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腹腔内温熱化学療法を葬り去ってよいのか

大腸原発腹膜播種に対する治療

 2021年06月17日 05:00
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研究の背景:"慣習的に"行われてきた減量切除と腹腔内温熱化学療法

 今回は、腹膜播種を伴う大腸がんに対する外科的治療(減量切除術、Cytoreductive surgery;CRS)と腹腔内温熱化学療法(Hyperthermic intraperitoneal chemotherapy;HIPEC)について取り上げたい。

 腹膜播種を伴う大腸がんは予後が悪い。特に、広範な腹膜播種では、既にがん細胞は顕微鏡的に腹腔内へ拡散し、腫瘍遺残なく外科的に切除することはもはや困難でCureは望めない...という認識がわりと一般的である。

 一方で、海外の一部の専門施設を中心に、広範な腹膜播種に対して、CRSとHIPECを組み合わせた治療アプローチが試みられてきた。

 CRSとは、肉眼的な播種病変を完全に(もしくは少なくとも微小な残存となるまで)、周囲の腹膜や臓器とともに切除する手術であり、多くの場合は腹膜を広く切除することになるため腹膜切除(Peritonectomy)と呼ばれることもある。他方、HIPECとは、41~42℃の生理食塩水に溶解させた抗がん薬を腹腔内で灌流させることによってCRS終了後に残存する腫瘍細胞を死滅させる治療手技である。HIPECは全身化学療法と比較して、抗がん薬の約90%が腹腔内にとどまるため毒性が少ないという利点がある。

 この大腸がん腹膜播種に対するCRS+HIPECの治療アプローチは、議論の余地を残しながらも、全米総合がん情報ネットワーク(NCCN)や欧州臨床腫瘍学会(ESMO、Ann Oncol 2014; 25 Supple3: iii1-iii9)など各国のガイドラインに治療オプションとして採用され、現在では少なくとも世界の430の専門病院で実施されている。

 しかし、実はこのCRS+HIPECを行う根拠となる臨床試験は、Verwaalらによって1998年から2001年の間に実施された第Ⅲ相試験までさかのぼる必要があった(J Clin Oncol 2003; 21: 3737-3743

 近年、目覚ましい知見の集積が見られた大腸がん腹膜播種に対する全身化学療法とは対照的に、CRS+HIPECについては前記の臨床試験以降、長らく再検証がなされないまま、"慣習的に"(CRSとHIPECはほとんどセットで)行われてきた経緯がある。

 今回紹介する論文は、Verwaalらの試験以降、約20年ぶりにCRS+HIPECに焦点を当てた第Ⅲ相ランダム化比較試験(PRODIGE 7試験)の結果である。

Cytoreductive surgery plus hyperthermic intraperitoneal chemotherapy versus cytoreductive surgery alone for colorectal peritoneal metastases(PRODIGE 7):a multicentre, randomised, open-label, phase 3 trial Lancet Oncol 2021; 22: 256-266

 研究を主導したフランス・Institut du Cancer de MontpellierのFrançois Quénet氏によると、CRSが施行された患者の生存期間は予想外に良好であったとする一方で、HIPECを追加しても生存期間の上乗せ効果は認められず、むしろ有害である可能性すらあるという。

  • オランダのVerwaalらによって主導された第Ⅲ相ランダム化比較試験。大腸がん腹膜播種の患者を対象に、全身化学療法(5-FU)を使用した標準治療群と、CRS+HIPECを行った実験的治療群との間で生存率を比較し、実験的治療群で有意に生存率が良好であった〔標準治療群の生存期間中央値(MST):12.6カ月、実験的治療群のMST:22.3カ月、log-rank test、P=0.032〕。

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