えっ! 2型糖尿病にもインスリンポンプ?

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研究の背景:1型糖尿病におけるインスリンポンプ療法の立ち位置が向上

 この10年での医療技術の進歩は著しく、血糖測定技術の進歩に伴い、リアルタイムで血糖値を把握できるようになった(持続グルコースモニター:CGM)。また、血糖値の変化を基にインスリン投与速度を調整するアルゴリズムが発達し、リアルタイムの血糖値に応じたインスリン投与を行うインスリンポンプが登場するに至った(Automated Insulin Delivery;AID)※1。 

 AIDには血糖値に応じてインスリンの注入速度が変動するClosed-Loopに加えて、その前段階の低血糖のときにポンプが止まるだけのSensor Augmented Pump(SAP)も含まれるが、日本ではSAP機器企業が全てのSAP使用者のポンプをClosed-Loopに変更しているので、現在の日本の状況は「AID=Closed-Loop」である。

 1型糖尿病患者にはAIDがかなり普及しつつあり、その結果、さまざまな臨床アウトカムの改善がもたらされている(N Engl J Med 2019; 381: 1707-1717Diabetes Technol Ther 2019: 21: 736-739)。

 一方、2型糖尿病患者のインスリン治療といえばbasal-supported oral therapy(BOT)※2とされており、1日3回以上の複雑なインスリンレジメンは低血糖頻度や体重増加の点で(少なくともインスリン導入時においては)忌避されるようになっていた(N Engl J Med 2009; 361: 1736-1747)。しかし、AIDのメリットの1つが低血糖頻度を上げずに(あるいは減らしながら)血糖管理を改善することにあるので、2型糖尿病患者でもCGMの恩恵(関連記事「isCGM導入後に糖尿病急性代謝失調が激減」「Flash Glucose Monitoringで血糖が安定改善」)のみならず、AIDの恩恵も受けられるかもしれない。

 このたび、英・ケンブリッジ大学のグループから2型糖尿病におけるAIDの価値について検討した研究結果が報告され、とても驚いたことに基礎医学系のジャーナルであるNature Medicineに掲載された(Nat Med 2023; 29: 203-208)。なぜ、New England Journal of MedicineLancetではなかったのかに対する考察も含めてご紹介したい。

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