糖尿病薬の頂点に立つSGLT2阻害薬
2021年02月22日 05:00
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研究の背景:欧米の指針でSGLT2阻害薬の立ち位置が上がってきている
2018年に発表された米国糖尿病学会(ADA)/欧州糖尿病学会(EASD)の合同レポートにおいて、糖尿病薬物治療のアルゴリズムが大きく改訂されたことを以前にご報告した(Diabetes Care 2018; 41: 2669-2771、関連記事「大きく変わった糖尿病薬物療法アルゴリズム」)。
この改訂で大きく立ち位置を上げたのが、SGLT2阻害薬とGLP-1受容体作動薬であり、一次治療のメトホルミンに次いで、心血管疾患(CVD)の既往のある人や体重増加が問題となる2型糖尿病患者の二次治療はこの両薬剤のいずれかとされたのである(欧米では体重増加が問題にならない2型糖尿病患者はいないので、簡単にいえば、ほぼ全ての2型糖尿病患者の二次治療薬になったことになる)。
ADAは毎年1月に機関誌Diabetes CareのsupplementとしてStandards of Medical Careを公表しているのだが、2020年、21年と少しずつ薬物療法のアルゴリズムを変更している。今回発表された2021年版のアルゴリズム(Diabetes Care 2021; 44: S111-S124)においては、一次治療はメトホルミンとされている点に変更はないものの、CVDの既往のみならず、その高リスク者、慢性腎臓病(CKD)、心不全のある人や体重増加が問題となる人の二次治療にSGLT2阻害薬とGLP-1受容体作動薬を位置付け、その適応を拡大した。
また、CVDの既往および高リスク者、CKD、心不全のある人においては、メトホルミン使用の有無にかかわらず両薬剤を選択するようにとしている。すなわち、糖尿病診断の時点で既にCVDの既往があったり、心血管の高リスク者であったり、CKDや心不全を合併したりしている場合には、メトホルミンに先んじて一次治療として両薬剤のいずれかを選択せよということである。
さらに、心血管疾患に関しては、完全にSGLT2阻害薬とGLP-1受容体作動薬を対等に扱っているものの、CKDでもアルブミン尿のある者や心不全合併患者についてはSGLT2阻害薬をGLP-1受容体作動薬よりも上記に置き、その投与を推奨している(図1)。
図1. ADAによる糖尿病薬物療法アルゴリズム2021年版(一部を抜粋)
(Diabetes Care 2021; 44: S111-S124)
既に2020年の時点で、EASDと欧州心臓病学会(ESC)は、心血管疾患既往者や高リスク者の一次治療で使用する糖尿病治療薬として、(メトホルミンではなく)SGLT2阻害薬とGLP-1受容体作動薬を挙げていたが(Eur Hear J 2020; 41: 255-323)、世界的に見てますますSGLT2阻害薬の立ち位置が上がってきたこととなる。
これら欧米の学会によるレポートの参考文献として引用されているわけではないものの、横浜市立大学の研究グループが、SGLT2阻害薬とGLP-1受容体作動薬の心血管疾患〔3ポイント主要心血管イベント(MACE):心血管死、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中〕および腎臓アウトカムに対する影響を比較するネットワークメタ解析の結果をCardiovasc Diabetol (2021; 20: 14)に報告した。ADAがGLP-1受容体作動薬よりもSLGT2阻害薬を上位に置いたことが納得できる結果であり、ご紹介したい。
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