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ドクターズアイ 仲田和正(総合診療) ドクターズアイ 仲田和正(総合診療)

2型DMで心血管疾患・腎障害ならA1c値にかかわらずSGLT2、GLP-1を投与せよ!

付録:浩宮様のオックスフォード滞在記

西伊豆健育会病院病院長 仲田 和正

 2021年06月15日 05:10
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115名の先生が役に立ったと考えています。

 この数年の2型糖尿病(DM)治療の進歩には全く驚きます。今回のN Engl J Med2021 Apr 1; 384: 1248-1260)総説も仰天でした。

「2型DMで心血管疾患あるいは、そのリスクのある場合や腎障害ではHbA1c値にかかわらずSGLT2阻害薬(ジャディアンス、カナグル、フォシーガ)やGLP-1受容体作動薬(ビクトーザ、オゼンピック、トルリシティ)を投与せよ」というのです。

 ガーン!!

 N Engl J Med総説「2型糖尿病で心血管リスク減らす血糖降下薬」重要点は下記7つです。

  1. 心血管リスク、腎障害のある2型DMはHbA1c値に関わらずSGLT2、GLP-1投与せよ!
  2. 薬価:GLP-1注170円/日、週1回薬>400円/日、内服334円/日、SGLT2は180円/日
  3. HbA1c<7.0で65歳以下の微小血管合併症は減少するが心血管疾患はさほど減らぬ
  4. ACCORD試験(2008年):HbA1c<6.0%で死亡率上昇、初期DM目標<6.5~7.0%
  5. 若年2型DMではHbA1c 6.5~7.0以下に、6.0以下は不可。高齢者は7.5~8.5以下に
  6. メトホルミンで心血管リスク↓。インスリン、SU、α-GI、DPP-4、チアゾリジンに効果なし
  7. HFrEF・腎疾患ならSGLT2を、肥満患者ならGLP-1推奨

1. 心血管リスク、腎障害のある2型DMはHbA1c値に関わらずSGLT2、GLP-1投与せよ!

 この数年のRCT(ランダム比較試験)で分かったのは、2型DMで特にGLP-1受容体作動薬とSGLT2阻害薬は血糖を下げるだけでなく心血管疾患、腎疾患に有用であることです。従来、血糖コントロールをうまくやって微小血管障害は防げてもアテローム性動脈硬化心血管疾患の改善はさほど得られなかったのです。

 GLP-1受容体作動薬やSGLT2阻害薬になぜ心血管リスクや腎障害を改善する作用があるのかは分かりません。薬剤特異的なのか、それともこれらのクラス共通の作用なのかもはっきりしません。しかし、2016年から20年にかけてのRCTではことごとくSGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬投与を支持する結果だったのです。以下の通りです。

【GLP-1受容体作動薬の心血管疾患に対する効果】

 心血管疾患のある2型DM患者で3つの主要複合転帰(非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中、心血管死亡)でプラセボに比べ優れました。

 なおハザード比(HR; hazard ratio)とは、1より小さければ抑制効果があるという意味です。例えばHR 0.87はリスクを13%減少させたということです。

リラグルチド(ビクトーザ):HR 0.87、95%CI 0.78~0.97(LEADER試験、N Engl J Med 2016)
セマグルチド(オゼンピック):HR 0.74、95%CI 0.58~0.95(SUSTAIN-6試験、N Engl J Med 2016)
デュラグルチド(トルリシティ)のHR 0.88、95%CI 0.79~0.99(REWIND試験、Lancet 2019)

【SGLT2阻害薬の心血管疾患に対する効果】

 確立した心血管疾患のある2型DMで3つの主要複合転帰(非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中、心血管死亡)が減少しました。

