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子供の身近に潜む危険

川崎市立川崎病院呼吸器内科医長 田中希宇人

 2021年03月25日 17:19
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「歯固めジュエリー」って知ってる???

 最近、TwitterやInstagramで「歯固めジュエリー」なるアクセサリーの投稿を見ることが増えました。

 ツイートの内容を見てみますと、

  「赤ちゃんが『歯固めジュエリー』なるモノで遊んでいる際に壊れて飲み込みそうになった」

とのことで投稿されていました。

 投稿された写真を見ますと、木製の部品が一部割れてバラバラに分解されていました。部品の1つ1つを見ると、確かに小さな赤ちゃんが飲み込みそうな大きさのパーツにも見えます。

 このような玩具?アクセサリーの存在自体、ほとんど知りませんでした。調べると、どうやら手づくりであることや、玩具協会およびSTマークとは別の認定制度があることなどが分かりました。

 そもそも「歯固め」なんて必要なの???という議論はありますが、このような話題は日本全国どこにでもありそうで、医師としてといいますか、どちらかというと子供を持つ親として身の毛がよだつ思いでした。

子供の窒息事故事例

 過去にもおもちゃによる同様の窒息事故の事例が、消費者庁から詳細に報告されています(図1)。

図1.おもちゃによる窒息事故の事例

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(玩具による乳幼児の気道閉塞事故の事例;消費者安全調査委員会 2017年11月20日報告)

 この消費者庁からの報告を読んでいきますと、今までにも玩具による悲しい子供の窒息事故事例が数多く報告されていることが記載されています。

 米食品医薬品局(FDA)からの2018年12月20日付けの報告では、今回話題に上がっている「歯固めジュエリー」に似たような玩具でパーツを誤飲することにより病院に搬送されたとか、ヒモの部分で首が絞まって死亡事故が起きたと、といったことが報告されています。

 このような事例に基づいて、米国小児科学会は、

 -ネックレスは首が絞まる危険性がある

 -部品のビーズが外れると窒息の危険性がある

として「赤ちゃんに付けることは推奨しない」としています。

 日本小児呼吸器学会からの報告では、毎年50人近くの子供が食べ物などで窒息死しているとの報告があり、多くは0~2歳児に発生していることが分かっています(図2)。

図2.窒息死・窒息事故を起こした子供の人数

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(日本小児呼吸器学会 気道異物事故予防ワーキンググループ「小児の気道異物事故予防ならびに対応」 2013年8月)

 これは窒息による死亡例という、あくまで氷山の一角であり、ヒヤリハット事例はさらに数多くあるものと考えられます。

考えられる対応策

 呼吸器内科医として、小さな子供を持つパパとして対応策を考えてみました。

 まず、安全な玩具を選ぶ基準として「STマーク」の付いているおもちゃを選ぶことです。また子供が手の届く範囲をよく考え、その範囲に口に入るような大きさの物を置かないようにすること、そして子供が喉を詰まらせてしまった際にすぐに救急処置ができることが重要と考えます。

①STマーク

 「STマーク」は、第三者検査機関によるST基準適合検査に合格したおもちゃに付けることができるマークであり、この「STマーク」の付いている玩具は、「安全面について注意深くつくられたおもちゃ」と業界が推奨するものです。

 そして「STマーク」で認められているおもちゃには、 万が一の事故が起こってしまった際の損害賠償補償制度もあります。

②子供の手が届く範囲を把握する

 NPO法人「Safe Kids Japan」によると、図3の範囲が子供の手の届く範囲とのこと。結構な範囲まで届くな...って思います。この範囲は「物を置くと危険な場所」と言い換えることもできます。

図3.子供の手の届く範囲

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(政府広報オンライン)

③子供が口に入れることができる大きさを把握する

 子供の口の大きさは3歳児で「直径約4cm」と言われており、これより小さい物は子供の口にすっぽり入り、窒息の原因になる危険性があります(図4)。

図4.子供の口の大きさと誤飲チェッカー

子どもの口の大きさ20210323.png

(政府広報オンライン)

④子供の窒息 救急処置

 小児科医や救急医にとってはここに示すことは申し訳ありませんが、普段大人を診療している先生方や医療者にはこのような救急のフローチャートや実際の対応は記憶の片隅にしかないのでは・・・と思っています。実際に私も呼吸器内科で15年以上診療に当たっておりますが、実際の医療の現場では子供の窒息に出合ったことはありません。ただ幸か不幸か、数年前に自宅で自分の子供(1歳ごろ)が居間に転がっていた紙ゴミを飲み込み窒息しかけた際に、この救急処置が生きたことを記憶しております。

図5.救急処置のフローチャート

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(日本小児呼吸器学会 気道異物事故予防ワーキンググループ「小児の気道異物事故予防ならびに対応」 2013年8月)

 子供の窒息はいつ・どこで起こるか分かりませんので、今一度確認されておくことが賢明だと思っています。

子供には「本当の愛のあるおもちゃ」を

 今回の「おもちゃで窒息」のSNSでの投稿や「歯固めジュエリー」のような手づくりの玩具を見ていろいろ考えるところがあり、このMedical Tribuneにも投稿させていただきました。

 愛する子供のことを思って玩具を手づくりする気持ちは大変よく理解できますが、子供のことを第一に考えますと、何よりも子供に安全な「本当の愛のあるおもちゃ」で遊んでほしいと思いませんか?

 医療者である皆さまにはぜひ安全面を第一に考えて子供と接していただけたらいいなと思いますし、もし子供の身近に潜む危険があれば、注意喚起できるような社会であってほしいと心から願っております。

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