【2021年医学はこうなる】川口浩
東京脳神経センター 整形外科・脊椎外科部長
2021年01月04日 15:11
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〔編集部から〕本連載では、2020年の「3大ニュース」を選定した上で2021年の展望をお願いしているが、担当編集者の説明不足により、川口浩氏の選んだニュースは3つにとどまらなかった。連載タイトルと体裁違いではあるが、ぜひお読みいただきたい。
【私が選んだ2020年のニュース&2021年医学はこうなる】
2020年も1年間、このサイトでDoctor's Eyeという連載を担当させていただいた。とにかく私は真面目だけが取り柄の努力家である。重責に応えるべく、基礎も臨床もメジャージャーナルには目を通すように心がけてきた。最近は、査読前の論文を掲載し、一般に公開する「プレプリント・サーバー」が面白い。世界最先端の研究成果が世界中から寄せられている。これらを全て合わせても、2020年のトピックスはコロナ一色であった。
Doctor's Eyeの中で、私は「整形外科」のトピックス論文を紹介するのが仕事である。しかし、コロナ禍以前でも整形外科関連の論文がメジャージャーナルに掲載されることは滅多にない。掲載されても、スポンサー付きで怪しさがハンパない。それにだいたい、書いても読んでもらえない。
ちなみに、最も読んでもらいたかった2020年のDoctor's Eyeは、ゲノム編集の解説記事である(「ゲノム編集となぜか日本学術会議」)。
原核生物(大腸菌や古細菌)の獲得免疫システムを、真核生物のゲノムの標的とする部位を狙い撃ちして書き換える技術に応用したこの発見には、とても感動した。若い先生にも同じ感動を味わってもらいたい、サイエンスの奥深さと無限の可能性を知ってもらいたいと、どこよりも分かりやすく解説したつもりだが、アクセス数は伸びなかった。ゲノム編集に関するコメントはなく、「掴み」で書いた学術会議ネタが炎上した。
炎上しようが反論されようが、そんなことはどうでもいい。私にとって一番の問題は、一生懸命、世のため人のために正しいことを書いているのに、なんの影響力もないことである。プレガバリン(商品名リリカ)、ロモソズマブ(同イベニティ)は放し飼いのまま暴れまくって国民医療費を搾取し、国民の健康を危険にさらしている。年末には、ファビピラビル(同アビガン)の承認が見送られた。政府は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を一,二類相当指定感染症から外そうとしない。
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