エンパグリフロジン(ジャディアンス)HR 0.86、95%CI 0.74~0.99(EMPA-REG OUTCOME試験、N Engl J Med 2015)
カナグリフロジン(カナグル)HR 0.86、95%CI 0.75~0.97(CREDENCE試験、N Engl J Med 2019)
ダパグリフロジン(フォシーガ)HR 0.83、95%CI 0.73~0.95(DECLARE-TIMI 58試験、N Engl J Med2019)

 それにしても、こういう重要なRCTのほとんどはN Engl J MedLancetに載るのですね。医師はこの2誌には常に目を通していないと完全に世界に取り残されます。

 さらに驚くのは、「心血管死亡、心不全による死亡をダパグリフロジンとエンパグリフロジンはDMの有無にかかわらず減少させた」と言うのです。

 下記論文です。糖尿病のない患者にもSGLT2阻害薬を投与するのです!!

McMurray JJV,et al. Dapagliflozin in patients with heart failure and reduced ejection fraction. N Engl J Med, 2019; 381:1995-2008

Packer M,et al. Cardiovascular and renal outcomes with empagliflozin in heart failure. N Engl J Med, 2020; 383: 1413-24

 なお、SGLT2阻害薬とGLP-1受容体作動薬を併用するとさらに効果があるのかは分かりません。また長期の副作用もまだ分かりませんし、またこれらの薬剤は大変高価です。

 まとめると「心血管リスク、腎障害のある2型DMはHbA1c値にかかわらずSGLT2、GLP-1投与せよ」です!

2. 薬価:GLP-1注170円/日、週1回薬>400円/日、内服334円/日、SGLT2は180円/日

 ただ、これらGLP-1受容体作動薬やSGLT2阻害薬は随分高価な薬ですので、普及は数年以上先になるでしょう。

 値段を調べてみました(価格は『今日の治療薬(2021年版)、南江堂』によります)。なおメトホルミンのメトグルコ250mg1錠は10.1円です。

【GLP-1受容体作動薬の気になるお値段】

 なおGLP-1はセマグルチドのリベルサスのみが内服薬で、それ以外は皮下注です。

 1日1回の皮下注製剤だと薬価は170円/日くらいですが、週1回皮下注だと1日当たりの価格で400~500円/日と大変高価になります。

 ただ週1回の皮下注だと在宅で認知症DM患者の管理が楽です。週1回ナースに注射をお願いすればよいからです。

 リベルサスは内服で楽ですが値段は皮下注の倍で、実に334.2円/日です。

・リラグルチド(ビクトーザ)18mg/筒、1万396円(0.3mg/日とすると173.3円/日)
・エキセナチド(ビデュリオン)2mgペン週1回皮下注、3,647円(521円/日)
・エキセナチド(バイエッタ)5μgペン300皮下注、1万26円(10μg/日で173.7円/日)
・リキシセナチド(リキスミア)300μg皮下注、6,481円(20μg/日で432.1円/日)
・デュラグルチド(トルリシティ)0.75mg週1回皮下注、3,396円(485.1円/日)
・セマグルチド(オゼンピック)0.5mg週1回皮下注、3,094円(442円/日)
セマグルチド(リベルサス)7mg/錠内服(334.2円/日)

【SGLT2阻害薬の気になるお値段】

 SGLT2阻害薬はおおむね180~200円/日の間です。

・イプラグリフロジン(スーグラ)50mg錠(195.2円/日)
・ダパグリフロジン(フォシーガ)5mg錠(195.1円/日)
・ルセオグリフロジン(ルセフィ)2.5mg錠(180.0円/日)
・トホグリフロジン(デベルザ、アプルウェイ)20mg錠(198.1円/日)
・カナグリフロジン(カナグル)100mg錠(183.9円/日)
・エンパグリフロジン(ジャディアンス)10mg錠(190.4円/日)

3.HbA1c<7.0で65歳以下の微小血管合併症減少するが心血管疾患はさほど減らぬ

 65歳以下のDM患者のHbA1c目標値が7.0以下となったのは英国のUKPDS33(United Kingdom Prospective Diabetes Study、1998年)のころからです。2型DMの古典的ともいえる有名な研究です。

