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人工甘味料を闇雲に恐れる必要はない!

 2021年03月19日 16:48
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研究の背景:人工甘味料を一括りにするのはド素人

 以前、人工甘味料が血糖値を上昇させるとのSuezらのNatureの論文をご紹介したことがある(Nature 2014; 514: 181-186、関連記事「NHKも報道,『人工甘味料が血糖を悪化させる』の信頼性は?」)。この時点において、私は以下の理由でこの論文をそのまま信用することはできないとした。

①サッカリンで生じたマウスの耐糖能障害は抗生物質で治癒する特殊な病態であり、ヒトの耐糖能障害への一般化が不可能である

②サッカリン摂取後7日間で7人中4人において生じたというヒトの耐糖能異常について、サッカリン以外の食事についての情報がなく、またコントロール群も設定されていないため、サッカリンと耐糖能異常との因果関係が全く判断できない

 このとき私は「耐糖能に対する腸内細菌叢の重要性を示したという意味でこの論文は無意味ではない」とした一方で、「この論文は強烈に怪しい。Suezら研究者たちも、査読者たちも、科学者としてはかなり低レベルなのではないか」と(原稿に記載はせずに)思っていた。

 Suezらが所属するイスラエルのワイツマン科学研究所は、自然科学の世界におけるトップ施設であり、Natureが依頼する査読者たちも含めて、本来、自然科学者としてトップリーダーたちばかりのはずである。それでも私が彼らのレベルが低いと思った理由は、純然と彼らが人工甘味料についてのド素人であると直感したからである。

 例えば、糖尿病治療薬の中で、SU薬が体重増加を招く可能性が高いとしても、SGLT2阻害薬では体重増加は全く招かず、むしろ減少することは誰しもが知るところである。そのため、どんなにSU薬の投与後に体重が増加したというデータが出たところで、糖尿病治療薬が体重を増加させるとは結論しない。SU薬のデータだけで糖尿病治療薬というカテゴリー全体として体重を増加させると一くくりに判断するようでは、糖尿病療養を担当する医療従事者としてはド素人であることを丸出しなのである。

 翻って、Suezらの論文のタイトルには "Artificial sweeteners induce glucose intolerance"とサッカリン、スクラロース、アスパルテームを一くくりにして人工甘味料というカテゴリー全体の話にしているのである。そして、実際のデータを見ると(図1)、サッカリンは確かに血糖値を上昇させているが、アスパルテームはどう見ても血糖値を上げておらず、スクラロースは若干上げているようにも見えるが、スクラロース単独として見た場合に有意差があるかどうかはかなり怪しい(正直、ないように見える)。人工甘味料の中で、サッカリンのみは血糖上昇を招く可能性が高かったとしても、ほかの人工甘味料についての検討を十分にせずに、人工甘味料が血糖上昇を招くと一括りに結論することは、どう見てもド素人っぽい判断なのである。

図1.Suezらの人工甘味料によるマウスにおける血糖上昇の程度

27632_fig01.jpg

Nature 2014; 514: 181-186)

 そしてこのたび、そのサッカリンを高用量投与しても腸内細菌叢にも耐糖能にも影響はないとする、米・オハイオ州立大学のSerranoらのマウスおよびヒトのデータがMicrobiome2021; 9: 11)に報告された。なぜ、この論文をNatureが自分たちの責任において採用しなかったかは不明であるが、Microbiomeもインパクトファクター10.350の一流ジャーナルである。

 人工甘味料の摂取を闇雲に恐れる必要がないことを明確に示してくれたこの論文をご紹介したい。

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