在宅訪問は患者それぞれの生活と密に関わるため、幅広い視点で臨機応変に対応を考える必要があります。この連載では、在宅訪問のエキスパート薬剤師6人が症例を提示し合い、自分ならどう考えるかを紹介します。正解は1つではありません。あなたならどうするか、考えながら連載をお楽しみください。 ※症例は架空のものですIllust:macco ●今回の出題者:有限会社フクチ薬局 福地昌之さん ●今回の患者とプロフィール:集合住宅の3階で1人暮らしをするKさん。X市に5人兄弟の3番目として生まれ、現在も同市に居住。結婚後は1女を授かるが、40歳のときに夫と死別。65歳まで看護師として働く。長女は結婚して隣の市に住む。 ●Kさんのエピソード:訪問支援を受けていたKさん。担当している薬局の薬剤師が、ある日K.Nさんに電話をしたときのことです......。 薬剤師B 「おかしいな。朝方電話しても出なくて、お昼の今も電話に出ないんです」 薬剤師A 「Kさん、ほとんど外に出ることはないよね」 薬剤師B 「そうなんですよ。心配なのでお薬を持って訪問に行ってきます」 ・・・ マンションに着くと、部屋のドアには鍵がかかっています。 薬剤師B 「Kさん、いらっしゃいますか?」 すると、中で人がうめくような声がします。管理人に事情を説明し、鍵を開けてもらうと、ベッドの横にKさんが倒れていました。 薬剤師B 「Kさん、大丈夫!? どうしたんですか?」 Kさん「痛い、痛い、痛い」 急いで診療所の医師とケアマネジャー(CM)に連絡を入れると、間もなく医師がやってきました。 医師「Kさん、どこが痛いの?」 Kさん「痛い、痛い、肩が......」 医師「ベッドから落ちて、右肩と右腰を打撲しているようですね。救急車を要請します」 ・・・ Kさんは病院に搬送されました。薬剤師Bは薬局に戻り、同僚にこのことを伝えました。 薬剤師C 「大変でしたね。ところで、Kさんは転倒を起こすような薬を飲んでいましたか?」 薬剤師B 「朝食後にフロセミド(20)、スピロノラクトン(25)、エルデカルシトール(0.75)、レボチロキシンナトリウム(50)、アムロジピン(5)、夕食後にランソプラゾールOD(15)、毎食後にリマプロストアルファデクス(5)、1日置きに芍薬甘草湯を寝る前に1包服用していました。日めくりカレンダーを使って、きちんと飲めていました。ただ、経口栄養剤(エンシュア・H®)が出ていて、これはあまり飲んでいないようです。忘れてしまうらしくて」 薬剤師A 「Kさんの疾患名は?」 薬剤師B 「高血圧症、深部静脈血栓、骨粗鬆症、痙攣、慢性閉塞性肺疾患(COPD)です」 薬剤師C 「近ごろの状態はどうでしたか?」 薬剤師B 「血圧は123/76mmHgと安定していますが、足にむくみはあります。それと自分では分からないとおっしゃっていましたが、右手の中指の先が切れて少し赤くなっていました」 薬剤師A 「栄養は足りているのかな?」 薬剤師B 「ヘルパーさんが土日以外の日は入っていて、食事をつくってもらっているそうですが、1日2回しか食べていないようです」 薬剤師A 「退院したら、今度どのようにしたらよいか考えていかないといけないね」 次のページ:Kさんのデータを確認