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優れた外科医の資質とは?

 2021年03月31日 17:25
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研究の背景: 手術室スタッフの5%が手術室での暴力を目撃

 外科医が、「優れた外科医とは何か?」と問われた際、「自分自身や家族が手術を必要としているときに相談する外科医である」と答えれば、おそらく無難で普遍的な回答になりうるだろう。しかしながら、「その外科医を他の有能な外科医と区別するものは何か?」という掘り下げた質問にあうと、なかなか即答は難しい。

 長い外科の歴史の中で、無麻酔の時代や抗菌薬登場以前に活躍していた外科医は、現代よりも「手術の速さ・うまさ」を有する者が、「優れた外科医」の定義を満たしていたであろう。その後、より安全な麻酔・医学的知見の集積により、「解剖学や生理学的な深い知見」も不可欠のものとなった。これらの外科的な職務を遂行するために必要な技術・知識・熟練度を包含した資質は、テクニカル・スキル(TS)と総称される。

 高いTSを持つ外科医が有能な外科医であることは間違いないが、このような医師は、「あなたやあなたの家族が手術を必要としているときに相談する外科医」として十分であろうか。

 これまでの研究によると、外科医の40%は、外科医のストレスに直接起因すると考えられる術中合併症を目撃したことがあるそうである1)。また、97%の手術室看護師が、指導医クラスの外科医が手術室内で起こした問題行動を目にしたことがあると答えた。具体的な問題行動の内容は、怒鳴る(79%)、馬鹿にした態度を取る(72%)、罵倒する(36%)、暴力を振るう(5%)などであった2)

 外科医の資質として、「TSの範疇に入らないスキル」を総称してノンテクニカル・スキル(Non-TS)と呼ぶ。Non-TSとは、高い知的能力、優れたコミュニケーション能力、高い倫理観、誠実さ、健全で道義的な勇気、同僚の長所・短所を正確に把握する能力、などの多面的な資質を包括した概念である。

 当然の結果として、「TSが劣る外科医の手術成績は悪い」という研究論文は存在するが3)、実は「Non-TSが劣る外科医の手術成績は悪い」とする論文も以下を例として多く存在する。

・Non-TSが低い外科医では、技術的エラー発生率が有意に増加4)
・Non-TSが低い外科医では、技術的エラー発生率・手術時間が有意に増加5)
・Non-TSが低い手術チームでは、重篤な合併症・死亡率が有意に増加6)

 つまり、1つの手術に関わる医療スタッフのタスク・医療機材が高度化し、社会的に求められる医療水準も高度化している現代外科診療においては、TSのみでは十分な治療成績を残せないということである。

 では、なぜこれほどまでにNon-TSが低く、問題行動を起こしてしまう外科医が多いのであろうか。外科医の人格の問題なのか、それとも外的要因に起因するものなのであろうか。

 このたび、外科医の手術中に自覚するストレスとNon-TSの間に密接な関連性を示唆する米・Indiana UniversityのNicholas E. Anton氏らの研究結果がAm J Surg(2021年1月30日オンライン版)に掲載された。題目は「Surgeon stress negatively affects their non-technical skills in the operating room」である。

 なにも、高ストレス環境で働く医療関係者は外科医だけではない。本研究結果は、職種を問わず各人の職場環境に置き換えて解釈可能な内容と推察されるため、広く紹介したい。

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