飲酒での脳卒中「Jカーブ効果」は否定的、目安量は?

INTERSTROKE試験

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研究の背景:INTERSTROKE試験でアルコール摂取と脳卒中の関連を検証

 適量の酒を適正に飲んでいる人は、全く飲まない人や多量に飲む人に比べ死亡率が低いことが、1996年に欧米人を対象とした14件の研究を含むメタ解析で示され(Med J Aust 1996; 164: 141-145)、グラフの形状から「Jカーブ効果」と呼ばれてきた。冠動脈疾患は少量飲酒でリスクが低下するが、がんや脳内出血(ICH)は飲酒量の増加とともにリスクが上昇することが示されている。脳梗塞では飲酒によるJカーブ効果が見られ、「1日20g程度のアルコール摂取は健康のために良いですよ」と患者・家族に説明してきた。

 2018年に、「健康損失を最小限に抑えるアルコール摂取量はゼロである」とする論文がLancetに発表され(Lancet 2018; 392: 1015-1035)、アルコール規制に関する政策を見直す必要性が指摘されるようになった。

 これを受け、日本脳卒中協会は「脳卒中予防十か条」の「アルコール 控えめは薬 すぎれば毒」を「飲むならば なるべく少なく アルコール」に変更した「脳卒中予防十か条2025」を発表した。同協会啓発委員会の委員長で慶應義塾大学衛生学公衆衛生学教授の岡村智教先生が取りまとめられた。

 アルコール摂取と脳卒中の関連については、特に少量~中等量の摂取量に関して不確実な点が多い。そうした中、大規模な国際研究で両者の関連を検証したINTERSTROKE試験の「急性脳卒中の危険因子としてのアルコール摂取」の報告が2023年のNeurologyに掲載された(Neurology 2023; 100: e142-e153)。最新の論文ではないが紹介する。(関連記事「2025年の世界禁煙デーに黄緑色のライトアップ」)

橋本 洋一郎(はしもと よういちろう)

済生会熊本病院脳卒中センター特別顧問

1981年鹿児島大学医学部卒・熊本大学第一内科入局、1984年国立循環器病センター、1987年熊大第一内科、1993年熊本市民病院神経内科、2022年より現職。専門は脳梗塞、頭痛、禁煙支援、リハビリテーション、医療連携。急性期病院の医師として脳卒中診療ネットワーク構築の中で多彩な活動を行っている。日本脳卒中学会名誉会員、日本頭痛学会・日本禁煙学会の理事。

橋本 洋一郎
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