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自閉症の"僕"たちが伝えたいこと

英映画『僕が跳びはねる理由』公開へ

 2021年03月26日 11:27
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27678_pho01.jpg@2020 The Reason I Jump Limited, Vulcan Productions, Inc., The British Film Institute

 発達障害の1つとして知られる自閉症。主な特徴として他者との会話が難しい点が挙げられ、自閉症者の感情や思考などは理解されにくい。そうした中、自閉症者である作家の東田直樹氏が13歳で執筆したエッセイ『自閉症の僕が跳びはねる理由』はこれまで34カ国以上で出版され、このほど同書を原作とした英映画『僕が跳びはねる理由』が完成、世界自閉症啓発デーの4月2日から全国ロードショー公開される。同作の字幕監修を務めた精神科医の山登敬之氏(明治大学子どものこころクリニック院長/同大文学部心理社会学科特任教授)へのウェブ取材の内容を併せて紹介する。

文字盤で内面を表現、親も知らなかった思い

 自閉症は中枢神経障害と考えられているが、いまだに原因は解明されていない。現在は広汎性発達障害、高機能自閉症、アスペルガー症候群などを含む一連の障害群として「自閉症スペクトラム障害(ASD)」に含まれる。ASDの有病率は100人に1人とされる。

 同作は、原作の英訳者の1人で英国人作家のデイヴィッド・ミッチェル氏によるナレーションをベースに、自閉症を持つ世界各地の5人の少年少女たちの日常と家族による証言を追うドキュメンタリーだ。印象的なエピソードを紹介する。

 米国在住のベンとエマは、自閉症という共通点をきっかけに幼いころから家族ぐるみで付き合うようになった。当初は言語コミュニケーションが成り立たず、叫んだり、暴れたりすることがあると、親たちは彼らの気持ちを推測し代弁していたという。やがて、アルファベットが書かれた文字盤を指差して「言葉」による表現ができるようになると、彼らがこれまで互いを尊重し、信頼し合ってきたことが分かったという。

自閉症を「恥」と捉える風潮に立ち上がる親

 わが子に自閉症があると分かり、周囲から差別と偏見にさらされた家族の姿も、同作は映し出す。シエラレオネに住むローランド・ペン=ティミティ氏は娘のジェスティナが自閉症であったことに感謝し、「(娘が)僕を真の父親にした」と語る。「この子がくれた愛はわれわれの人生観をも変えた」と。その気持は母親であるメアリーも同じだが、周囲の目は嫌悪や蔑みばかりであったと振り返る。ジェスティナが感情的になって暴れる姿を見た人たちは、「悪魔に取りつかれているんだ」と言わんばかりの表情を浮かべたという。

 地域社会の中で孤立する自閉症者と家族たち。メアリーは自閉症を「恥」と捉える根強い風潮を変えるため、自閉症者とその母親たちの集いを主催する。わが子が「悪魔」や「魔女」と呼ばれたり、近所でいじめに遭い引っ越しを余儀なくされたりするなど、つらいエピソードが共有される。中には地域からの圧力に屈し、わが子を手放してしまう親も少なくないという。

 こうした現実を変えるため、ペン=ティミティ氏一家はメディアに出演する決意をし、自閉症者の真の姿を社会に広める活動を始めた。わが子たちが胸を張って生きていけるようにとー。そして2017年には、国内初となる自閉症の子供たちが通える学校の設立を果たしたのだった。

自閉症でいることが普通、自分を好きになれるならいい

 同作の根底に流れるテーマは「普通とは何か」や「個性とは何か」という普遍的な考えだ。会話によるコミュニケーションが不成立になりがちなために差別や偏見を受けてきた自閉症者が何を感じ、考えてきたのかを伝えることで、健常者が持つ自閉症者に対するイメージは少なからず覆されるのではないだろうか。

 東田氏は原作の中で次のように綴っている。「もし自閉症が治る薬が開発されたとしても、僕はこのままの自分を選ぶかも知れません」と。その理由として、「僕たちは、自閉症でいることが普通なので、普通がどんなものかは本当は分かっていません。自分を好きになれるのなら、普通でも自閉症でもどちらでもいいのです」と述べている。

山登敬之氏との一問一答

――本作に出てくる文字盤とは、どのようなものか。

 東田さんは、会話ができない重度の自閉症だが、幼児のころから文字に強い関心を持っていて、お絵描きボードに字を書きながら言葉を覚えたという。そのことに気付いた母親の美紀さんが、絵カードなどを使って言葉を教えていった。まず、このことをしっかり押さえておきたい。つまり、この子の気持ちを知りたいと切実に願う人がいて初めて、子供はコミュニケーションしようという気持ちになるのだ。そうやって字を覚えた東田さんは、次に筆談によるコミュニケーションを身に付け、さらにキーボードを用いてワープロで文章が書けるようになった。いま彼が使っている文字盤は、キーボードを簡略化しボール紙にアルファベットを書いたお手製のものである。もちろん、映画に登場するような文字盤も市販されており、インターネットでも購入が可能だ。

――本作では両親が行動を起こして学校をつくったりしているが、日本ではどうか。

 日本には、日本自閉症協会という団体がある。これは自閉症の子を持つ親たちがつくる親の会が全国的に結集してできた組織で、既に50年を超えて活動してきた。映画に登場するのは、長い内戦やエボラ出血熱の流行に苦しみ平均寿命が短いことで知られるアフリカ西部の国、シエラレオネに暮らす家族。そのような国にもこうしたムーブメントが起きていることは、私には驚きであり喜びでもあった。

――自閉症者を診ていない医療者に向けてメッセージを。

 人は人を見かけだけで判断し、言葉を話さない人のことは知能が低いと見なしてしまう。その態度をまず改めるべきだろう。どんな患者が来ても、まず本人に向き合って話ができなければいけない。そのときにこちらの話を理解できていないと感じたり返答がなかったりしたら、そこで初めて付き添いの家族などと話す。それだけの手順は踏んでほしい。その人が存在しないかのような態度はまずい。どんな相手にも敬意を払って接するように心がけてもらえたらと思う。

編集部

映画『僕が跳びはねる理由』
4月2日(金)全国ロードショー

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監督/ジェリー・ロスウェル

原作/東田直樹著『自閉症の僕が跳びはねる理由』(エスコアール、角川文庫、角川つばさ文庫)
字幕翻訳/高内朝子
字幕監修/山登敬之
原題/The Reason I Jump
製作年/2020年
制作国/英国
上映時間/82分
配給/KADOKAWA
Ⓒ2020 The Reason I Jump Limited, Vulcan Productions, Inc., The British Film Institute

公式サイト:https://movies.kadokawa.co.jp/bokutobi/

公式Twitter:https://twitter.com/bokutobi_movie

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