 英国といえば小生、最近『The Thames and I: A Memoir of Two Years at Oxford, The Renaissance books, 2019』という本を読みました。

 著者はなんと今上陛下、Crown Prince Naruhito、浩宮徳仁(ひろのみやなるひと)親王が23歳から25歳、1983年から85年の2年4カ月にわたり英・オックスフォードに留学されたときの思い出を記したものです。

 1983年6月21日にロンドンに到着、翌日にはエリザベス女王陛下(Her Majesty the Queen)にバッキンガム宮殿でのお茶会に招かれアンドリュー、エドワード王子と歓談、女王陛下自身がお茶をいれて下さったとのことです(スゲー!)。

 小生と家内がバッキンガムに行ったときはおびただしい人垣の後ろから衛兵の交替式を背伸びして見物しただけでした(ただの野次馬)。

 衛兵って1隊だけかと思ったら数隊が四方から行進してきたのには驚きました。この衛兵交替式は伝統を重んずる英国らしく第二次大戦中も欠かさず行われたとのことです。

 西伊豆町内で玄関に近衛兵の大理石の表札を掲げている方がいました。戦前皇居を警護する近衛兵は眉目秀麗、品行方正、成績抜群でないとなることができませんでした。平成時代、下田の御用邸にご一家が来られるときは元近衛兵たちが県内から集まり下田駅で参列してお迎えし、明仁陛下も戦前の彼らの顔を覚えていて親しく挨拶して下さったとのことでした。

 浩宮様は英国議会の開会式も見学されています。女王の使者が下院(House of Common)にやってきて大声で呼びかけながら入口のドアをノックします。2回拒否された後、3回目に初めてドアが開かれます。これはピューリタン革命で下院が初めて王政から独立し政治の中心になった歴史に由来するのだそうです。

 オックスフォード・マートン校での入学式(matriculation)での呼び出しは普通「ミスター・ジェームズ」とか「ミス・なんとか」でしたが、一人だけ「Prince Naruhito」(スゲー!)で周囲がどよめいたようです。

 マートン校の創立は13世紀(1264年)であり式典は全てラテン語で行われホール、食堂も13世紀の建物でした。

 副学長が「君たちはコミュニティー、国家から大きな期待が寄せられておりここにいる間、それに応え全力を挙げて勉強をするように」とスピーチしました。今時の日本の大学でも学長はこんなスピーチをするんだろうかと思いました。

 オックスフォードは35の大学(colleges)の総称でありオックスフォード大学自体は存在しません。マートン校には300人ほどの学生がおり寮で学生や教授(dons)たちと密接な関係があります。食堂やその後のコーヒータイムで多くの他科の学生たちと親しくなりました。学習院では他科の学生とシャッフルされることはあまりありませんでした。日本人だとパーティーでも知り合い同士が集まって話すけどオックスフォードではみんな喜んで見知らぬ人と交歓したと言います。

 寮の自室に遊びに来た日本語を勉強している級友から「Your Highness」を日本語でなんと言うのかと聞かれて「殿下」と答えたところ、「電化」と勘違いされ以後「電気」と呼ばれていました。

 またオックスフォード滞在中2,000枚の写真を撮りました。行きつけの写真店を訪れたところ店員に「ちょうど退職する女性がいて2階でお茶会をやっているから寄っていきませんか?」と言われ、いつもお世話になっていたおばさんだったので急遽参加したとのことでした。歓送会にプリンスが来るなんて普通ありえません。

 初めての寮生活で洗濯やアイロンがけも自分で行い、風呂も途中で湯が水になりシャワーもないため頭を洗うために2回湯を張ったり、生まれて初めての銀行などオックスフォードでの生活が生き生きと描かれています。しかし今後一生、自分で銀行に行くことはないだろうとのことでした。

