新肥満理論「糖質-インスリンモデル」の現況 糖質摂取、食後高血糖、高インスリン血症と将来の肥満 参考になった 名の医師が参考になったと回答 記事をクリップ 記事をクリップして、あとでマイページから読むことができます Facebookでシェアする Xでシェアする Lineでシェアする 研究の背景:肥満症研究者に衝撃、侃々諤々の状況 以前、新たな肥満理論として、「糖質-インスリンモデル」(JAMA Intern Med 2018; 178: 1098-1103)をご紹介した(関連記事「真逆の新肥満理論"糖質-インスリンモデル"」)。この概念は、既存のエネルギーバランスモデルに対する新たな仮説であった。 【エネルギーバランスモデル】体重の変化は、摂取エネルギーと消費エネルギーのバランスで決まるものであり、どの栄養素から摂取しても同じ1kcalなら1kcalであって等価である 【糖質-インスリンモデル】インスリンが同化>異化に傾け、消費エネルギーを低下させるため、高インスリン血症を惹起する食べ方〔高糖質食または高グライセミックインデックス(GI)食〕が肥満につながる。同じ1kcalでも高インスリン血症を生むか生まぬかで等価ではなくなる。さらに、遅延過剰インスリン分泌による急激な血糖下降が飢餓感を生んで、摂取エネルギーを増加させることも肥満を助長する 私が見る限り、この米・ハーバード大学のLudwigらの仮説は、肥満症診療に関わる者に大きな衝撃を与え、多くの研究者たちがこの仮説の検証を続けている。例えば、2週間の介入試験において、自由摂食下でのエネルギー摂取は、糖質制限食よりも脂質制限食の方が少なかった(すなわち、糖質-インスリンモデルはこの実験系では成立していない)とする論文が発表されたかと思えば(Nat Med 2021; 27: 344-353)、糖質制限食は適応に時間がかかるものであり、エネルギー摂取・消費への影響が安定するは18日目以降である(すなわち、2週間の介入試験では、糖質-インスリンモデルの成立を否定できない)とするメタ解析も報告されている(J Nutr 2021; 151:482-490)。 Ludwigは、その後、米国および欧州の栄養学会の機関誌に解説記事を投稿しているが(Am J Clin Nutr 2021; 114: 1873-1885、Eur J Clin Nutr 2022; 76: 1209-1221)、この仮説に対する包括的な反対論文も米国栄養学会の機関誌に発表されていて(Am J Clin Nutr 2022; 115: 1243-1254)、まさに侃々諤々という状況である。 そんな中、米国糖尿病学会(ADA)の機関誌Diabetes Careに、高インスリン血症は小児期の将来の体重増加と関連しない(糖質-インスリンモデルでは将来の肥満を予測できない)ことを示す米・エール大学からの報告が掲載された(Diabetes Care 2022; 45: 1400-1407)。このデータに対するLudwigの意見(Diabetes Care 2022; 45: 1303-1305)も含めて、糖質-インスリンモデルの現状を考察したい(ただし、私は完全に糖質-インスリンモデル派であり、エネルギーバランスモデルに対してはアンチであることをご承知おきいただきたい)。 参考になった 名の医師が参考になったと回答 記事をクリップ 記事をクリップして、あとでマイページから読むことができます Facebookでシェアする Xでシェアする Lineでシェアする ×