それでコロナの抗体検査はどうなったのか?

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感染症ビジョナリーズ 感染症ビジョナリーズ

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© Adobe Stock※画像はイメージです

研究の背景:新型コロナで露呈した臨床検査学への無理解

 新型コロナの話題は、新しいものが出ては消え、出ては消えと、人の心が移ろいやすいことをはしなくも示している。最近、「三密」とか言わなくなったよね。ま、一般社会はそれでもよいのだが、研究者は過去の問題とも継続的に取っ組み合う義務がある。

 賢者は歴史に学び、愚者は経験に学ぶ。

 過去の「経験」をそのままコピペして未来につなげるのは愚者の悪手だ。

 「あんときも大変だったよなー。でも、なんだかんだ、みんな頑張ったよねー。つらいこともあったけど、よいこともたくさんあった」こんな感じで過去の経験が美化され、現状維持の根拠とされるとき、その組織の進歩は止まる(クルーズ船の問題を論じた「結局DP号の感染対策は成功したのか」でも同じことを書きましたね)。悪いタイプの部活動とかは、この構造でずっと現状維持のままだったりする。

 歴史に学ぶとは「検証」だ。過去の体験を「思い出」化せずに、クールに知的に、えこひいきも過小評価もせずに検証するのだ。

 2020年はコロナの検査が盛んに議論された年である。PCR、抗原検査、抗体検査。感染症のプロも、そうでない人も、口角泡を飛ばして検査を大いに論じたものだ。このような検査騒ぎは僕が知る限り、日本でしか起きていない。いかに日本で臨床検査学がきちんと理解されていないか、ということであり、それはひいては臨床検査学を活用した臨床診断学が(医者の間ですら)ちゃんと理解されていない、さらには臨床医学そのものがまだまだ日本ではしっかりしていないということでもある。診断についても、治療についても、(医者の間ですら)ちゃんと学問として履修、習得されていないという、悲しくも厳しい現実の再確認の日々でもあった。

 というわけで、今回の論文である。これもわれわれがやった研究だ。

岩田 健太郎(いわた けんたろう)

岩田氏

1971年、島根県生まれ。島根医科大学卒業後、沖縄県立中部病院、コロンビア大学セントルークス・ルーズベルト病院、アルバートアインシュタイン医科大学ベスイスラエル・メディカルセンター、北京インターナショナルSOSクリニック、亀田総合病院を経て、2008年より神戸大学大学院医学研究科教授(微生物感染症学講座感染治療学分野)・神戸大学医学部付属病院感染症内科診療科長。 著書に『悪魔の味方 — 米国医療の現場から』『感染症は実在しない — 構造構成的感染症学』など、編著に『診断のゲシュタルトとデギュスタシオン』『医療につける薬 — 内田樹・鷲田清一に聞く』など多数。

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