 ジーンズとTシャツで初めてのディスコへ行ったところドレスコードがあり、殿下から身分を明かすことはありませんから、ブレザーを着た護衛官を除き入場を断られてしまいすごすご退散しました。留学後、2人の護衛官は日本へ招待され皇居で浩宮様と懐かしの対面をされたようです。

 また級友たちといろいろなパブに出かけてビールを楽しみました。出かけたパブの名が書かれておりTurf Tavern、The Perch、Trout Inn、The White Hartなどネットで検索するといずれも伝統を感ずるテームズ河畔や緑の中の美しいパブでした。ぜひ行ってみたくなりました。

 小生、家内とロンドンを訪れたときはホテル内の情緒のないパブにしか行きませんでした。オーダーは「A pint(パイント)of lager, please.」みたいにa pint(0.57L)かhalf pintで注文します。lager (ラーガー)が日本の普通のビール、bitter(ビター)が濃厚、苦めのビールです。

 またつくづく羨ましいと思ったのは、オックスフォードは人口10万ほどの小さな町ですが、常にオペラ、シェークスピアなどの演劇、コンサートが開かれており日常的に気楽に芸術に親しむことができたと言うのです。コンサートの幕間にワインやビールを飲みながら日常生活の中に芸術を楽しむ風土があるのです。

 長女がチューリヒの芸大に留学していた時、湖畔の小さな町のホールでピアノを演奏しました。町民が子供たちも連れて正装して三々五々、夕方ホールに集まり、休憩時間ではホールでワインやビールを飲みながら楽しそうに歓談しているのを見て、こういう文化って素晴らしいなあと大変うらやましく思いました。ザルツブルグもそんな感じでした。殿下もビオラを演奏するので級友たちとカルテットを楽しんでおられます。

 また夏休みには欧州各地を訪れザルツブルクのモーツァルトハウスではモーツァルトが使ったビオラを、プラハではドボルザークのビオラを弾かせてくれたとのことです(スゲー)。

 そういえば長女がプラハのスメタナ博物館を訪れたとき、スメタナのピアノがありショパンを弾かせてくれました。

 オックスフォード滞在中、ご両親の明仁、美智子両陛下がアフリカ歴訪の帰りにイギリスに寄りました。1953年エリザベス女王戴冠式の際、明仁陛下はオックスフォードに寄り桜を植樹されたのですが、その木が大木に育っているのを懐かしそうにご覧になられたとのことです。

 また皇室と欧州各国の王族たちと密接な交流があるのに驚きました。ノルウェー、ベルギー、オランダ、ルクセンブルグ、リヒテンシュタインなどです。リヒテンシュタインやルクセンブルグ王家からはスキーに誘われ、一緒にオーストリアやスイスアルプスに旅行に行っています。スペインのマジョルカ島にスペイン王を訪ねたときはフィリップ王子が急遽、ショパンが滞在した家の訪問に付き合ってくれたそうです(スゲー!)。

 皇室外交も重要な日本外交の一環なのだなあとつくづく思いました。皇室外交は民衆レベルで好感を得ることができ、外務省は周到に皇室外交を利用しています。

 留学が終わり米国経由で帰国したのですが、米国では級友の紹介で浩宮様が自室に写真を貼っていた女優ブルック・シールズに会っています。

 英国のUKPDS33では25~65歳の新規DM患者3,867人を2グループに分け、インスリンまたはSU薬と食事療法でHbA1c中央値7.0%と7.9%でコントロールして両者を比較しました。65歳以下の場合、10年間に強化療法群で微小血管合併症は25%減少したものの大血管症ではたいして差がなかったのです。

 また60歳以上の2型DM患者では3つのトライアルがあり、3.5~5.6年行われました。HbA1c 6.4~6.9の群とHbA1c 7.0~8.4の群で比較すると、60歳以上の高齢者では微小血管合併症は多少改善するものの強化群(HbA1c 6.4~6.9)での心血管リスク改善はなかったのです。

