院での医療は、疾患を治すことに集中する医療である。患者を助けるためには双方ともに必要であるが、大学へ入ると「過疎地で働かない方がいい」と言われる矛盾が、地域医療を志す学生や地域枠の学生、自治医大生を苦しめていないか。

 そんな学生、若手医師たちに、外から支えよう、応援しよう、認めよう、自分たちも数多くのバッシングを経て、それでも乗り越えて今、自ら選んで田舎で働き、生き生きと楽しみながらやっている医師の集まり。それがTAO(田舎で生きる、活きる)医師団である。北は北海道から南は沖縄まで、田舎で働く気マンマンの医学部1〜6年生、かなり打ちひしがれた初期研修医、もう迷い始めた後期研修医、田舎大好き中堅医師〜レジェンド医師が、一堂に会し、これからの日本の田舎を考え、田舎の住民の生活をどう豊かにしていくか、行動する団体である。

2. Isha radio~医者になりたいお医者さんたち~ YouTubeラジオ開設

 中高生、大学生、若手医師に向けた応援ラジオ。2020年は全国的に病院見学や病院実習が不可能になったことで、医療現場を体験、体感することなしに医学部や医師を目指すことはとても不安である、という声が多数聞かれた。少しでも現場で働く医師の気持ちや実態を伝えて元気になってもらおうとするYouTubeラジオ「Isha radio」を開設した。

 整形、麻酔、総合診療の3人の医師がパーソナリティーとなり、毎月、ゲスト医師、1人の人生を解きほぐし、これまでの生い立ちや学校生活、研修医、専門医、これからのビジョン、そして自分の医師人生を踏まえて若手に伝えたいことを発信していく、言い放題するラジオである。

 素人がやっている番組なので、聞き苦しいところも多々あるが、回が進むごとに本質を突いてくるのはなかなか面白い。そのうちIsha radioを聴いて育ちました、みたいな医者が出てくると医療はもっと良くなるだろう。

3.三重大学医学部でのクラスター発生

 2020年8月に報道されたニュース。この日を境に、「三重大学医学部生」というだけで誹謗中傷の嵐。挙げ句の果てに、クラスターの原因になった学生たちに、同門からも非難の声が上がった。市民からの誹謗中傷に加え、身内からも非難される。その苦しみたるや想像を絶する。

 かなりの医学生から気が病んでいるという話を聞いた。犯罪を犯したわけでも、人を殺したわけでもない。ただ特殊なかぜのウィルスに感染しただけだ。三重大医学生にしたら、自分たちの周り全ての人間が敵になった、という感覚だっただろう。

 あの時に痛切に感じた。彼らを守ってやれるのは、所属する母体である大学とその卒業生だけだ。大学の役割やOB、OGの役割というのはそこで大きく発揮されるのだと。吹き荒れる吹雪の中、彼らに覆いかぶさり、嵐が過ぎ去るまでじっと温もりを与え続ける。それが親の役目である。

 あの時に、OBである自分にもよりできたことがあったはずだと反省している。言葉の支えだけでなく、体を使い、会いに行き、手を握ってあげることはできたはずだった。

2021年医学はこうなる

 一僻地自治体病院の院長がイメージする戯言だと思って聞いていただきたい。2020年1年の日本の医療を語るため、日本の消滅可能地域と呼ばれている、私が勤務をしている三重県志摩市を一例に30年後を考えていきたい。

 志摩市の人口減少率が年間約2%なので、30年後には人口は2万人を切る。一自治体としては存続不能であろう。今より行政サービスは行き届かなくなり、人材不足による、医療、教育、産業の衰退が顕著となり、高齢者は不安や喪失感を感じながら暮らしているかもしれない。日本全国、ほとんどの地方の山間部、海浜地域が同様な現状となる。

 人の健康を創造する、これが私たち医療従事者の存在意義である。30年後には、私たちは医療だけやっている時代に終わりを告げ、町そのものを健康にするために、地元の教育や産業分野にも関わっていくことが必須となろう。

 地域の小中高校教育に積極的に医療従事者が参画していくことが、時間はかかるが最も確実な、未来の地元を健康にする一番の方法だ。同じ地域に暮らし、生を全うしようとしている患者と接して、自分がどんな大人になる必要があるか、どんな人を目指すべきかを学ぶ最適な場が医療現場なのかもしれない。

 30年後には、仕事は場所を選ばなくなるだろう。新型コロナウイルスの影響で大量の失業者が出るだろうが、都会で再起を図るより、自分の地元やゆかりのある田舎で再起を図る方がより安全だと思う。そんな田舎での取り組み支援をするべきだ。お金はたいしてかからない。既にある制度の支援に加え、みんなが再起できるような支援策を打ち出してほしい。田舎が都会の人々を救うことができるし、田舎に産業をもたらすことにもなる。

 そして、医療・介護である。周産期小児医療の充実は、田舎にとって必須の課題だが、実際には集中化が進んでおり、地方創生とは真逆に走っている。そこで重要になるのは、高齢者を診ることができる産科医、小児科医、もしくは産科、小児科を診られる総合診療医の養成だ。実際にそうした医師も出始めており、新たな医師像である。これは住みやすい田舎をつくるための救世主といっても過言ではない。

 次に救急医療。ドクターヘリやそのうち日常になる空飛ぶ車などのモビリティーの発達で、三次救急に対する時間短縮は、さらに進んでくるだろう。なので、大事なのは救急の大部分を占める地域急性期である。それをしっかり地元の病院で受け入れることが、市民の安全、安心につながる。救急医と総合診療医のコラボレーションが解決策になるだろう。

 また、整形外科と総合診療科のコラボも重要である。これほど田舎で医療のニーズを満たすコラボはない。高齢化が進む田舎の地域で、整形外科のニーズはとどまることを知らない。総合診療医でも十分対応が可能で、その分、整形外科医は手術に時間をかけることができるのだ。

「病気を抱えながらも最期まで生きがいを持って暮らせる」ことが地域包括ケアシステムの理念であり、総合診療医は日ごろ接している市民の求めている生活や人生の実現へ向けて大きく貢献できるだろう。それが、年を取っても安心できる町として若人にとってもいい田舎でいられるのでないだろうか。

 田舎が都会を助ける時代。田舎のエキスパートオピニオンである医師が、各分野に感じさせている、とっつきにくさを捨て去り、同じ地元の住民の一人として、教育、産業分野の住民とともに、地域を育てていく。これが2021年から大きく変わる医療革命だと私は感じている。

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