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急性呼吸不全に対する酸素は高め?低め?

 2021年02月09日 05:00
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研究の背景:長らく議論されてきた命題

『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』という映画があったが、「どっちも同じじゃないのか」と思いつつ、ドラマに引き込まれてしまったのは、私が思春期のころの話である(2017年にはアニメ映画化されている)。

 今回紹介する研究は、「急性呼吸不全、酸素飽和度を高めにするか?低めにするか?」というテーマだ。実はこの命題、かなり長らく議論されている。

 医療において経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2) 100%を目指すというのは神話であり、誤りである。高濃度酸素投与により肺胞上皮細胞の傷害が生じ、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を助長するだけでなく、気道クリアランスも低下してしまう。しかしその半面、低過ぎる酸素管理は不⼗分な酸素供給により臓器障害を引き起こす。そのため、後ろ向き観察研究ではあるが、標的動脈血酸素分圧(PaO2)は「高過ぎず、低過ぎず」が重要であることが示されている(Crit Care Med 2017; 45: 187-195図1)。

図. PaO2別に見た院内死亡率〔1万4,441例の集中治療室(ICU)患者で検証〕

27378_fig01.jpg

Crit Care Med 2017;45:187-195)

 ARDSの症例に絞った場合、ARDSネットワークの研究においてPaO2は55~80mmHgを標的にすべきとされている(N Engl J Med 2000; 342: 1301-1308N Engl J Med 2004; 351: 327-336Crit Care Med 2018; 46: 517-524)。これが現時点でのコンセンサスといえるだろう。ただし、ARDS患者における酸素化目標範囲の妥当性を前向きに検証したデータはなく、あくまで「やや低酸素サイドに置く方がよい」という程度の認識であった。

 風向きが変わったのは、近年実施されたLOCO2研究(N Engl J Med 2020; 382:999-1008)である。ARDS患者を目標PaO255~70 mmHg(SpO288~92%)に設定して酸素投与を受ける低酸素化群と、 90~105 mmHg以上(同96%以上)に設定して酸素投与を受ける高酸素化群にランダムに割り付けた多施設共同研究である。試験途中に、低酸素化群において死亡リスクを増やす可能性が示唆されたため、早期中止に至っている(論文上、28日生存率が有意に上昇する水準には達していない)。

 今回紹介するHOT-ICU研究は、目標PaO2を60mmHgに設定することで、90mmHgに設定するよりも、90日死亡率が少なくとも5%低下するという仮説を再検証したものである(N Engl J Med 2021年1月20日オンライン版)。

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