 これらから、若年2型DMではHbA1cを7.0%以下でコントロールすると微小血管合併症が予防できるけど大血管症は予防できず、また60~65歳以上の高齢者では厳格なコントロールは意味がなく8.5%以下で十分であることが分かったのです。

4.ACCORD試験(2008年):HbA1c<6.0%で死亡率上昇、初期DM目標<6.5~7.0%

 ACCORD試験(2008年、The Action to Control Cardiovascular Risk in Diabetes)ではHbA1cを6%未満にすると、心血管リスクやどんな原因であれ死亡率が上昇しました。これから現在、世界の糖尿病専門医たちは初期の血糖コントロールは男性、非妊娠女性のHbA1cのターゲットを6.5~7.0%以下としています。6.0%未満とすることはありません。

 まとめるとACCORD試験(2008)でHbA1c<6.0%で死亡率上昇、初期DM目標<6.5~7.0%です。

5.若年2型DMではHbA1c 6.5~7.0%以下に、6.0以下は不可。高齢者は7.5~8.5%以下に

 この総説の付録(appendix)に各国のHbA1c目標値が記載されています。

 初期や若年2型DMではHbA1c 6.5から7.0%以下を目標にしますが6.0%以下は不可です。

  一方はっきりとした開始年齢は示されていませんが、寿命が短い(<10年)患者、低血糖歴、フレイル、糖尿病合併症のある患者ではHbA1c 7.5~8.5%くらいを目標としています。

【米国臨床内分泌学会、米国内分泌学会:American Association of Clinical Endocrinologists and American College of Endocrinology】
 ・合併症がなく低血糖リスクのない成人2型DM患者:目標HbA1c≦6.5%
 ・合併症、低血糖歴、寿命のある2型DM患者:目標HbA1c>6.5%【米国医師学会:American College of Physicians】
 ・ほとんどの非妊娠成人:目標HbA1c<7%
 ・寿命の長い患者:目標HbA1c<6.5%
 ・低血糖歴、寿命の短い患者、糖尿合併症、認知症の患者:<8~8.5%

【カナダ糖尿病協会:Canadian Diabetes Association】
 ・1型、2型DMのほとんどの患者、初期DM患者:≦7.0%
 ・低血糖リスクの少ない2型DM患者:≦6.5%
 ・低血糖リスクがある、寿命が短い、フレイル、認知症など:7%以上、8~8.5%

【国際糖尿病連合:International Diabetes Federation】
 ・一般的ターゲット:<7%、8%以上は不可
 ・寿命<10年、認知症、CKD、CVDがある時:7.5~8%【英国臨床評価研究所:NICE】
 ・成人2型DMで運動、食事のみか内服1種で管理の患者:<6.5%
 ・低血糖歴があるか内服2種以上の場合:<7.0%
 ・老人、フレイル、低血糖リスク、転倒リスクのある患者:基準緩和を考慮

 まとめると若い人、糖尿病初期での目標はHbA1c 6.5~7.0%以下ですが、6.0%以下にしてはなりません。高齢者では7.5~8.5%以下とします。

6. メトホルミンで心血管リスク↓。インスリン、SU、α-GI、DPP-4、チアゾリジンに効果なし

 では、GLP-1受容体作動薬やSGLT2阻害薬以外に心血管リスクを下げる血糖降下薬はあるのかという疑問です。

 インスリンの心血管アウトカムは一貫しませんでした(inconsistent)。

 SU薬は心血管疾患を増やしも減らしもしません。

 チアゾリジン系薬(アクトスなど)も心血管疾患の改善はありません。

 α-グルコシダーゼ阻害薬(α-GI、グルコバイ、セイブル)はそもそも2型DMでの心血管リスクの大規模トライアルがありません。

 DPP-4阻害薬の心血管リスクもプラセボと比べて変わりませんが、サキサグリプチン(オングリザ)は心不全による入院の上昇が見られました。

 ビグアナイド薬(メトホルミン)は無論2型DMの第一選択ですが、これは心血管リスクを減らします。UKPDS34(1998年)で心血管疾患に利益が見られました。753人の肥満2型DM患者でメトホルミンによる強化群(HbA1c 7.4%)と通常治療群(HbA1c 8.0%)の10年間の比較ではメトホルミン群で心筋梗塞発症39%減少、糖尿病関連死42%減少し、それ以後の観察でも利益は持続しました。

 当、西伊豆健育会病院でも10年ほど前からメトホルミンを第一選択としSU薬を使用することはほとんどなくなりました。以前、製薬会社に静岡県東部でメトホルミンを一番使用しているのが当院だと言われました。SU薬を使用しなくなってから外来で低血糖患者が搬入されることはめったにありません。

7.HFrEF・腎疾患ならSGLT2を、肥満患者ならGLP-1推奨

 この総説には冒頭症例があります。

 64歳コントロール良好の2型DM患者、心血管リスクを減らすには皆様ならどうされますでしょうか?

【症例】
 64歳女性。十年来の2型DM、定期外来(routine wellness visit)受診。4年前に心筋梗塞既往、高血圧と高脂血症のコントロールは良好。内服薬はメトホルミン2,000mg/日、ロサルタン、ヒドロクロロチアジド、アトルバスタチン高用量、アスピリン。自己血糖測定はしていない。血圧128/75、BMI 33、HbA1c 7.9、Tch 155、HDL 52、TG 126、LDL 78、eGFR 76、尿alb/Cr比 25、網膜症や神経障害はない。

 彼女は「心血管リスクを減らせる薬があると聞いた」という。あなたのアドバイスは?

【著者の回答】
 患者は長期の2型DM、確立したアテローム動脈硬化性心血管疾患がある。食事、運動のアドバイス以外に、心血管疾患リスクを下げるためGLP-1受容体作動薬やSGLT2阻害薬の処方を勧める。糖尿病とHFrEF(EFの減少した心不全)や慢性腎疾患があるのならSGLT2阻害薬を、肥満患者であればGLP-1受容体作動薬は減量効果が大きいのでこれを勧める。

 この症例のHbA1c目標値は7.0~7.5%程度とする。自己血糖測定と3カ月ごとのHbA1cチェックを奨める。

 それではN Engl J Med総説「2型糖尿病で心血管リスク減らす血糖降下薬」重要点7の怒涛の反復です。

  1. 心血管リスク、腎障害のある2型DMはHbA1c値に関わらずSGLT2、GLP-1投与せよ!
  2. 薬価:GLP-1注170円/日、週1回薬>400円/日、内服334円/日、SGLT2は180円/日
  3. HbA1c<7.0で65歳以下の微小血管合併症は減少するが心血管疾患はさほど減らぬ
  4. ACCORD試験(2008年):HbA1c<6.0%で死亡率上昇、初期DM目標<6.5~7.0%
  5. 若年2型DMではHbA1c 6.5~7.0以下に、6.0以下は不可。高齢者は7.5~8.5以下に
  6. メトホルミンで心血管リスク↓。インスリン、SU、α-GI、DPP-4、チアゾリジンに効果なし
  7. HFrEF・腎疾患ならSGLT2を、肥満患者ならGLP-1推奨

115名の先生が役に立ったと考えています。

仲田 和正(なかた かずまさ)

仲田氏

 西伊豆健育会病院病院長。1978年に自治医科大学卒業、静岡県立中央病院(現静岡県立総合病院)全科ローテート研修、1980年に浜松医科大学麻酔科研修(4~9月)、静岡県国民健康保険佐久間病院外科・整形外科。1984年に自治医科大学整形外科、大学院、1988年に静岡県島田市民病院整形外科、1991年に静岡県西伊豆病院整形外科。

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